味ポン

小説書いてます。※投稿は金融取引を推奨するものではありません。

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最近の記事

2024年下期の市場について

■2勝4敗の米国経済 5月の主要統計が出揃った。市場予想を上回ったのはISM非製造業、雇用統計で、市場予想を下回ったのはISM製造業、JOLTS求人、CPI、小売売上高だった。現在の米国経済はさしずめ2勝4敗であり、米10年金利は月初の4.5%から足元4.2%まで低下、指数ではナスダックなどが上昇している。 個別指標を見る前に今後の市場の推移を考えたい。半年前の23年末時点で、本NOTEでは「2024年は前半上昇、後半停滞」とみていた。理由は、22~23年に相場を押し上げ

    • ISMサマリー:景気減速は良いことか?

      5月のISM製造業は48.7と、市場予想の49.7を大きめに下回った。既に多くのメディアや金融機関から「米経済はノーランディング」と太鼓判を押されていただけに、ISM軟化はサプライズ感が強い。 実は、24年3月を除けば、ISM製造業は19ヵ月に渡り50を割っている。ここまで長い50割れはリーマン・ショック時(12ヵ月)ですら経験がない。米景気はサービス業の好調でリセッションを免れているが、最近ではISM非製造業も50割れとなっており、先行きリスクは高まっている。 当NOT

      • 相場の悲観と楽観を分かつモノ

        GW前後の株式市場は米国のスタグフレーション懸念に見舞われながらも、足元まで何とかこらえている。以下、指標を概観する。 ① GDP 4月25日に発表されたGDP統計は前期比年率+1.6%と市場予想の+2.5%を大きく下回った。同時に発表されたPCEデフレーターも前年比+3.7%と市場予想の同+3.5%を上回った。市場は脊髄反射で金利上昇+株下落のスタグフレーション・トレードで反応したものの、その後は「よく見たらそうでもなかった」と言わんばかりに株も金利も戻した。個人消費が

        • 景気と物価が生み出す相場の位相遷移について

          3月CPIは市場予想対比上振れし、金利は上昇、株価は下落という分かりやすい反応となった。FRBの年3回の利下げ予想も年2回ではないか、との観測が広がっている。 利下げ予想を深堀りすると、実は「年1回」との見方も大きく増えている。加えて、来年4月時点でも「今後1回か2回」の見方が増えている(図表)。今回のCPIは市場の利下げ期待をかなり後ろ倒しにさせている。 インフレ動向を寄与度で確認すると、家賃インフレ減速の減速、というこれまでの動きに加え、①その他のじわりとした再加速、

        2024年下期の市場について

          インフレ再加速の芽をチェックする

          株式市場は3月FOMCをこなし、いよいよリスクオンへの傾斜を強めている。 FOMCでは、足元で加速の兆しが見られるインフレをFRBがどう解釈するかに注目が集まった。パウエル議長はインフレ再加速懸念を一蹴し、年3回の利下げ見通しを維持したほか、QTの早期縮小を見越していることを明らかにした。 果たしてインフレが再加速する可能性はないのだろうか。例えば、パナマ運河は干ばつの影響で運行が滞っており、スエズ運河もイスラエル・ガザの紛争のせいで喜望峰経由の遠回りを余儀なくされている

          インフレ再加速の芽をチェックする

          景気と株価どちらが正しいのか

          2月の株式市場は日本を中心にさらに上昇を重ねた。日経平均は文字通り史上最高値を更新し、どこまで上がるかわからないゾーンへ突入している。「外人はバブル高値の38915をそもそも知らない」との触れ込みもあり、高値警戒の日本人、無警戒の外人の両者が市場に混在している。 言うまでもなく今相場は半導体などハイテク株の上昇に支えられており、それ以外は動きが鈍い。そのことは当noteで散々擦ってきた台湾受注によるISMカンペにも色濃く現れた(図表)。過去10年に渡り台湾の輸出、すなわち半

          景気と株価どちらが正しいのか

          株高と金利上昇が並存する理由について

          2024年も1ヵ月が過ぎ、市場はフィーバーに沸いている。 米景気は異様な強さが目立っている。昨年末はパウエル議長のハト旋回に沸いたが、強すぎる指標は市場の利下げスケジュールを揺さぶっている。 とはいえ株価は底堅いどころか上がっており、投資家を悩ませている。最も簡単な理屈は「景気が良いから株も上がる」というものである。こうした見方は景気敏感株やバリュー株を支える。他方で、「今は良くてもいつか利下げする」という遠望も併存しており、これまたグロース株の急落を阻止している。「良い

          株高と金利上昇が並存する理由について

          中国のマクロ環境は変化したのか

          外資企業の中国撤退中国株市場が直滑降で下落している。要因は様々言われているが、とりあえず中国景気への信頼感が低下していることが根本にあるとみて間違いない。 とはいえ周囲に溢れる中国情報については吟味する必要もある。最も注意すべきは日本など海外企業の現地情報であろう。現在、中国市場では日本など外資企業が最も割を食う環境にある。中国における日本現地法人の売上高は2021年末から2022年までで▲30%減少した(図表)。自動車に至っては▲33%の減少である。これほどの減少は21世

          中国のマクロ環境は変化したのか

          何故金利は上がらないのか

          新年1月の第1~第2週は世界も相場も激変に見舞われた。 日本においては北陸の震災により日銀も早期に正常化はできないとの観測が高まり、相場の上値は幾分軽くなったようである。また、先日発表の現金給与総額が予想比大幅な下振れとなったことも日銀の緩和長期化期待に拍車をかけた。2022年12月のYCC修正にトラウマを抱える市場にとり精神安定剤として働いたとみられる。 日本株については海外勢、特に中華勢・中東勢の買いが入ったとの報道も出た。昨年一年間の強烈な上げ相場を目の当たりにした

          何故金利は上がらないのか

          24年相場は前半上昇・後半警戒

          裏返る?米景気2023年の米景気は生産不調+消費好調というミックスであった。結果、インフレ率は低下し市場はゴルティロックスをエンジョイしている。他方で足元では生産復調+消費軟調の兆しが出始めている。果たして米景気のトレンドは丸々ひっくり返ってしまうのか。 生産復調の兆しとしては、以前から述べてきた台湾カンニングがピックアップしていることが挙げられる。1月3日深夜のISM製造業は上向きに転じる可能性が高いとみる(図表)。 また、企業の設備投資(の代替指標として非防衛資本財除

          24年相場は前半上昇・後半警戒

          2024年 相場展望

          2023年も残り2週間となった。一昨日のFOMCではパウエル議長が予想外のハト派旋回をキメたことで株式市場はショートカバーをエンジョイしている。結局のところHIGHER FOR LONGERは来ず、サンタがサタンになる心配は杞憂に終わった。 2023年の米経済は多くの予想に反し、景気は良いがインフレも金利も下がりうる、という教訓をもたらした。この事実を精査しないと来年の景気を占うことはできない。 景気について生産、雇用、消費について順次見ていく。なお最後の消費が最も重要で

          2024年 相場展望

          ジェットコースターと化した23年相場

          10月も最終週が来週に迫り、23年も終わりが見えてきた。 昨年末に掲げた23年の相場観は「前半堅調・後半軟調」であり、この動きは大体合っていた。消費が強いためにリセッションは来ず、企業業績の改善で株価は上がった。インフレ率は財を中心に低下し、過度なインフレ懸念は後退した。他方で強い景気はインフレリスクをぐずつかせ利下げ観測は後退、株価にリスクとなった。 経済指標に触れると、来週11月1日(水)にISM製造業とJOLT求人、11月3日(金)にISM非製造業と雇用統計が予定

          ジェットコースターと化した23年相場

          ほっと一息ディスインフレ

          相場環境が荒れた一週間が終わった。先週から今週にかけ、特にJOLTS求人件数やADP雇用統計、公式雇用統計など雇用関連の指標が相場を大きく動かす時間帯となった。 まず以て足元の株式市場は実体景気の回復を相当程度先取りした状態にあると考えられる。使い古されたS&P500とISM製造業の連動は、足元で株価が大きく上に乖離している状態だ(図表)。ここまでの乖離は過去20年のうち、2007年か2012年しかない。前者は株価が下方向に収斂し、後者は景気が上方向に収斂した。果たして今回

          ほっと一息ディスインフレ

          実は根拠の薄い景気回復シナリオ

          米CPI、小売売上と市場は月中の重要指標を通過し上下に振れている。以下、順に指標を追う。 8月の米CPIは前年比+3.7%と市場予想をきわめて小幅に上回った一方、コアCPIは市場予想通りの結果となった。項目別で見れば明確だが、今回のCPI上振れはエネルギー価格の上昇が効いている。コアCPI、すなわち物価の基調は引き続き減速とみるのが妥当だろう(図表)。 CPIの大宗を占める住居費だが、引き続き住宅価格の減速に引き摺られる形で減速が続いている。住宅価格と住居費のラグモデルで

          実は根拠の薄い景気回復シナリオ

          荒れる相場・高まる期待

          激動の8月相場が終わった。最終週はバーテンダーが振るカクテルのシェイカーにぶち込まれたような激しい値動きに疲弊した投資家も多かったであろう。 最終週火曜日は米JOLTS求人件数が市場に波乱を起こした。市場予想は946.5万件であったところ882.7万件と下振れたほか、前月も下方修正された。景気過熱シナリオを心配していた市場は虚を突かれ、「求人は減ったが水準はまだ高い」というゴルディロックス的解釈で落ち着き、金利は低下、株価は上昇した。 ただ、indeedカンニングでは求人

          荒れる相場・高まる期待

          米景気と賃金の逆行について

          7月CPIは市場予想を下回り、ディスインフレトレンドに変化がないことが確認された。期待されていた家賃の減速はおあずけとなったものの、住宅価格との対比では家賃もそろそろ減速基調に入るとみられる(図表)。 昨年冬から長きにわたり続いているインフレ減速トレンドは、耐久財、非耐久財、サービス価格がそれぞれ折り重なるように減速していることで形成されている(図表)。足元では原油など資源価格が上向きつつあることが懸念材料だが、サービス価格はCPIの61%を、家賃は34%を占める一方、エネ

          米景気と賃金の逆行について