december / 12月
クリスマス準備
デンマークのクリスマスは、12月1日に始まり、ほぼ30日まで続く。ヴェヌーの12月も、クリスマス準備で始まった。
クリスマスの時期になると、街中や町外れではクリスマスツリー販売小屋が立ち並ぶ。それは、日本の正月飾りを簡易小屋で売る年の暮れの様子と酷似していて、一種独特の雰囲気をかもし出す。ヴェヌーのクリスマス・ツリー準備は、更にユニークだ。
「クリスマスツリー取りに行くよ」のルーンの掛け声で、ドライブした先は林。林で適当な大きさのツリーを探す。家の中で家族が集まる一番いい場所に木が立てられるわけで、部屋の高さに合った小ぶりの木が必要になるわけだ。めぼしいものを見つけたら、斧でザックリと傷をつけ木を倒す。いつもの事ながら、野性味あふれるヴェヌーでは、クリスマスツリーもちょっとした狩のイベントになる。
安いものから高価なものまで、生のもみの木を立てる「足」が売っていて、もちろん3-4本の木材で代用も可能。クリスマスツリー用のカーペットを敷き、部屋の中心にもみの木を据え付ける。そのクリスマスツリーに手作りの飾りつけをしてフィニッシュ。ヴェヌーのカイとリスの家では、昔から手作りのクリスマス・オーナメント(クリスマスの飾りつけ、Jul Pynt)を作っているのだが、毎年新しいアイディアが沸くらしく、少しずつ上品な飾りが増えていく。
出来上がったのは、デンマークと日本の旗が飾られた素敵なクリスマスツリー。もちろん日本の旗は、手作り。ツリーに旗を飾るってあまり考えつかないけれど、デンマークの人は皆自分の国の旗が大好き。簡単なデザインの旗でよかった。
クリスチャンのペッパーナッツ / Christinas Pebernødder
材料
マーガリン 200g
小麦粉 500g
砂糖 225g
卵 2個
生クリーム 1dl
コショウ 小さじ1⁄2
しょうがの粉 小さじ1
シナモン粉 小さじ1
クローブ 小さじ1
柑橘類の皮 60g
細かく刻んだアーモンド 50g
■作り方
1. オーブンを200°にセットしておく。
2. マーガリンを小さく切り小麦粉に混ぜ込む。
3. 砂糖を加え、といた卵、生クリーム、スパイス、小さく切った柑橘類の皮を混ぜる。
4. すべてを一緒に練る。
5. 生地を棒状に丸め、まな板状のものに乗せ、少なくとも1時間ほど冷凍庫に入れる。
6. 生地が硬くなったら、スライスし、200°Cのオーブンで5分焼く。
クリスマスに欠かせないもの
この時期になると外は極端に暗く寒くなるが、反比例して人の顔は明るくなっていくようだ。クリスマスの雰囲気が町中に広がり、やさしさの空気が充満していく。この時期に、街に出ると街角で、エーブルスキーベ、グリュックがセットで幾ら、という看板がカフェの前に出ていたりする。エーブルスキーベもグリュックもクリスマスの時期の食べ物で、友人宅に遊びに行くとふるまわれたり、職場でふるまわれたりすることがよくある。エーブルスキーベは、日本のたこ焼きのような丸い形のふわふわカステラで、手でつまんでジャムと粉砂糖をつけ食べる。グリュックは、クリスマスのシナモンやクローブなどのスパイスが効いたナッツ入りのホットワインだ。
クリスマスの買い出しに街に出て見つけたエーブルスキーベ用の鉄板プレート。それを見たルーンがこれは買いだ!と言って、周囲に有無を言わさず鉄板を購入。ヴェヌーに帰宅して、さっそくグリュックとエーブルスキーベ作りが始まる。ちょうど、ルーンの幼馴染のラースとその彼女が来ることになっていて、ルーンの料理準備にも熱が入っているのが横から見てもよくわかる。
クリスマスの時期には、美味しい料理とお菓子とそして笑顔が欠かせない。
イーストを使ったエーブルスキーべ / Gær Æbleskiver
材料(6 人分)
小麦粉 250g
イースト 15g
バター 90g
牛乳 2.5dl
卵 3-4個
砂糖 大さじ 2
レモンの皮を擦ったもの 1/2個分
カルダモン 小さじ 1
■作り方
1. イーストをコップの中で溶かし、小さじ1杯の砂糖と、ひと肌に温めた牛乳を大さじ1杯加える。(これはイーストを活性化させるため)。
2. 牛乳とバターを温めながら混ぜる。卵と砂糖を混ぜ、小麦粉を混ぜる。この固い生地に牛乳とバターをスムースになるまで少量ずつ混ぜる。
赤いベリーのジャムと粉砂糖をまぶしたら準備完了。
いただきます!
23 日クリスマス前夜祭
クリスマスまであと1日。クリスマスのアドベントカレンダーの残りもあと一日分となった。クリスマスの前日。休日ではないが、休暇を取る(自宅で仕事をする)人も多い。デパート・商店などにとっては稼ぎ時であり、夕方までは確実に空いている。朝から、なんだか皆がそわそわしているのも、クリスマスだから。思いがけなく空も晴れわたり、絶好のクリスマス日和になった。クリスマスの準備はほぼ整っているし、なんとなく手持ち無沙汰なのも、ちょうど一日前のような今日のような日。
なんとなく手持ち無沙汰だなぁと思っていたら、リスが前日に仕込んでおいたジンジャークッキーの素を持って来た。屋根と壁と入り口がもう出来上がっていて、あとは組み立てて飾り付けをするだけだ。すっかり準備が整っていてお手軽なクッキーハウスこの上ないけれども、今日みたいな日にはちょうどいい。
夕食はリセ・グロット(Risengrød)と呼ばれるミルク粥にバターを落とし、砂糖とシナモンを混ぜたものをかけて食べるのが伝統的料理。一緒にクリスマスビール(Juleøl)と呼ばれるアルコールフリーのビールもしくはソルベアジュース(Solvær saftvan)を飲む。クリスマスビールは、ホップ使用の本物のビールであるけれどラクリスが入っているのが一般で、ラクリスが苦手な日本人が多いから日本人には飲みにくいビールかもしれない。さらに、ミルク粥も、コメをミルクで煮るなんて...と正直好みが分かれるところだろう。でも、デンマーク人にとってこれがないとクリスマスは始まらない。
ミルク粥 / Risengrød
材料
ライス(日本のお米と同じ短米)
ミルク 3 L
作り方
1. 米を大きな鍋に入れて、弱火で少しずつミルクを入れながらゆっくり煮る。時折混ぜながら、ミルクを継ぎ足しながら...。シナモンシュガーをかけて召し上がれ。
24日クリスマスイブ
ゆっくり起きてのんびりとした食事。ヴェヌーでそんな朝食は特に珍しくはないけれども、それでもいつもよりもとっておきの時間な感じがするのは、クリスマスだからだろうか。のんびりとコーヒを飲みながら、少しずつ目を覚まして、いよいよクリスマスの準備の始まりだ。朝から、「料理を始めないと!」と意気込んでいるのは、いつものリスと息子ルーンのペア。大型のダック2羽と格闘して、詰め物を準備し、デザートのリス・ア・ラ・マンド(Ris A La Mande)を準備する。
デザートのリス・ア・ラ・マンドは、つまりは、ミルクで煮たお米を冷やし、生クリームを加えて、細かく砕いたナッツを混ぜ込み、チェリーソースをかけて食べるデンマークのスペシャルクリスマスデザートメニューだ。フレンチデザートにも聞こえるこのリス・ア・ラ・マンドは、何を隠そうデンマーク独自のクリスマスメニュー。かつて米やミルクやナッツが高級品だった時に、スペシャルな一日であるクリスマスだけの限定で食べることのできたスペシャルメニューだ。
昨日から準備に余念なく、もう、赤キャベツの煮込んだのと甘い小粒ポテトは茹で上がり、冷暗室に置かれて今日のイベントのために控えている。
クリスマススペシャル / Rødkål, små kartofler og æbler、hvide kartofler, steger and og laver sovs,
ris à l´mande og Kirsebærsovs
赤キャベツの煮込み(Rødkål)の材料
小ぶりの赤キャベツ 1個l
食事用りんご 1個
赤カラントのジュース 1と1⁄2 - 2 dl
お酢 11⁄2 - 2 dl
味付け用砂糖・塩
■作り方
1. キャベツを細かく刻む。
2. りんごの皮をむき薄い三日月型に切る。
3. キャベツとりんごを鍋に入れ、残りの材料を入れる
4. 蓋をし、キャベツを弱火で約1時間煮る。
5. 最後の10分間蓋を取って煮る。
6. 塩と砂糖で味付けをする。
リス・ア・ラ・マンド (Ris A La Mande)の材料
昨日の残りのミルク粥
アーモンド 50g
生クリーム 2.5 dl
■作り方
1. 生クリームを泡立てる。
2. 昨日の残りのミルク粥に混ぜる。
3. アーモンドを混ぜる。
湖でスキーとスケートを
クリスマスの長い夜から一夜明けて、子供達はおもちゃで遊びたくて早起きし、大人たちはのんびりと朝を過ごす。なぜかヴェヌーでは、クリスマス当日はとても良い天気になる事が多くて、今回のクリスマスも、眩しい日差しで目覚めた。
とても寒くなったホワイト・クリスマスには、スキーやスケートが定番だ。たくさん食べて飲んだ翌日だから、なんとなく体を動かしたくなる。湖が凍ってスキーやスケートができるって、物語を読んで知ってはいたけれども、実際に自分がその場にいることは小さい頃は想像していなかった。
体が冷えたときには、スパイスたっぷりのクリスマスの紅茶、ユール・ティ。シナモンやクローブなどのクリスマススパイスがたっぷり効いたクリスマスの雰囲気満載の紅茶。子供達は、代わりにホットチョコレートをもらって大満足だ。
ホットチョコレート、ユール・ティ / Cholokadedrik og jul
ホットチョコレートの材料
砂糖 大さじ1,5
カカオパウダー 大さじ1,5
牛乳 4dl
フォームミルク
■作り方
1. 砂糖とココアを牛乳とよく混ぜる。
2. 牛乳を少しだけ鍋に入れ、温めてから全て鍋に入れる。
3. コップに注ぎ、好みでフォームミルクをトップにのせる。
ユール・ティの材料
好きな紅茶の茶葉 100g
オーガニックのオレンジの皮、棒状に切ったもの
ネリカ 大さじ1杯弱
カルダモン 15個
星型のアニス 1-2個小さく砕いたもの
シナモン 2本
■作り方
1. ネリカ、カルダモン、星型アニス、シナモンを袋に入れ、棒で軽く叩く。
2. オレンジの皮と茶葉、スパイスを一つにまとめて紅茶用の袋に入れる。
3. 1.5l(2-3人用)の沸騰したお湯にまとめて入れて2-3分煮出す。
出来上がり
クリスマスが終わり
クリスマス修了後、デンマークでは、セールが一斉に始まる。このセール、デンマークでは、Udsalgと呼ばれる。日本とおなじように、赤札が下がって、福袋もあります。クリスマスプレゼントは、交換可能な札がつけられている事が多く、クリスマス後にはもらったプレゼントを持って自分の好きなものに替えに行く人も多数。
日常に戻って、食事も質素なデンマークの食事にもどる。デンマークの食事の基本になっているのは、手作りのパンで、ヴェヌーでもそれは同じ。手作りのパンの焼きたてをあのほおばる感覚は、日本では決して味わって来なかった日常の一コマで、こんな小さなところに大きな違いを感じる。静かな日常が戻り、再びいつものパンを作る。
リスが日常的に作るパンは、何種類かあるのだけれども、その一つは、ギリシャ風のパン。小麦粉、全粒粉、ヨーグルト、水、油、イーストが材料。イースト50% ( 1 パック)を細かくして、熱くもなく冷たくもないお湯(つまり体温と同じぐらい)を1dlボールに入れてよく混ぜる。
こんな具合かな?と聞く私に、「冷たいかな。もう少し温かくしましょう」というデンマーク人のリス。ちょっと温かいかな、と思う具合に水を注ぎ、今度はどう?と聞いてみる。「うーん。冷たいな?!」と同じことを言う。いえいえ、ちょっと温かいのだけれど、と思いつつ、もっと温かくしてみる。反応は「もう少し. . . 」じゃあ、体温のお湯作ってみてよ、という私に示してくれたリスの言う「温かくも冷たくもないお湯」は、私にとっては確実に温かい。
パンを作るときに、日本でも体温ぐらいの温かさといい、デンマークでも同じことをいう。皆の合意として、体温ぐらいの温度がイーストを活性化させるのにちょうどいいと考えられているのだろうけれども、デンマーク人の体温は、日本人より一度ほど高い。デンマーク人は、パンを作る時に37度ぐらいのお湯を使うようなのだが、日本人は「体温ぐらい」と覚えていたら35-36度のお湯を使うだろう。これって日本人がパンを作る時の根本的な誤りになるんじゃないだろうか。
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A Year in Venø
ヴェヌー島の人たちは、先端技術を上手に利用しながら自然に触れる生活をしています。 季節の変化に繊細に対応し、春の訪れや秋の実りに感謝しなが…
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