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「心理的安全性」をチームに取り入れるとどうなるでしょうか?

前回から心理的安全性をテーマにしています。
職場に心理的安全性を感じると「働きやすそう」「ストレスがなく働けそう」など仕事のパフォーマンスが高まりそうなイメージがあります。

確かに心理的安全性を高めることは、チームは学習レベルを高め、パフォーマンスの向上につながると言われています。

しかし「マイナビキャリアリサーチLAB」に気になるコラムが掲載されていました。タイトルは、「心理的安全性の再考~導入企業の課題事例から~」でした。

心理的安全性ですが、当然ながら「万能薬」ではありません。実践すれば必ず状況が好転するものではなく、ときに組織のパフォーマンスを停滞させたり、集団を分裂させたりしてしまうリスクさえ有しています。

マイナビキャリアリサーチLAB 2022.10.20
https://career-research.mynavi.jp/column/20221020_37331/

このコラムでは、心理的安全性を導入した結果生じた課題について解説しており、次のような課題パターンがあるとのことです。 

心理的安全性を導入した企業が抱えた課題
【問題ケース1】心理的安全性「だけ」が高まる
【問題ケース2】管理職の消耗が進む
【問題ケース3】組織の保守的な意識が高まる

マイナビキャリアリサーチLAB 2022.10.20
https://career-research.mynavi.jp/column/20221020_37331/

「問題ケース1」では、心理的安全性は高まったものの、「創造性アップ」「チーム学習」に影響がほとんどないという結果が生じたものです。
この原因は何なのでしょうか?

「自分の仕事が忙しいからチームの改善業務などには関わりたくない」「とくに改善や変革の必要性を感じていないので今のままでいい」といったコメントが確認されたのです。
学術的には、新しい取り組みや改善を進めるためには、メンバーの認知的・感情的・身体的なコミットメントが求められると言われています 。つまり、チームの心理的安全性を高めても、メンバーがチームにおける業務改善や情報交換、学習や創造的な業務に関心を持っていなければ、その後の成果につながらない可能性がある。

マイナビキャリアリサーチLAB 2022.10.20
https://career-research.mynavi.jp/column/20221020_37331/

要するに「発言しやすい職場」にする目的は何か、心理的安全性を導入する目的は何か、といった目的概念の欠如と考えられます。

次に、問題ケース2「管理職の消耗が進む」とはどういうことなのでしょうか?

心理的安全性を推進するうえでチームリーダーである管理者にかかる心理的・業務的な負荷は大きくなります。
とくに負荷が高まるのは、個々のメンバーへの関わりが増加することです。心理的安全性を適切に機能させるためには、個々のチームにおける役割を定めたり、チームへの参加を求めたり、感謝や期待など心理的な「報酬」を提供することが求められます。具体的には、1on1などの個別面談を実施することで、これらの包括性を効かせていくことが必要となります。
さらに、リーダーを消耗させるのは、リーダー個人の心理的安全性は担保されにくいという点です。心理的安全性の主役は、メンバーです。
リーダーは”黒子”となり、メンバーの自律的な振る舞いを支援することが求められます。それゆえに、リーダー自身が部下やチームに対して感じている本音をありのままに表明することは、かなり難しいでしょう。チームの心理的安全性を高めるためには、リーダーは自身の意見や感情を抑え、チームを主語に語り、リーダーとしてチームに貢献し続けることが求められます。

マイナビキャリアリサーチLAB 2022.10.20
https://career-research.mynavi.jp/column/20221020_37331/

チームや組織の創造力アップなどを目指す心理的安全性が、リーダーの消耗を推進するという構造は、人材活用していくうえで重要な視点ではないでしょうか。育成が難しいリーダー層にどのような影響を与えるかは導入の際、重要な視点といえます。

最後に、問題ケース3「組織の保守的な意識が高まる」とはどういうことなのでしょうか?

新たな意見や問題提起を期待して発言しやすい場を構成してきたが、その結果「あれは危険だ」「あの施策はやめた方がいい」「もっと慎重に進めたほうがいい」といった保守的な意見の方が増してしまったという企業もいらっしゃいました。
心理的安全性は言ってみれば「レンズ」のようなものです。心理的安全性を高めれば、個人の抱えている信念や価値観、職場の文化などが、個人の発言を通してより表出されやすくなります。つまり、「保守的な組織」は保守的な発言が、「真面目な組織」は規律的な発言が促されやすくなります。
これらのアウトプットが促されることで、メンバーは企業にとって好ましくない学習を進めてしまうリスクも考えられます。結果として、自社の保守的な文化を改善しようと心理的安全性を導入した企業において、むしろ挑戦性や創造性が低下したというケースは比較的良くみられます。
 大切なことは、心理的安全性によって自社の「何が」強化されているのかを良く観察することなのでしょう。心理的安全性を推進すること、そのものよりも、推進によって生まれた変化に注目する姿勢が求められます。

マイナビキャリアリサーチLAB 2022.10.20https://career-research.mynavi.jp/column/20221020_37331

心理的安全性を高めたチームや組織で働きたいという思いを実現するには、「自分の組織はどのような組織なのか?社風や組織文化はどういうものなのか?心理的安全性を高めて何を達成しようとしているのか?」などなど、組織改善プロジェクトともいうべき課題を誰が解決していくのかを考えることにつながるのではないでしょうか。

今回はここまでにします。

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