【詩】微熱と朝焼け

夜、三十七度五分の両手を握り合わせて、
きみのことを思い出す、
きみの、あの体温のことを思い出す、
暗い暗い瞼の裏を見つめて、
「あのときのきみの手は、冷たかったのか、熱かったのか、」
浮遊するみたいな意識と一緒に、血の流れる音がだんだんだんだん激しくなってゆくのを感じながら、
けれども、それでも、
ただただ小さくうずくまっているだけでもぼくは、ひとり、眠りにつくことができる、
毛布のなかで突然変異的にできた渦、そのなかにぐるぐるぐるぐる吸い込まれるように、微睡んで、微睡んで、そのまま眠りにつくことができる。

瞼を閉じた数秒先、体感数秒先の未来では、気が付くと朝焼けが近くにあり、閉じた瞼の裏までその明かりが眩く届いてくるのでした

ああ、ぼくには、分からないな、
足して七十四度だったら分かりやすいのにとずっと思っていて、
それが、好きとか、恋とか、そういう気持ちの行き着く果てだったらいいのにと思っていたのだ、
小さい頃は、
なのに、
こん、なふう、に、きみ、の体温、を忘れ、てゆく、きみ、を忘れて、ゆく、。

幕間

真昼の空を見て、もう過ぎ去った朝のこと
朝焼けの色は、誰かの体温、微熱、悲鳴をあげるみたいな高熱、恋で、愛で、赤らんだ誰かの頬の色、
だったらいい


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