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スキンケアを諦めて、物を書く

小学生の頃、いつも心の中で毒づいていた。ヒアルロンさんだのボトックスだの顔に打ちまくる母親を見て、「35歳のBBAなんて誰が見るんだよ?」と。今、35歳のBBAになってみて分かる。めっちゃ悪あがきしたい。

毎朝、鏡を見てぎょっとする。化粧してなんとかマシになったものの、夕方には再びオバケになっていた。だから私は選んだ。鏡を見ないという道を。鏡を見なければ現実を直視せずに済むし、別に身なりで売っているわけではないから。

でも周りのママ友は、何かしら美容医療をやっている。年齢は私より上のはずなのに、私より若く見えるし、むしろ産後よりキレイなママもいる。これではいけない。仙人のように山奥で過ごしているならば良いが、保育園の送迎で毎日外に出るし、小学校にもちょこちょこ顔を出しているからだ。

何かしよう、と思った。あれほど陰毛と騒いでいた髪の毛も、ストレートパーマをかけたら一気にサラサラになって「もっと早くかければ良かったな」と思ったからだ。ストパーをかけた決め手は、ある女流作家がきっかけだった。

特定されると気の毒だからぼかすが、彼女は良いことを書いていたのだけど、同時に掲載されていた写真では、髪がボサボサでノーメイクだった。文章の記憶より写真を見て「うっわ、きっつー」という印象の方が強烈に残ってしまった。女性の人生は酷である。良いことを言っても「でもお前、ブスじゃん」の一言で終わるからだ。

女流作家は「でもお前ブスじゃん」を筆力で叩き伏せて来た人たちが、今まで多かった。でも最近は、美人な女流作家が増えている。読モ作家の中には、文章がうまくない人もいる。あれ、作家って(kindle出版やビジネス書、エッセイストやコラムニストの「自称:作家」をのぞいて)小説を書くこと以外は致命的に何もできない人がなる職業じゃなかったっけ……?

友だちを作るのがうまくて、美人で、優しい夫と子どもがいて、しかも弁護士とか医師とかの資格も持っています!みたいな人が作家になると「何だかなぁ」と思ってしまう。もちろん彼女たちは何も悪くない。これは完全に嫉妬だ。でも女性は、何もかも持っている同性に嫉妬するものだ。相手が男性だと、不思議と何の感情も湧きあがらないのにね。

私が今更、弁護士資格を取るのは無理だから、せめて美容を頑張ろうと思った(そこは物を書いて頑張れよ!)

そんなわけでフェイシャルに行ってみた。おそらく人生初である。施術をしてくれた方から「化粧水、使っていませんね?」と見抜かれた。そう。お風呂あがりも顔を洗った後も、ニベアの青缶をパパッと塗って終わりだった。

どうやら「そういう肌」になってしまっていたらしい。保湿をせずに、油で蓋をしただけの肌に。なんだかごめんよ、と自分の肌に謝った。今までちゃんと労わってあげれていなくて。人でも植物でも、大事にしてあげれば、それだけ元気になるのだろう。私は自分の肌を、あまりにないがしろにしていた。

帰宅して化粧水を購入しようとAmazonを開いたが、種類が多すぎる。どれを選ぶか全く分からなくて、1時間ほど吟味した結果、結局何も買わず寝てしまった。翌朝にはニベアの青缶すら切らしていて、ワセリンを顔に塗って終わった……。

ああ、そうしてまた週末がやってくる。息子とアフタースクールの夏祭りに行き、娘たちをプールに連れて行かなくてはいけない。そうしているうちに、時間が過ぎていく。やっぱりAmazonでニベアの青缶を買うのが、私には限界なのだろう。良いものを書けるように頑張りま~す。


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