(本の裏側②)グラノーラは朝食かおやつか
2011年に『コブラーとクランブル』を上梓して以来、ほぼ一年に一冊のペースで本を出してきました。訳書と共著もあわせて11冊。計算が合わないのは、インドネシアで暮らしていた期間があるためです。
『自家製グラノーラと朝の焼き菓子』ができるまで
2冊目の本『自家製グラノーラと朝の焼き菓子』(PARCO出版)執筆のきっかけは、遡ること『コブラーとクランブル』の打ち合わせの頃。雑談で私が口にした「今日はグラノーラを焼いていた」という一言でした。
「では次はグラノーラで書いてみませんか」とご提案いただき、アメリカの朝食を紹介したかった自分は願ったり叶ったり。雑談はしてみるものです。
グラノーラ人気がジワジワ高まっていたもののレシピ本はまだ出ていなかった当時、コブラー本の完成とほぼ同時にトントン拍子に企画が進み、2012年に『自家製グラノーラと朝の焼き菓子』を出版しました。
グラノーラをはじめてつくる方が多いであろうことを想定し、材料もつくり方も極力シンプルにし、オーブンでつくるもの、フライパンでつくるもの、小麦粉も使うクッキータイプのものなど幅広く紹介し、コーンフレークやミューズリーも載せました。(「朝の焼き菓子」については後半で詳しく書きます。)出版後の反響は大きく、各種媒体や食品メーカーからお声がけいただき仕事の幅がグンと広がりました。
シリアルを手づくりするのはアメリカでは珍しいことではありせん。中でも一般的なのはグラノーラで、家庭だけでなく、カフェやベーカリーにも手づくりのグラノーラが並んでいます。
市販品vs自家製グラノーラ
大手メーカーのグラノーラと自家製のそれは、シリアルという大きなくくりの中では仲間ですが、別の食べものだと思った方が理解しやすいです。
並べると全然違いますね。手づくりのグラノーラにも色々ありますが、最もシンプルなものは「オートミールを油脂(太白ごま油など)と甘味料(ハチミツなど)とあわせて焼く。もしくは煎る」。写真右の自家製もそのタイプです。
対する写真左の市販品はパッと見ただけでもオートミール以外の穀物が色々見えていますね。パフタイプも入っていて自宅での再現は難しそう。実際難しいです。
グラノーラは市販の朝食用シリアルの元祖。コーンフレークなどの先駆けです。最初はグラハム生地を焼いて粉砕した健康食品でしたが、その後これを真似て広く一般の人が食べやすいよう砂糖を添加するなどして売り出したのが、食品メーカーの朝食用加工食品シリアルのはじまりです。粒子という言葉に由来するGranulaと名付けられた健康食品を、食品メーカーがGranola(グラノーラ)として売り出しその名が定着。
一方で、私が本で紹介したオートミール主体のグラノーラは1960年代の健康食品ブームの際にアメリカで広まったものです。
(初期と現在の市販のグラノーラはだいぶ異なるものの)いわば大手メーカーのものの方が正しくグラノーラの流れをくんでいるともいえるわけですね。
余談ですが、常温保存できて加熱せずそのまま食べられる市販のグラノーラは非常食にもぴったり。数ヶ月ごとに新しいものを購入する「食べながら無理なく備える非常食」として我が家では欠かせません。(煉羊羹もこのパターンで常備しています)
グラノーラは朝食か菓子か
これはグラノーラの本を出して以来度々質問されるのですが、うーん、白黒つけずにどちらとして楽しんでもよいのではないかという感じでしょうか。
グラノーラのはじまりはまごうことなき健康食品でしたが、現在のグラノーラは市販品も手づくりのものも菓子と変わりなく甘いです。ですが朝食に菓子パンも食べればジャムをたっぷり塗ったトーストも食べる。それと同じようなものかと思います。
そもそも朝食と菓子を分けて考えるのがナンセンスなのではと思わされる言葉に「breakfast treats(ブレックファスト・トリーツ)」というものがあります。アメリカで朝によく食べるパンケーキやブレッド、スコーン、ビスケットにマフィンなど、おやつのような朝食のことをこう呼ぶのですが、自家製グラノーラもここに加えても差し支えありません。
『自家製グラノーラと朝の焼き菓子』にもこれらのブレックファスト・トリーツをまとめて載せているので、タイトルにはこれと似たニュアンスの「朝の焼き菓子」と付けています。
結局グラノーラは朝食であり菓子でもあり。という結論でした。
近々本には載せていないグラノーラのレシピをご紹介しようと思っています。私がおつまみとして食べているグラノーラ(もはや朝食でも菓子でもありませんが…)です。
(追記)「おつまみグラノーラ」のレシピを公開しました。ぜひご覧ください!