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【大津市・九重味噌】甘みは当然、香りが命。無添加手作り「極上白味噌」の秘密に迫る。その1

滋賀県が誇る、最高の白味噌メーカーがある。大津市の京阪浜大津駅からほど近い、有限会社九重味噌さんだ。ここの白味噌はその滑らかな甘みと芳醇な香りで、最高です。

このHPは、5代目主人九重彰寛さんがソフトを駆使して自分で全て作っている。その内容でも注目は白味噌の作り方を懇切丁寧に惜しげも無く披露。個人的な見解では、これを上回る白味噌作り解説、インターネットに無いと思う。

そして、色々と傑作なのが、ご主人のブログ。

ここには、「えええ?こんなことも書いていいの?」というくらい、赤裸々で真っ正直な想いが綴られている。特に、、、、(いや、やめておこう)。業界人には「あー、、、」とわかってしまうようなことも、たまには。

ご主人の人柄はこのHPやブログを見ただけで、誰でもわかると思う。とにかくマメ、勉強熱心。仕事に向かい合う時間の質の高さが、発酵屋の端くれの私には、よくわかるのだ。

ということで、別に私が書かなくてもいいのではとも思ってしまうのだが、ここは私のフィルターを通して、九重味噌さんの魅力をお伝えしたいと思う。

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九重彰寛さん。主人(経営者)ではあるが、バリバリ現場人でもある。というか、現場の中枢を担っているので、本来、気楽に見学のご案内をいただけるような時間は無い。そんな中、ご対応ありがとうございました。

九重味噌さんは、いろんなお味噌を作っているのだが、得意とするのはやはり白味噌。もともとお米屋さんとして創業し、この地で味噌屋となった。
「なぜ白味噌なのですか」
「滋賀県の南部には白味噌でお雑煮を食べる文化があるんです。野洲まで。それ以降だとお澄ましになったりするんですよね。」
京都にほど近い滋賀県大津市の白味噌文化を、九重味噌さんは支えてきたわけだ。でも、白味噌を年中作っているわけは、それだけでは無いらしい。

「うち、敷地が狭いんですよ」
つまり、こういうことだ。1年以上寝かせる味噌屋の場合、味噌を置いておく広大な敷地が必要となる。田舎に行けば、木桶がずらっと並んだ味噌屋がある。しかし、ここは市街地。
白味噌は味噌を仕込んでから早ければ2〜3日で仕上げることが可能で(そのあとの後熟が必要では無いということでは無い)、回転が早い。なので、狭い発酵場で、それなりの量の味噌を作って、経営を成り立たせるために白味噌が適しているというわけだ。これは西京味噌で有名な京都市内も同じ理由であるかもしれない。

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(極上白味噌。写真よりも実際の色はもう白くて美しい。水分量も柔らかめで、見るからに滑らか。)

そんな九重味噌さんの味噌製造の現場を、特別に見せていただいた。

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第一印象として、酒蔵並みに整然と現場が整えられていて、清々しい。道具があるべきところにあり、散らかった印象が全く無い。ちょっと普通の味噌屋とは印象が違うのが、正直なところだ。味噌屋は大量の湯も、大量の塩を使うため、色々とボロボロになりやすいと思うけれども、ちゃんと洗い流し清潔であることが伺える。また水溜りは一切なく、換気が力強いためだろう、カビによるくぐもった香りがない。麹菌を大量に使い、蒸したり煮たりして大量の蒸気が発生する場所であるのに、綺麗だ。そして床のメンテナンス・天井の張り替えなど投資していることが伺える。
ちなみに、製造は最大3人で行なっている。大きな工場ならいざ知らず、この現場をこの人数で綺麗に維持していることが本当に驚きだ。敬服しかない。

仕込みがあるときは5時から始動するという。主人は夜も残って糀のお世話をする。冬だけではない。一年中だ。凄まじいな、、、。
でも、ご主人はなんてことないように淡々と話すのである。俺はすごいという雰囲気は一切ない。

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これが甑。240kgのお米を蒸せる。蒸した米をスコップで掘るのが重労働!私には無理です。

お米は色んな地域のものを使用しているが、だからこそ水分調整が難しい。水に浸ける時間が1時間半のものもあり、粘りが出ないような良い蒸米に仕立てる。理想は「外硬内軟」。一度にお米を甑に入れることなく、蒸気が上がってきては抜け駆けで米を置いていく。蒸しあがりは指で米を潰してみた感覚で、蒸し時間を10分伸ばしたりして調整する。そこが鍵だ。

「白味噌は何と言っても糀の出来が鍵ですから」

ということで、九重味噌さんの心臓部、糀室に潜入する。普通は入れる場所ではないので、とくとご覧あれ。

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その2はこちら


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