【詩】偽悪者
今日も雨と一緒にあなたが世界を見つめていて、涙を乾かすみたいに太陽を見つめているわたしたちには、その立ち姿を見ているだけで苦しくなるのです。ねえ、教えて。あなたにはあなたの確固たる世界があると本気で信じてるの?わたしは思うんです。あなたが思うほど、あなたには真面に世界が見えていないんじゃないかって。
わたしは知っているんです。あなたは杖に寄りかかるようにして何とか道ゆく道を歩けているけれど、針金みたいにあなたを支える背骨があるから歩けているけれど、本当は、見えているもの、そのなにもかもを信じられないことを。口ではいろいろなことを言いながらも、結局、空気中を漂う酸素みたいに自明なものを、何とか取り入れようとしていることを。わたしは世界平和を願っていて、多様性を信じているけれど、きっとそれは、わたしがあなたと色違いの杖を持ってるだけのことなんだよ。正しさは、わたしにとって生きていくための栄養剤と同じだった。だからさ、一緒に手をとって歩こうよ。そんな風にわたしは、あなたに叶いもしない嘘を投げかけてみたい。
ねえ、知ってるんでしょ。主観だって幻想なんだって。あなたの中だけで終わって、わたしの中だけで終わる靄みたいな存在なの。ねえ、誰も個人の感傷なんて興味ないの。
支えてるつもりの頭が肥大して、言葉が毒素のようにわたしたちを蝕んで、けれどもわたしは今日も人に優しくし続けます。太陽みたいに、周囲よりも輝いているんだって、光を放射するみたいに存在を示していないと、わたしはもう立っていられないの。
溶け合うように世界がひとつになればいいのにと思う。太陽の熱がわたしから何もかも奪ってしまえばいいのにと思う。
わたしもあなたも等しくいい人なんだって、そう思いたかった。