短編小説 美しい女

その女は大層な美人だった。

顔、スタイル、どこをとっても人間にはとても思えないような美しさだった。

それもそのはず。

女は人間ではなかったのだ。

ある金持ちが娯楽でつくったロボットであった。

しかし、ロボットと言っても言葉は簡単にしか喋る事が出来なかった。

そう、人形の様に。

ある時、金持ちの屋敷に強盗が入り込んだ。

主人の留守を狙ったのだ。

そして金めの物を奪って逃げようとした時だった。

うっかり物音を立ててしまいロボットが反応したのだ。

「金目の物を置いて行きなさい」

誰もいないはずの部屋から女性の声がするものだから強盗は驚いて思わず部屋に向かって発砲してしまった。

すると、たまたまそこにあった赤色のペンキが置いてあったところに当たったものだから赤色のインクがドアの外にも溢れ出していた。

そんなことに気付かずに強盗が恐る恐るドアを開けると美しい女性が血を流して倒れているではないか。

強盗は、こんなに美しい女性はこの家の主人の妻なのだろうと思い少しでも罪を減らそうと金目の物を全て捨てて一目散に走り出していた。

そして幾らか時間が経った後部屋に主人が戻って来た。

すると部屋の有り様を見て主人は言った。

「今日もいい働きをしてくれたね。留守の時はこのロボットを赤色のペンキと一緒に置いておくだけでこの家の物が盗まれないだなんて安心だな。」

今日も一仕事したロボットは美しい顔で立っていた。

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