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【 エッセイ 】 もしも嫌いな人を1人残らず消せたなら···

「あの人さえいなければ···」

自分を含め誰もが家庭、職場、学校等で一度は抱いたことのある感情だろう。あの人さえいなければ心地よく過ごせるのに、嫌な思いをせずに済むのに、学校にだって楽しく行けるのに···。

僕自身これまでの人生においてそうした感情を抱いたのは一度や二度ではない。何か壁にぶつかる度に感じてきた感情と言っても過言ではない。

では本当に嫌な人を自由に消していけるなら、自分の世界はどのように変わっていくだろう。
それを想像するのにうってつけのものがある。
ドラえもんの秘密道具「どくさいスイッチ」というものである。

「どくさいスイッチ」とはドラえもんの秘密道具の1つで、消したい人の名前を言ってスイッチを押すとその人を消せるという恐ろしい道具(笑) 。

勉強や宿題のことなど、親にとやかく言われて嫌気がさしたのび太が親を消すためにドラえもんに頼んで出してもらった道具である。

のび太がその後に取った行動は僕自身がのび太なら取るであろうと思う行動とやはり似ている。

まず嫌いな人を消す。
「あの人さえいなければ···」と思う人を真っ先に消すのだ。これでかなり気持ちが楽になる。

次にそこそこ嫌いな人を消す。
自分の脅威になりそうな人もあらかじめ消しておきたい。これでストレスがほぼ解消される、はずだったのだが···。

人間はずっと一緒にいるといい部分だけでなく悪い部分が目につくようになる。そしていい部分よりも悪い部分の方が気になってくる。嫌いでなかった人がだんだん嫌いになってくる。

そうするとどうなるか。
最終的に元々は嫌いでなかった人まで次々に消していってしまうことになる。ここまで来ると想像するのも恐ろしい。

消さずに残るのは自分の言うことに従順に従ってくれる人だけになる。それが本当に幸せなのだろうか。望んでいた形なのだろうか。恐らくそんな世界の中では自分の成長もないし、何より楽しくないだろう。

ちなみに原作ではのび太が自分以外の全ての人を消してしまい、「寂しいよぉ」と泣いてドラえもんに元の世界に戻してもらうという結末になっている。

結局、嫌いな人を消すと次々に新たな嫌いな人が出てきてきりがない。ここで初めて気づくことは自分の生きる世界を変えていくのは自分自身でしかないということ。自分を変えていくしかないということ。

性格自体ではなく物事や人に対する捉え方や距離を置くことや環境を変えること。人のいいところを見る。適度な距離を取る。もっと自分らしくいられる場所を見つけて今の環境を変えてみる。

嫌いな人を「消す」のではなく嫌いな人が「いない環境をつくろうとする」。これが僕たちが本当にやるべきことなのではないかと思う。

人を憎むことは簡単。でもそういう時にこそ自分に目を向けないといけない。心の中のどくさいスイッチを捨てて、心の余裕を取り戻さなければいけない。どくさいスイッチで消えてしまうのは他の誰かではなく「本当の自分」かもしれない。

嫌いな人とどうすればうまく付き合えるかを考える、距離を置いた方がいいのか、環境を変えた方がいいのか。

それらを冷静に考えてみることの方が、人を憎むことよりもはるかに大切だと、少なくとも僕はそう思うのである。皆さんはどうだろうか。




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