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Vol. 9 ▶︎『1時間だけゲストハウスに滞在してみた』

標高1,000mに到達
そこには日常とはかけ離れた
朝日村ならではの "丁寧な" 生活を体感できる
そんなゲストハウスが目の前に

【ゲストハウス かぜのわ】
⚫︎長野県/朝日村

✔︎ 里と山の境界に建ち、人が築き伝え受け継いできた文化と、あるがままにそこにある自然を感じることができる宿

✔︎ 築100年を超える古民家を改修した体験棟と新たに建築した宿泊棟が融合した体験宿泊施設

×大久保匡晃さん
⚫︎ゲストハウスかぜのわ宿主

福岡県出身。大学では林業を専攻していた。会社勤めを経て、奥さんと結婚。長女が産まれるタイミングで地域おこし協力隊の制度を使って田舎でゲストハウスを開くことを決意。選んだ先は、標高1,000mの村一番奥の里だった。


そんなゲストハウスの経営を行っている宿主、大久保さんのstoryやexperienceを紐解く…

「おじゃまします」

interview

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学生時代何をしていましたか?
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当時は樹木医になりたくて、農大に行って木や山の勉強をしていました。しかし僕が林業の学部に入ったときには林業系の貿易が自由化になっていて、日本の林業が衰退していく時期でした。その現実を見た時に「大変だなあ」ってのが正直あって(笑) 当時は勉強もしてたけど音楽活動したり映画を撮ったりして、とにかく好きなことをして過ごしていましたね。

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なぜゲストハウスを作ろうと思ったのですか?

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僕自身旅が好きで、特に国内をよく旅していました。奥さんも海外を中心に旅をよくしていましたね。お互い旅をする時にはゲストハウスを使っていて、そこでの経験が忘れられない思い出となって、奥さんともゲストハウス良いよねっていう話をよくしていたんです。

あとは家族を持った時に、僕ら夫婦だけで子どもを育てるというよりは色んな人と関わって、多様な考え方やアクションを子どもに見せて成長させていった方が子どもの将来を考えた時に大きいんじゃないかなと思ったんです。今って核家族化がすごく進んでいるじゃないですか。その核家族化が進んでいることによって、人と人との界というか距離がある生活をしているなって都会に住んでて感じたんです。近隣の人のことも知らないし、交流もないのが今現在は普通なんだろうけど、その普通に疑問がありました。一方で一昔前には村一個で子どもを育てるといった文化が日本には根付いていましたからね。

話を戻して、そういう空間を自分たちで作れば手っ取り早いじゃんってのは凄くあったんです。もともと子どもを連れて世界中を旅したいっていう夢があったので、旅をする前段階としてゲストハウスを作って、世界中から色んな人が来て貰えば、そこで家族みたいになれるし、そこで知り合った友達が世界中にできるわけだから、その友達のところに遊びに行けるんじゃないかなっていう考えもあってゲストハウスを作ろうと思ったのです。

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なぜ朝日村を選んだのですか??
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僕らがそうだったように、東京に住んでいてストレスを感じていて田舎へ行きたいっていう人たちに向けて空間を作りたいなと思いました。そこで東京からアクセスしやすいギリギリのとこ攻めようってなった時に自然が豊かな長野県にしようって決めました。

それで長野の中でどこにしようかってなった時に、僕が九州で奥さんが静岡なので、雪にあまり馴染みがないんですよ。そこで北信は無理だなと(笑) とりあえず中信(松本周辺)か南信(岐阜方面)の方には絞りました。そこで地域おこし協力隊のフリーミッション(○○をやってくださいというミッションの縛りがないもの)を行っている地域を検索したらかなり数が絞られてきました。

朝日村もヒットした地域の一つでした。その中で朝日村にしたのはここまできたらもう直感(笑) 名前がいいから。朝日って名前いいな、そんなに悪い村じゃないだろという僕の安易な考えてそこに決めました。その後採用が決まり、家をいくつかピックアップしてもらったんだけど、個人的に古民家に住みたくてね。村の職員から古民家を紹介されて色々みたけどどうもしっくりこなくてね。職員の方が、「ここが最後だけど、さすがにちょっと皆んな敬遠すると思うけど、一応みますか?」って言われたところが今のとこなんですよ。

場所的には里の終わりで山の始まりのようなところだったけど、自然が豊かで景色も凄く良かったので、ここなら都会から来た人たちにも喜んでもらえるだろうなということで、即決しましたね(笑) 
私たちの家(古民家)の2軒隣に「ゲストハウスかぜのわ」を建てました。

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どのようなコンセプトにしたのですか?
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最近の流行りっていうか、古民家を改修したゲストハウスが多いじゃないですか。被ってしまうからそこでは勝負しない方がいいなと思い、思い切って舵を切って新築を建てようと決めました。ターゲットとしては女性が1人で来ても安心安全に、そして田舎に来たのにおしゃれで綺麗なところに泊まれるという、すなわち非現実的な空間を演出しました。朝日村なんて国道もなければ電車も走ってないわで、そんな村の1番奥の場所にオシャレな空間があるってなると皆さん驚くんです。

うちはペルソナ(ターゲット)を30代前後の独身女性と、子育て世代のご家族に設定しています。そういった方たちが「あそこいいね」、「また行きたい」と言ってもらえるような演出をしています。なのでゲストの生い立ち・名前・年齢・働いている企業・家族構成・性格・趣味嗜好から自分でペルソナを細かく設定して、その人に来てもらうってことを念頭に置いて作りました。そうじゃなきゃブレブレになってしまうので、そこはガッツリ突き詰めて考えてましたね。

━━━━━対象のターゲット層を意識した設備などはありますか??

家具とかが全部朝日村の木工作家さんが作ったオリジナルの家具で統一されているんですよね。あとは建物の外は白いんだけど中は真っ黒で、その内部全体が黒板になっていてサイン(施設案内)は全部黒板に書いて表示されています。

また内装を黒くしたのは、家具が浮いて見えるように演出してるんです。それを通して木の温もり(なので家具もあえて明るいトーンにしている)を感じでいただけたら嬉しいなと思いましてね。

以上のことから普通の家の雰囲気とは違い、非現実的な内容になっているんです。僕たちがターゲットにしている女性層から「こういうお家に住みたい」、「住めないけど住んでみたかった」と言われるような演出をしています。


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ゲストハウス作りをしていく上で、印象に残っているコトはありますか?
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村議会で承認を貰うために、朝日村にゲストハウスが必要な理由を議会で答弁したのが凄く印象に残っています。

小さな村で宿舎のない地域だから、そもそもゲストハウスってなに?みたいなとこから始まりました。「よそからこんな小さな村に来るはずがない」って皆んな思っていて、特に年寄りの方たちは。できたらできたで色々迷惑がかかるんじゃないかとか思っている人も沢山いて、そこを解消するために一生懸命に説明をしました。

具体的に朝日村をどう知ってもらうとか、この村がどういう形で存続していくと良いのかっていうのを熱弁した記憶があります。

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「かぜのわ」の施設内の見所はありますか?
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入ってすぐのリビングはこの建物のメインになっています。そこに大きいテーブルがあって、そこに集まってみんなでご飯食べたりするんです。あとは目の前の景色が切り取られたように見える、嵌め込み式の一枚ガラスがあって、そこから見える景色は素敵ですよ。

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新たにやっていきたいコトはありますか?
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「かぜのわ」っていうゲストハウスとそのすぐ横に体験棟の「りんね堂」っていう古民家があるんですけど、そこの中身を改造して色んな体験ができるような場所にしたいっていうのはあります。

━━━━━サイトで拝見したのですけど、皮を使った染物体験ができるようですね。

そうそう。僕はゲストハウスとは別に、レザークラフトと染物の作家をしているんですよ。そういった染物体験は今でももちろんできるんですが、その他にも映画の上映会とか講演会とか、ふらっと寄って漫画読んで帰るだけでもいいしね。そういうちょっとゆる〜い空間を作りたいなって思いますね。

━━━━━すごいですね。ちなみにゲストハウスを作る前からそういった染物の活動はなさっていたのですか?

そうそう、染物は東京にいる時から趣味でやっていました。ここ田舎なら染物の素材は山に行けばいくらでも手に入るからね。なので自分たちの手で染めて、ブランドとして売っています。これをやっていくことはゲストハウスを開業する前から決めていました。
プラスαでモノを作るってのは凄くいいと思いますよ。

藤村靖之さんの考え方が好き━━━━━━━。

プラスαでものづくりをする利点はリスク軽減にも繋がると思うんです。僕は藤村靖之さんが書いた「月3万円ビジネス」の考え方が好きなんです。それはタイトルの通り月3万円しか稼ぎませんっていう本です。

1つのことで毎月20万稼ぐのって意外と大変じゃないですか。けど月に3万円しか稼がなくていいんだったら結構片手間でできちゃうでしょ。その3万円が5個あれば15万円稼げるでしょ。その中の一個が稼げなくても、他のどれかで稼げればリスク分散にもなるしね。
僕自身も色んなところで月3万円稼げればいいなって思っているんですよ。

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今後ゲストハウス開業に向けて動いていく僕に一言アドバイスいただけたら嬉しいです…!
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ゲストハウスの開き方にもよるけど、僕みたいなやり方でやるんだったら自治体や民間と連携してやるべきだし、そうなったら地域おこし協力隊っていう選択肢は絶対に入れた方がいいなって思っています。その選択肢の1つは大原さんの頭の片隅に入れておいた方がいいと思います。

自己資金でやるんだったらそういうことは考えなくていいので、その時はどこにどういうコンセプトで宿を出したいのか、またそこでしか体験できないもの、そこでしか味わえないものを自分の中で見つけていくことが凄く大事だと思います。それをうまく生かすためには地域で生活している人と上手く折り合いをつけてやっていかないといけない。いわゆる自分と相手との相互理解を上手くしておかないと大変になるかなとは思いますね。

夢に向かってアクションしていくってのは凄くいいことなので、頑張ってください‼︎ 話なんていくらでも聞くので(笑)



以上でインタビューの内容は終わりです。
大久保さん、貴重なお時間とお話をありがとうございました^ ^👍

このあとも引き続きお付き合いください…✨

column

⚫︎僕が「かぜのわ」に滞在するなら…

13:00 【奈良井宿】で歴史を感じる

▶︎ 日本最長の宿場です

(Instagram: @tsumizoより)

14:30 【奈川温泉 富喜の湯】に浸かる

▶︎ 乗鞍岳麓に佇む湯処です

(Instagram: @h.nobukoより)

16:30 【ゲストハウスかぜのわ】にチェックイン

▶︎里の終着地点に辿り着きます

17:30 染物体験

▶︎手ぬぐいやエコバッグを藍で染めます

19:30 夜ご飯を食べたり、村の人、家族の皆さんとの交流を楽しむ

▶︎温もりで溢れた木の空間で、ご飯をいただきます🙏

22:00 「かぜのわ」の外に出て、星をみる💫

▶︎星がとっても綺麗にみえるそうです

(ゲストハウスかぜのわ公式Instagramより)
⚫︎@ghkazenowa

▶︎外からみる「かぜのわ」もとても綺麗です

23:00 部屋に戻り、1日を振り返る

▶︎ 僕は必ずその地域のポストカードを購入して、そのポストカードの裏に今日の出来事やその地に触れてみて感じたことを書いています

23:30 就寝

翌朝 朝ごはんをいただく🌾

▶︎和食のやさしい朝食をいただけます


新たな旅路へ。

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⚫︎ハラちゃんのメモ帳

この1時間の中で、大久保さんのゲストハウスへの想い、村への想いを語っていただきました。

そこからは核家族化の現状、家族への配慮、大自然の素晴らしさ、ターゲットに合った演出の仕方、ものづくりの素晴らしさと、普段耳にすることのないモノ・コトを知るきっかけになりました。

その中でも印象に残っていることは細かいペルソナの設定です。以前までは「ただ自分の好きなコト・モノをゲストさんと一緒に共有したい」って思ってたんです。それもすごい大事なことだとは思っています。しかしそれだけじゃ、大久保さんも言っていたように中途半端になってしまう、すなわちゲストさんが「よし!ここに泊まろう!」とハッキリと選択しやすくならないし、滞在した時の満足の質もそこまで高いものにはならないのかなと思いました。なのでゲストに「気持ちよく選択しやすくする」、そして滞在した際にも「そうそう、そういうのを求めてたの!」と思わせるような空間や演出にするためにもペルソナの細分化は大事なんだと思いました。

僕の場合は、キーワードがゲストハウス・農業・料理・サーフィンなのでそれをペルソナ設定するとどうなるのか。初めてながらやってみました(笑)

✔︎50代男性の歴20年のサーファー
⚫︎海までが遠い
⚫︎その日に波がなければ、すぐに帰ってしまう
⚫︎シャワー浴びて帰りたい
⚫︎リモートワーク×サーフィンライフを送りたい
⚫︎サーフィン後に急激な空腹を覚える
⚫︎50代というのもあり、食生活に不安視
⚫︎日焼け後の肌に不安視
⚫︎仕事仲間しかいなくて、趣味のコミュニティが欲しい

✔︎20代女性の歴2年のビギナーサーファー
⚫︎海までが遠い
⚫︎その日に波がなければ、すぐに帰ってしまう
⚫︎女性なので着替える場所が欲しい
⚫︎サーフィン後に急激な空腹を覚える
⚫︎海×インスタ映えのランチを食べたい
⚫︎日焼け後の肌を不安視
⚫︎サーフィン後シャワー浴びて、髪の保湿したい
⚫︎女性のサーファーがいないので、仲間作りたい

▶︎▶︎
⚫︎海まで遠い場合は、前泊でゲストハウスに泊まれますよ
⚫︎その日に波がなければ、ゲストハウスでゆっくりしていってください。または宿泊しなくても、その日に波があるかどうかはゲストハウスコミュニティのサイト(以前から泊まってくれる方限定で)でお知らせします
⚫︎リモートワークとサーフィンライフ併せるのは可能です。サーフィン道具を置くスペースもあります。
⚫︎女性が着替える場所を提供します
⚫︎50代の食生活の不安視には、オーガニックや無農薬野菜を使った料理を提供します
⚫︎併せてインスタ映えのランチボックスを提供します
⚫︎日焼け後の肌の不安には100%オレンジジュース、ブロッコリー・モロヘイヤを使ったジュースを提供します。植物由来の肌に優しいスキンケアを提供します
⚫︎シャワーを提供します
⚫︎仲間については、コミュニティサイトやサーファー達が交流できるハブスペースがあります

ざっくりですが、ペルソナ設定を試みました。サーフィンにおいては自分がやっているので良いところや課題点が見つけやすく考えやすかったのですが、農業や料理に関してはまだまだビギナーなので、よくわかりませんでした(笑) なのでサーフィンを軸に今回はペルソナを設定しました。更に地域が加わるとまた新しい選択肢も増えてくるのかなと思いました。凄く楽しく設定していました(笑)

なにせ全くの無知だった僕に今回ペルソナの重要性を気付かせてくれた大久保さんですからね🙇‍♀️ ありがとうございます!

今回はこのような素敵な話をしてくださった大久保さんにはとても感謝しています。そして1時間という限られた時間、ゲストハウスに招き入れていただき本当にありがとうございました!

「おじゃましました」


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