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A Year in Venø

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ヴェヌー島の人たちは、先端技術を上手に利用しながら自然に触れる生活をしています。 季節の変化に繊細に対応し、春の訪れや秋の実りに感謝しながら生活をする人達であると同時に、風力発電… もっと読む
ヴェヌー島での豊かな生活の一端を、デンマークの文化とともに皆さんと共有したいと思います。
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記事一覧

はじめに

ヴェヌー島は、デンマークに大小500ほどある島のひとつ、ドイツとつながるユトランド半島中部のフィヨルドが作り上げた入江に浮かぶ島です。 数年前、この島の存在ばかりか、デンマークのこともそれほど知らなかった自分が、東京を離れデンマークに移り住み、ヴェヌー島で自然と戯れる生活がはじまりました。 デンマークも世界経済の波に乗り、海外からの簡単便利な道具が次々と導入され、昔ながらの生活が次々と失われていっています。 本や物語の中で見られるデンマークのおとぎの国のすがたは、現実のデン

januar / 1月

新年の魚 ヴェヌーでの新しい年は、鱈(たら)で始まった。毎年の事ながら、デンマークのお正月は、1月1日で終わってしまう。というか、1月1日の朝4時頃に終わるんじゃないだろうか(注1)。クリスマスは永遠と続くような気がするのに、お正月は、その瞬間だけらしい。ヴェヌーでの年末は、12月31日の夜から友人知人と集まり新年会をするというもの。大晦日の午後5時30分ぐらいから友人が集まり始め、午後6時から始まる女王マルグレーテの「新年のご挨拶」とよばれるスピーチを、皆で静粛のもとテレ

februar / 2月

お別れの作法 土曜日の明け方夜明け前、車を走らせてデンマークの最西ユトランド半島の街に向かった。 カイとリスの古くからの友人のお葬式に参列するためだ。 私は、以前、急に体調を悪化させ他界した祖母のお葬式に、迷った末駆けつけず、後から後悔した思い出がある。だからこそ、迷っているなら行こうとカイ とリスを促し、前日にこの小旅行を決めた。 人生イベントに関わる社会行為には、たくさんのコードが埋め込まれている。 お葬式はその最たるものだろう。 誰も説明しないけれど、ルールを皆が知っ

marts / 3月

オートミール復権 まだまだ寒いヴェヌーでは、どうしても家の中での時間が多くなる。特に週末ともなると、居間のある2階で、ワインやおつまみを楽しみながら、個々に本を読んだり、編み物をしたり、おしゃべりをする時間がどうしても多くなる。今日はなぜかニュース番組を視聴した。

april / 4月

イースターの卵料理 夏時間が始まり、日照時間が長くなっているのが感じられるようになって来た。朝、目覚めると外が明るく、夕方夕食時間もまだまだ明るい。春の訪れがこんなに嬉しく感じられるのは、暗くて寒い冬がつづくデンマークだからこそなんだろう。

maj / 5月

夏が来た! 今日は、夏日和。カイとリスの家のお庭は大きなピンク、黄色、白の花や桜、バラが咲き乱れ、野原に目を向けると黄色の菜の花畑が一面に広がっているしで、今日ヴェヌーに来た大人は、おとぎの国に降り立った気分になるに違いない。家から徒歩2分の海岸には、水遊びしている人達も沢山いる。帆船でセーリングしている人も多くて、自然を満喫しているに様子が良くわかる。カイも船を所有していて、息子さんと一緒にノルウェーまで言った話は、繰り返される楽しい思い出の一つだ。

juni / 6月

ガストロノミの王子 未曾有の経済好景気を経験し、毎日の生活に豪奢な贅沢品が満ち溢れ始め、ようやく食に目が行き始めた2000年度後半の食文化発展途上国デンマーク。近年、デンマークでは料理への関心が高まっている。テレビでは、数々の海外発料理番組が放映されているが、中でも最近注目を集めているデンマーク(スカンジナビア)発の料理番組ニュー・スカンジナビア・クッキングもある。 偶然番組を見て、そのおいしそうなスカンジナビア料理映像に食欲が掻きたてられた。リム・フィヨルドの牡蠣(Lim

juli / 7月

夏になると行く場所 夏になると、スカンジナビアの一日は長くなる。日照時間が長いから、夕方になってもまだ日が高くて、部屋の中でじっとしているのがもったいなく思えて。だからといって何か特別にする事があるかというと、そうでもなくて。 デンマークをはじめとしたスカンジナビアの人は、遅くまで働くという概念がない上に、大体退社時間は4時半から5時ぐらい(3時に帰る人もいる)。その時間から何かをしようと思っても、店は大抵同様に4時半から5時の間に閉まるからショッピングもままならないし、開

august / 8月

花のジュース 暑さが一段落して、時折秋の気配が風から伝わってくる8月は、ヴェヌーでは実りの秋の始まりだ。リスが毎日欠かさないお散歩から帰って来ているなと玄関まで迎えに行くと、両手に抱えきれないぐらいの白いお花を抱えていた。 デンマークに昔から伝わるお花のジュースでも作らない?とこれまた古めかしい木製の絞り器を持って来た。「大量のヒュルブロムスタのお花が必要なのよ」と話しながら、お花をチェックして、余計な虫がついてないか確認してとって来たお花を水でゆすぐ。しばらく煮込んでいる

september / 9月

野苺ジャムづくり 朝ルーンに会うなり今日はジャムを作るぞ!のかけ声とともにバケツと長靴を渡された。いつものメンバーのカイとリス、ライラとクリスチャンと三人の子供たちが揃い、一緒に家の脇にある林に向かう。 海岸沿いを歩くこと5分、丘を登ったその先はデンマーク語でボンベア(ブラックベリー)と呼ばれる野生ベリーがたわわに実るちょっとした茂み。こんなの初めてと目を見開く私を横目に、他のメンバーは戦闘準備完了で早速茂みをかき分けブラックベリー摘みにかかる。自然味たっぷり美しい自然と戯

oktober / 10月

デンマークで砂漠体験 芋休暇という秋休みがデンマークにはある。この芋休暇は正式な休暇ではないのだけれど,学校の授業が休みになるという休暇。芋休暇は、スウェーデンやノルウェーにはないそうで、どうやらスカンジナビアの中でも、デンマーク特有の半休暇らしい。そもそもこの一週間は、学生が実家に帰ってポテトの収穫を手伝うための休暇だったという。そういえば、日本の一部学校でも秋休みがあって、これは米の収穫を手伝うためだと聞いた事がある。今では、デンマークで収穫のために秋休み=芋休暇を使う

november / 11月

ジビエの季節 デンマークは、国同士の王室のつながりもありフランスの影響を大きく受けている。言葉もフランス語と近い言い回しがたくさんあるし、食文化もしかりだ。ハンティングを趣味にしている人も多く、特にヴェヌーは王室のとある人が良くハンティングに来る場所として知られている。そんな狩られた動物が、秋には、ジビエ料理としてヴェヌーの唯一のレストランVenø Kroに並ぶこともある。 今日、カイが討ち取られた鳥を4羽持って帰ってきた。ヴェヌーの知り合いに貰ったんだ、と、ニコニコしなが

december / 12月

クリスマス準備 デンマークのクリスマスは、12月1日に始まり、ほぼ30日まで続く。ヴェヌーの12月も、クリスマス準備で始まった。 クリスマスの時期になると、街中や町外れではクリスマスツリー販売小屋が立ち並ぶ。それは、日本の正月飾りを簡易小屋で売る年の暮れの様子と酷似していて、一種独特の雰囲気をかもし出す。ヴェヌーのクリスマス・ツリー準備は、更にユニークだ。 「クリスマスツリー取りに行くよ」のルーンの掛け声で、ドライブした先は林。林で適当な大きさのツリーを探す。家の中で家族

新年の準備

寒い暗いといわれる冬のスカンジナビア。 確かに寒いし暗いのだけれど、楽しいことも沢山あっ て、そのうちの一つがクリスマスであり、キャンドルライトだ。 小さな街でも日が落ちると運河沿いや店の軒先、家の前に大きなキャンドルライトが灯る。 運河沿いにずっと、大きなキャンドルが並べられて夜は本当に幻想的になる。 火事なったり放火とか心配じゃないのかなと思ったりもするのだけれど、大火事の話は聞かないし、小さな子供を見ていると、親が火の扱いをこれでもかと言うぐらい丁寧に教えている。 クリ