見出し画像

【購買力/交渉力/情報ネットワーク】年収150万円だった男がビジネス用語で貧困問題を語る!

私は25歳まで深夜のコンビニでアルバイトをして生計をたて、派遣社員を経て、28歳で上場企業の正社員になりました。バイト時代は資格の勉強と並行していたこともあり、シフトは抑え気味。かなりお金に困っていました。今回はその経験を基に”資本主義”をテーマに書きたいと思います。(大きすぎて無理のあるテーマ設定ですが)

① なぜ私が貧乏生活に陥ったか

学生時代から放送作家になりたくて、番組制作会社に入ったのですが、ブラックな環境に値を上げ、数か月で退職。25歳にして深夜のコンビニでアルバイトをする”フリーター”になりました。

当時働いていたコンビニのオーナーは経営上手で(皮肉)、フルタイムのバイトは週3日しかシフトに入れませんでした。週4勤務にすると、企業側が社会保険料の半分を負担しないといけなくなるからです。アイス屋でダブルワークをしていましたが、月収は14万円程度。年収は150万円程度だったことになります。

意図的に働く時間を抑えていたという側面もあります。こんな生活は10年20年も続けることはできません。今、2万円、3万円の資金的余裕ができたとしても大した意味はない。10年後の200万円、300万円獲得を目指して英語の勉強に力を入れていたのです。


② 生活が困窮すると直面する3つの「喪失」

一度、貧乏生活に入ってしまうと、そこから這い上がることには困難が伴います。本稿では社会人の方々がよく聞く"ビジネス用語"と3つの「喪失」を関連付けて説明したいと思います。
_

1.“購買力”の喪失

社会人の方々は「ボリュームディスカウント」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。企業では、大量に仕入れることを条件に、商品を安く購入することができる場合があります。Amazonの本・衣類がリアル店舗よりも安いのは、同社が豊富な販売量を背景に、サプライヤーから低価格で仕入れを行っているからだと言われています。

これは個人にも当てはまります。
スーパーで売っているハーゲンダッツは6個入りの方が一つあたりの価格は安い。消費する目途があり、購買対象が食料品や消耗品であれば、たくさん買ったほうがお得なのは間違いないでしょう。

ところが手元のキャッシュが少ないとこれができません。
当時、私の主食は5個セットで298円になったサッポロ一番でした。昼14時に起きたら、まずサッポロ一番を食べるという生活でしたから、年間300食くらいは消費していたと思います。

お金に余裕があるときは5個セットを買うのですが、それができないこともありました。英語関連の書籍を買ったり、TOEICの受験料を払ったりで、次の給料日まで資金が持たないという事態になることがしばしばあったのです。

そんなときは、1個88円(だったような)で買います。セットで買う場合には1個あたり60円なので、だいぶ損してます。でもわかっていてもそうするしかないのです。

貧乏生活では購買力が低下します。それによって普通の人よりも損をしながら生活することが強いられるのです。
_

2.“交渉力”の喪失

社会人になったあとに、マーケティングというものを勉強し始めると、とあるテキストに「交渉力の源泉」という言葉が書かれていました。交渉というのは、力強い説得や言いくるめる口のうまさではなく、買い手と売り手の力関係によって決まるものだ。そんな主旨だったと思います。

買い手が取引先に値切り交渉をしたとき、
売り手が承諾するか否かには、様々な要因が影響します。

売り手にとって、買い手が優良顧客か(たくさん買う顧客か)
買い手にとって取引先を変えるコストが高いか
買い手にとって内製化するコストが高いか etc.

これは日常生活にも当てはまります。
私は当時、貧乏生活を送っているにしては6.8万円という高い家賃を払っていました。初めての一人暮らしで知識がなく、家賃が高騰する3月に引っ越してしまったからです。数年後に引っ越した後、同じ部屋が5.8万円で貸し出されていたので、結果的には毎月1万円損していたことになります。

当時から「どうもこの家賃は高いよなぁ」と思っていました。ネットで検索をしてみると、「家賃が高いと思ったら交渉できる」という記事を目にしますが、どうにも交渉しようという気が起きません。

それもそのはず。こちらには交渉材料がまったくないからです。

例えば更新のタイミングで「もし家賃を2000円下げてくれたら更新します」と交渉するとします。そのメッセージの裏には「下げてくれなければ引っ越しします」という意味が隠されています。大家からすれば、入居者がいなくなってから、次にいつ次の入居者が来るかわかりません。家賃収入が数か月入らないのと比較すれば、”2000円くらい”と思って、交渉は成立する可能性があります。

ところがです。私の場合はそもそも引っ越し資金がありません。
明日の日銭でヒイヒイ言っている人間が数十万なんて金を捻出できようがない。まずいことに、大家は私が朝方に帰る様子や、時折家賃の支払いが遅れる様子を見ていますから、こちらの経済状況もわかっているでしょう。こんな状況で交渉がうまくいくはずもないのです。
_

3.“情報ネットワーク”の喪失

いやいや、本当に生活に困ってるんだったら、とりあえず交渉したら?

と思う人もいるでしょう。
しかし、そこには最も大きな問題が潜んでいます。

それは”尊厳”です。

生活困窮者が生活保護を勧められた際に「恥ずかしい」と言って拒否することがあると聞きます。第三者からすれば、どうということはないことでも、本人にとっては尊厳に関わることです。自分の生命が危機に晒されても尊厳を優先する人もいるでしょう。

お金がないことはそれほど”恥” なのです。

私の場合もそうでした。家賃交渉ができなかったのは金銭的な事情で交渉ができなかったことに加えて、お金がないことを大家に言う”恥ずかしさ”がありました。

この”尊厳”問題は二次被害を生むことになります。
お金がないことに後ろめたさがあると、人間関係が閉ざされてしまいます。
恋人や友人との交流はなくなります。
これは金銭的な事情からではありません。
お金がないことで尊厳が傷つくからです。

子供のころから仲良く遊んでいた二人の友人同士がいたとします。一方は上場企業正社員の既婚者、もう一方はフリーターで独身。こうなったとき、2人は変わらず仲良くおしゃべりできるでしょうか。おそらく後者の人はコンプレックスで会話にならんでしょう。

よくビジネスでうまくいった話で「知り合いの〇〇が××を紹介してくれて」なんてのを聞きますよね。お金があれば人間関係の構築が円滑になり、情報が手に入るようになります。それによってさらにお金が手に入りやすくなるのです。

お金がないと、これと真逆のことが起こるわけです。

自治体が用意する生活支援制度も、存在が知られていなければ申請されることはありません。簡単でまあまあ稼げる仕事があっても、孤立していれば出会うことはありません。

誰も手助けをしてくれない。
いや、そもそも手助けが必要であることに気づいてもらえない。

ということが起こるのです。

③ 資本主義の本質とは?

数年前トマ・ピケティの「21世紀の資本」という書籍がブームになりました。ピケティは過去の膨大なデータから”資本収益率は経済成長率よりも大きい”ことを明らかにし、資本主義を放置すれば、ますます経済格差が拡大することに警鐘を鳴らしたのです。

お金があるところにさらにお金が集まる

これが資本主義の本質なのでしょうか。

私は今も一端のサラリーマンで、決して大富豪ではありません。しかしながら当時と比較すれば生活はだいぶ楽になったと思います。そのレベルでも「お金を持つほど稼ぐのが楽になる」ということを自覚しています。具体的には「給料が上がるほど、仕事が楽になっている」と感じるからです。

当時の仕事は肉体労働で楽しくありませんでした。会社員としての仕事は日によっては手を抜けるし、やりがいを感じられることも多いのです。

さて、読んでいただいたみなさんはどのように感じているでしょうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?