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februar / 2月

お別れの作法

土曜日の明け方夜明け前、車を走らせてデンマークの最西ユトランド半島の街に向かった。 カイとリスの古くからの友人のお葬式に参列するためだ。 私は、以前、急に体調を悪化させ他界した祖母のお葬式に、迷った末駆けつけず、後から後悔した思い出がある。だからこそ、迷っているなら行こうとカイ とリスを促し、前日にこの小旅行を決めた。

人生イベントに関わる社会行為には、たくさんのコードが埋め込まれている。 お葬式はその最たるものだろう。 誰も説明しないけれど、ルールを皆が知っていて、決められた筋書き通りに淡々と物語が進 んでいく。 異なる社会文化から来たものにとっては、不可思議なことだらけだ。

半旗を掲げた教会に入ると、玄関口に親族のいわゆる喪主が立っていた。 ここでは、他界された方の息子と2人の娘が並び、お悔やみを述べる客たちと挨拶を交わしていた。 参列者は、教会に入り、他の近親者(妻、夫や子供達)に挨拶して、着席して式が始まるのを待つのだ。 話すときにはヒソヒソ話、 子供も雰囲気を感じてか、ヒソヒソと話している。 席次に関しては、大抵、左前方には、近親者が並ぶことになっているようだが、あとは比較的自由。 かつては、身分や社会慣習で並び方が決まってたんだろうけれども、今のこの国にはその片鱗もみられない。 雰囲気を最も変えるのは、通路中央に並べら れている献花だろう。 その脇を通って、参列者は席に着く。

式自体は一般的なデンマークのキリスト教の歌ミサと大して変わらなかった。 ところどころで歌を歌い、合間にミサや説教が入る、あの一般的な形だ。 お葬式ということで荘厳なイメージは付加されていたとはいえ、デンマークプロテスタントのミサ自体が、カトリックのミサとは大きく異なっていて、まさに民のために整えられた社会行為なんだろうなという印象は薄れない。 おそ らく権威を象徴し荘厳に全てのプロセスを進めるカトリックと、清貧を重んじより民に近い方法を考えながら教えの伝播を志向していたシンプルかつプラクティカルなプロテスタント式の違いなんだろう。 いずれにせよカトリックもプロテスタントもおおよそのコードが分かっていれば、 恥ずかしくない程度に流れに乗って式に参列できる。 つまり、壁には「本日の歌」が番号で明示されているし、ご起立くださいという合図で皆が立ち上がり、お座りくださいで座席に再び着席する。 式で唱えられる祈りも「主の祈り」などの典型的なものだ。

今回も非常に典型的な式次第だった。 開始の挨拶、牧師の悼辞、説教、閉式の辞。 間に 4 曲ほどの関連する歌が歌われた。 最後は、身内が棺を両脇から持ち上げ、中央通路を通って外に出る。 この時は、子供も孫も...皆でお見送りだ。 献花の上を柩が通るその様子がもっともプロテスタン トの式で荘厳な瞬間に思える。 献花の上を通るのは、その日の主人公だけ。 その後ろから、献花の両脇を参列者が続き、教会から出ることになる。 その後、教会のすぐ脇の敷地内に横付けされた霊柩車(特別仕様の外からも棺が見えるベンツのワゴン車)に棺が入れられ、火葬場に向かう車を皆で見送った。

その後、通常故人を偲ぶお茶会が、教会に併設されている集会所で実施されるが、その名の通り、お茶とコーヒーとケーキや手作りのクッキーや北欧のクラッカー・クネッケとチーズが供される。 故人を偲ぶスピーチが繰り広げられる以外は、一見、普通のお茶会だ。 いや、年齢層も様々なの で、やはり少々違和感があるお茶会なんだろう。デンマークのイベントごとではもちろんスピーチは欠かせないが、こういった時間は、故人との楽しい思い出の共有の時間だ。 こうやって、皆で集まって1人の物語を編み込んでいくプロセスは、デンマークらしいと思う。

初めてデンマークでお葬式に参列し、驚いたことはいくつもある。 例えば、故人への最後の御目通りはないということ(教会内の祭壇前に棺が置かれ参列客は最後のお別れをする機会はない。 運び去られるときに棺は見ることはできてもお顔を拝見する機会はない)、火葬場まで一緒に行かないという点だ。 かつては違って、土葬の頃は実際に埋めるところまで同席したんだとルーンは言う。式の間、棺の蓋が空いている場合もあるんだ、といろいろな形が面々と 受け継がれてきたことがわかる。 今でもそのように棺をあけてい
たり、土葬をするところまで付き添っていく地域もあるのかもしれない。

静かに荘厳に美しく...の葬式もきれいだが、時折故人を思い起こしながらもどんちゃん騒ぎの飲み会や、ちょっとした愚痴やバカな思い出話しが出てきて、打ち上げ花火のように人生を締めてもいいな、と思うのである。デンマークのお別れの仕方は、私にとっては、社会的にも区切りをつけるためにも
重要だと思っていたことがことごとく実施されない、驚愕のお葬式だった。

お茶会に提供されていた手作りのクネッケは、今まで体験したことのないほどの優しい味がした。

簡単クネッケ / Knækbrød

材料
オートミール 1dl.
ひまわりの種 1dl.
かぼちゃの種 1dl.
亜麻種 1dl.
ゴマ 1dl.
塩 小さじ2
BP 小さじ1
水 2dl.
小麦粉 3dl.
油 1dl.

■作り方
1.  オーブンを200°Cにセットしておく。
2.  生地を鍋用スプーンですべて混ぜる。生地は少し粘り気
  があるぐらいで。
3.  生地を二つに分ける。それぞれを二枚のオーブンシート
  の間に挟み広げる。
4.  上のシートを取り除き、適当な大きさに切り込みを入れる。
5.  3 を 200°Cのオーブンで 15-17 分焼く。

2月の甘味

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フェステラウンと呼ばれる日は、今はデンマークでは仮装の日。 小さな女の子はプリンセスに、男の子はパイレーツに。 大人も一緒に楽しむところは、ハロウィーンによく似ている。 でも、名前からもわかるように、昔は宗教的な断食の日だった。

栄養を取っておく、という事なのか、断食節(Festelavn)の始まりに、スカンジナビアでは、 非常に甘いお菓子を食べる。 ベーカリーやコンディトリでは、どこでもこの時期には置いてある このフェステラウンのパン(Festelavnbolle)は、とにかく甘い。 同様な甘いお菓子が、隣国スウェーデンでもセムラ(Semla)という名前で売られているのだけれど、ロールパン系生地のスウェーデン版と違って、デンマークのフェステラウンのパンは、バターたっぷりデニッシュパンにカスタードクリーム、生クリーム、ジャムな
んかが入っていたりする。 もちろんトップには、粉砂糖を水で溶いたアイシングがタップリ。 伝統的なものは、スウェーデンのセムラと似た感じのようだっ たと物知りカイは言うけれど、現在売られているのは、正に、「どこまでも甘く」を追求した究極のパンだ。

ちなみに、伝統のフェステラウンパンのレシピは、次のようなもの。

伝統のフェステラウンのパン / fastelavnsboller

材料
牛乳 1 1/4 dl.
生イースト 25g
バター 100g
砂糖 大さじ4
たまご 1個
塩 小さじ 1/2
カルダモン 小さじ 1
強力粉  250g

※お好みでレーズンなどを入れてもよい

■作り方
1. 牛乳を温め(肌温)、イーストを加える。
2. 更に溶かしバターを加える。
3. たまごと砂糖を加える。
4. 残りの材料を加え、こねる。
5. 小さく形を整え、20 分間発酵させる。
6. たまごで照りを付けるなどお好みでして、200 度のオーブンで 15 分程焼きましょう。
7. 砂糖やお好きなもので飾り付けしてください。

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ヴェヌー島での豊かな生活の一端を、デンマークの文化とともに皆さんと共有したいと思います。

ヴェヌー島の人たちは、先端技術を上手に利用しながら自然に触れる生活をしています。 季節の変化に繊細に対応し、春の訪れや秋の実りに感謝しなが…

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