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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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#ライトノベル

ここが愛の最前線! ~土岐丘 しゅろ『推しの敵になってので』を読んで~

 突然ですが、皆さん推し活ってしてますか⁈ ライトノベル界隈だと自分or周囲の誰かしらは好きな作品或いはキャラのグッズ買い集めてる人ってそれなりにいらっしゃるイメージがある。X(旧Twitter)なんかを見てるとぬいぐるみとお出かけしたり可愛い写真がまわってきて癒されたりする。中にはぬいぐるみを自作する猛者なんて方もいらっしゃるとか。  え、私? グッズ系はお財布事情&収納スペースの問題であまり触れてない感じですね。強いて言うなら最近は特定の歴史上の方にまつわる書籍をフィク

いざ、壮大な歴史の先へ ~不破 有紀『はじめてのゾンビ生活』を読んで~

 最近、ある人と喋っていた時に出てきた「SNSやショート動画の影響で長いコンテンツに対する集中力が無くなってきている」という話題が深々と胸に刺さった。私も最近は種類によっては10分ほどの動画を倍速にしたり、SNSを横目にテレビ番組を見てたり。ぶっちゃけテレビ付けてる意味なくない? と思わなくもないのでこの癖はできる限り辞めるようにしないとと常々思っております。  それでも読書は、たとえ長編でもまだ集中して読めている方なのかなとふと考えた。読書はどうしても"ながら"ができない

愛する心は壁を越えて ~柳之助『バケモノのきみに告ぐ、』を読んで~

 最近の作品のタイトルには最後に句点「。」が付いていることが多い。普段からSNSでの読了報告や今のような本紹介といったものを書いている身からするとミスをなくすためにもかなり神経を張って確認している。そういうことを思うと『バケモノのきみに告ぐ、』のように最後が読点「、」で終わっていることはかなり珍しく感じる。中途半端のような印象も持つがその直前の「告ぐ」という動詞や追想録という特徴を踏まえるとこれから証言をするといった解釈にも取れてしまう。そういう意味では「。」よりも「、」の方

日常も謎だらけ ~水鏡月 聖『僕らは『読み』を間違える』を読んで~

 日本だけでも世に出る本の数は途方もない。狭い界隈であるライトノベルですら1日に1冊のペースで読むとしてもほんの1部しか読めないのだ。当然、面白い作品の存在を知らぬまま次の新作に埋もれてしまうことも珍しくない。  恥ずかしい話になるが、私が『僕らは『読み』を間違える』を知るきっかけになったのは先の『このライトノベルがすごい!』においてだった。しかも投票時期ですらなく、結果発表がなされた書籍の中で、だ。  あらすじを見たとき「どうしてここまで私好みの作品を知らずにいたんだ⁈

ここは新たな怪談が生まれる場所 ~甲田 学人『ほうかごがかり』を読んで~

 突然だが皆さんが通っていた小学校には七不思議というものがあっただろうか。実は私は父と通っていた学校が同じだったので面白半分で聞いたことがあった。その時教わったのが「ウサギ小屋の左隣(右だったかもしれない)を掘るとお宝がある」だった。実際に見つけたとか言ってたけどこれ絶対嘘でしょ。そもそも怪談ですらないし。今振り返るとふざけているようにしか思えないのだがここは怖いものが苦手な私に配慮したということにしておこう。  どうしてそんな話を思い出したのかというと七不思議がモチーフと

疾風怒濤に駆け抜けろ! ~馳月 基矢『龍馬 THE SECOND』を読んで~

 反省します。本屋でこのタイトルを見た瞬間、「転生か⁈ 二週目か⁈」と気になって私にしては珍しく裏表紙のあらすじを確認しました。全然違いましたよ。何が起きてるんだと気を引いて仕方なかったですよ。こういった誰もが思いつきそうでそうで無さそうな塩梅のアイデアが突如として出てくるものだからライトノベルはやめられない。  という訳で今回紹介するのは『龍馬 THE SECOND』となります。半年ぐらい前の私にこういうタイトルのラノベが出るよって言っても絶対に信じないだろうなと確信して

懐かしくも新しい記憶 ~古宮 九時『Unnamed Memory』を読んで~

 もしかすると普段から私のnoteの記事やX(旧Twitter)をご覧になられてる数少ない方の中には薄々お気づきかもしれない。「こいつ、『Unnamed memory(以下アンメモ)』にドはまりしてやがるな!」と。滅相もございません。既に関連記事2つ出して1話の時点でアニメの毎週録画を設定し原作小説を既刊最新刊まで買いそろえてるだけの新参者でございます。というか『アンメモ』だけでズブズブな上に同作者様の著書2シリーズも積んでる辺り見事なまでに私の性癖を的確に刺激されてるような

キラキラステップと新生活 ~織島 かのこ『嘘つきリップは恋で崩れる』を読んで~

 新年度、或いは新生活が始まってはや1週間。そろそろ諸々の変化の対応にも落ち着きが見られ始めた頃だろうか? ラノベ的には卒業と進級も一大イベントとなるだろう。それは現実も同じこと。私も新しい図書室の蔵書とかずっと気になって仕方がなかった。中学は割とあった方だったかな? 高大は……うん。この頃にはもう欲しい本は自分で買ってたな。  話が逸れてしまった。小学校から中学高校、最近では大学までがオーソドックスな教育課程とされるだろう。その中でも最も変化が大きいのは高校から大学なので

歪んだ運命に抗って ~那西 崇那『蒼剣の歪み絶ち』を読んで~

 近年はライトノベルのジャンルも随分多様化したようにも思える。単純にライトノベルを取り扱う出版社やレーベルが増えただけかもしれないが。色んな物語が開拓され受け入れられていることには、普段から自由に歩き回る質の私にとっては嬉しいことこの上ない。そのせいで書籍購入の費用が嵩んでいることには目を瞑るとしよう。  そんな多様性の土壌が拡大される中で出会った『蒼剣の歪み絶ち』はよくぞ世に出してくれた! と感嘆する他ない。大まかなジャンルで分けるとファンタジーやアクションといった王道な

ちょっとふしぎな後日談? ~日之影 ソラ『転生、沖田総司 ー新選組異聞録ー』を読んで~

 最近インターネットで情報収集をするようになっても、初めて書店で出会う本はなくならない。今回紹介する『転生、沖田総司 ー新選組異聞録ー』もそのうちの1冊だ。シンプルながらも目を惹くタイトルと背表紙の装丁の本が数冊、新刊の棚にこっそりと並んでいるのを幾つかの書店で見かけたのが妙に印象深い。そこまで目が吸い付くのならばということでついに手に取った次第だ。(実際に購入した場所はアニメイトなのだがそこはそれ。私的にはアニメイトは書店です。異論は認める)  常日頃から異世界ものに浸っ

噂の怪作はシン・近代文学⁈ ~零余子『夏目漱石ファンタジア』を読んで~

 長いようで短いライトノベル新人賞史の中でも受賞作発表時点でここまで話題になった作品は後にも先にも『夏目漱石ファンタジア』ぐらいな気がしてならない。なにせ大作映画を彷彿とさせる『シン・夏目漱石』に意識が向き、更にはもう色々とぶっとんでいるあらすじ。史実の人物に加えて時代も合わせた作品というのがラノベ自体ではメジャーなものではないのに加えて史実ベースでもエンタメ方面に舵を切った作風も近年稀に見ないような気がする。最近は史実に歩みを寄せる作品が多いというイメージが強かったから余計

ようこそ"本格的"ミステリの世界へ ~夜方 宵『探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。』を読んで~

 正直な話を、私はタイトルは短い方が好き派だ。だがその意見が本質からややズレていたということに気が付く機会があった。それが今回紹介する『探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。』(以下『すいほろ』)だった。実際に数えてみると句読点も含めてぴったり40字。背表紙のみっちり具合も他に追随を許さない。  普段ならそこまで気にならない文字数なのにどうしてこうも興味を持ってしまったのだろう? 振り返って考えるに全てを説明しない、一度その意味を読

絵空事かもしれない夢でも君となら ~瀬戸 みねこ『富嶽百景グラフィアトル』を読んで~

 まず初めに謝っておきます。今回いつもより若干テンション高いかもしれません。それもそのはず、まだ表紙も公開されていない年の暮れ。とあるWebサイトでたまたま『富嶽百景グラフィアトル』という本の存在を知ったのが全ての始まりだった。まずタイトルでラノベで浮世絵関係って珍しいなと惹かれ、次にあらすじを読んで「描いた絵で戦う? それもマンガじゃなくてラノベでやるの?」と興味を持った。結局少しも我慢できずに発売日当日に書店をハシゴして、読んでた途中の本が読み終わるや否や他の積読本を後回

旅を続けて、思い出を重ねて ~瀧浪 酒利『マスカレード・コンフィデンス』を読んで~

 あくまでも個人的な意見だ、話半分に聞いてほしい。ここ最近、ライトノベルでは今まで見向きもしなかったジャンルがあちこちで目立ち始めている。私の趣味というのもあるが、今までの本紹介でもいくつか取り上げている。新人賞・プロ作家の新作どちらにも見られるこの風潮はもうしばらく続くだろうと考えている。というか続いてほしい。  先月、そういった時期の中で新たに世に出た受賞作がある。それが『マスカレード・コンフィデンス』だ。この作品もどちらかというならばラノベにおける特殊ジャンル系に分類