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【第4話-前編】ぼくらの成長が、より良い社会につながるように。 | Cocts-Akihabara

西は文化と文化がメガミックスされた街・秋葉原、東はあたたかな問屋街・浅草橋の中間地点に、社会貢献をテーマとする複合施設、Cocts(コクトス)ができた。コロナ禍による人の移動制限、ホテル事業の意味が問われる中、新しい形の施設を運営することとなったPLAY&Co 代表・中島庸彰が新たに見つけた文脈、それをクリエイティブディレクター・塚田圭亮が具現化した内装からプロダクトまで、ひとつひとつを大いに語っていただく。

執筆/編集:佐藤 開斗・林 海人
撮影:林 海人・延吉 直人

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中島 庸彰(写真:右):1986年群馬県生まれ。株式会社 PLAY & co 代表取締役 他3社経営。
「出会いを通じて世界を変える」をテーマに、飲食店やホテル・ホステルの運営をしている。

塚田圭亮(写真:左):1986年大阪府生まれ。HAPPIDEZA設立、代表兼クリエイティブディレクター。
「感動を届ける」をテーマにブランディングから空間デザインまで幅広く手がける。

––––– お二人のつながりができたきっかけから聞いていきたいと思います。

ツカダ:以前開業講座に招聘された際に、中島さんも同じく講師をしていて、そこで初めてお会いしましたね。

ナカジマ:あ、初めはそんなでしたね!
僕は恵比寿のバーが印象に残っていますね。塚田さんにちゃんとお願いしたのはそこからだったので。

ツカダ:あ、ありましたね。その後に上野の『茶庵上野』を手掛けさせていただいて、今回のCocts Akihabaraにつながると。

https://www.chaan-hotel.com/jp/

アセット 4@420x茶庵上野の居室

ナカジマ:時間にしてみると8年、9年!かなり長い仲ですね。
うちのプロジェクトのデザイン関係はいつも塚田さんにご相談させていただいてて、パースやコンセプトだったりかっこいいものがいつも仕上がってくるんです。

塚田さんみたいにクリエイティブもコンセプト作りもできて、
かつ手を動かせる人って全然いないので、いろいろなホテルをやらせていただく中でも何度かお願いしているという次第です。以前作っていただいた「茶庵上野」も素晴らしくて…。実は塚田さんと私は学年が一個違いの同い年なのですが、正直リスペクトしかないです(笑)。


––––– 早速Coctsについて聞いていきたいのですが、これまでに作った施設や他のホテルとの違いはどこにありますか?

ツカダ:まず初めに、僕はSDGsというキーワードを中島さんよりいただきました。

ナカジマ:そうでしたね。このSDGsというキーワードについてなんですが、まさにこれはコロナ禍に入ってから社内で意識され始めたキーワードです。というのも、これまで我々のホテル事業は宿泊されるお客様のなかでも7~8割を占める海外からのお客様をメインターゲットとしていました。

スタッフも、アルバイトを含めて全員英語が話せたり。とにかく皆、コミュニケーションが大好きなので、世界中から集う旅人たちがつながる空間を作っていこう!というコンセプトでホステルやホテルを経営していました。

しかしコロナ禍に入ってから海外からのお客様が来なくなり、さらに国内の移動も制限され、ホテルの需要がなくなり、もっとも大事にしていた、人と人とのコミュニケーション自体も極力避けなければいけなくなりました。

画像3Cocts - 外観

会社の生き残りのために、思い出の詰まったホテルを解約し、営業してるほうが赤字になるから、と休業させ、賑わってたラウンジに、まったく人がこなくなったホテルを見たときに、

「僕らの会社って何のために宿泊事業をやっているんだっけ?」

と、今一度会社の存在意義を考える機会になりました。

ホテルは作る時にも、大量の資材を使ってつくられ、営業すれば水道ガス電気などのエネルギーも大量に使うので、環境への負荷も高い。その上、宿泊需要がなくなり、閉鎖ともなれば、また大量の廃材が出てしまう事業です。

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ナカジマ:考えていくうちに、
「僕らが拡大していくにつれて、周りの地域、ゲスト、そこで働いている人たちを取り巻く社会がより良いものになっていく」
というものじゃないと存在する意味がないなと考えて、
その時から次に作るホテルは、

「ぼくらの成長が、より良い社会につながるように」

と思い、塚田さんに相談させてもらいました。

また、多用途であることも重要だと思いました。従来のホテルは寝室を提供するもので、ベッド・枕があってここに一泊いくらで泊まる、っていうようなものですが、ホテルを含めたこれからの不動産は、可変性をもち複数の用途に耐えられる作りであるほうが、どんな時代でも需要を取っていけるんじゃないかなと思いました。

画像4スーペリアファミリールーム

ナカジマ:お客さんがその”箱”を寝室として使うのか、
ワークスペースとしてつかうのか、もしくはパーティスペースなど。
どのように使うのかはお客さん自身が選んでいけるような場を作りたいなと思って。

ネーミングに関しても、最初はホテルらしいネーミングだったんですけど、ホテルと、用途を限定するのではなく、

Complex=複合

という文脈を与えたい!ということを塚田さんに伝えさせていただきました。

ツカダ:その思いをお客様にきちんと伝えていくためには、ブランディングからしたほうがいいということで、一緒にブランドコンセプトから作っていきましょうという形となりました。

––––– ブランドコンセプトは具体的にはどのように作られたのでしょうか。

ツカダ:「ブランド」という言葉は家畜に自らの所有物だという証で焼き印を押したのが起源で、現代においては他者と差別化してお客様に伝えることそのものが「ブランディング」という言葉の意味になっています。

一つの大切な考え方としてブランドコンセプトという、短くて記憶に残りやすく伝言できるキーワードを作るんですが、
支配人・従業員など、当事者意識を持っていて欲しい方をお呼びして、共にワークショップを通してブランドコンセプトを作っていくことをしました。

画像5ワークショップ

ツカダ:デザイナーが勝手に作ってサヨナラ、ではなくスタッフの方々が主体となり作っていくことで、自走してアップデートが続けられるようになる。そのための下地作りとしてワークショップに参加していただきました。

まず「うちにあって他社にないもの」をブレインストーミングしてもらいました。
・アルバイトを含めて英語が話せる
・複数ホステルを経営しているため運営能力が高い
などをメインに色々出ましたね。

ナカジマ:色々出ましたよね。

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ツカダ:自分たちの強みを共有して共通認識化する、その後にブランドコンセプトを自由に意見しあうことでブレインストーミングをしていただきました。

そこから1点や2点、関係性があったワードを選び出し、そのワードに沿ったブランディングを磨いていけば、他者が追随することが難しくなるというロジックで進めています。そしてこれが最終的なコンセプトになります。

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次回【第4話-後編】では、これまでお話いただいたブランドコンセプトをもとに、施設の顔ともなるロゴをはじめ、空間やサービスなど各種デザインのプロセスやディテールについて紐解いていく。

後編に続く     後編は2021年10月15日公開予定

聞き手:佐藤 開斗  1999年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報デザインコース卒業。
Cocts Akihabara(コクトスアキハバラ)2021年10月1日(金)よりオープン
[TEL]03-5809-2147
[住所]〒111-0053 東京都台東区浅草橋5-2-7
[営業時間]チェックイン 15:00-23:00 チェックアウト 00:00-10:00
[アクセス]
 JR秋葉原駅昭和通り口より徒歩10分
 JR浅草橋駅西口より徒歩6分
[公式サイト]https://cocts.jp
[公式インスタグラム]https://www.instagram.com/cocts.akihabara/

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