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【第4話-後編】ぼくらの成長が、より良い社会につながるように。 | Cocts-Akihabara

西は文化と文化がメガミックスされた街・秋葉原、東はあたたかな問屋街・浅草橋の中間地点に、社会貢献をテーマとする複合施設、Coctsができた。
対談後編では、コンセプトメイキングから空間、ショップカードまで幅広い各種ビジュアライズへの落とし込みについて、さらに紐解いていく。

前編はこちら

執筆/編集:佐藤 開斗・林 海人
撮影:林 海人・延吉 直人

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––––– エントランスを入ってすぐの壁面にコンセプトが目に入りますね。

ツカダ:初めは「社会貢献を日常に」というキーワードが出て、仮でそれを作ってお互い持ち帰ってもらい、1〜2週間後に出たのが「社会貢献って四字熟語は固いよね」と意見が出て、そこで最終的に出たのが “誰かのために、を日常に” っていうキーワードだったんですね。

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これが最終的に皆さんが「グッとくる!」ということで、
このブランドコンセプトをもとに

・経営戦略
・サービス
・各種ビジュアライズ展開

について考え始めました。

ツカダ:各ビジュアライズはネーミング、ロゴ、空間、サイン、ショップカードとグラフィックの展開をするのですが、

まずネーミングは
Complex (that) contribute to someone 
“誰かのためにを日常に”の英文を縮めて
Cocts
と決めました。

画像3シンボルマークとロゴタイプ

シンボルマークは輪違い紋という、手を取り合うような意味の文様をベースに、色々なパートナーシップを足していくことで桜の花びらのように仕上げました。

画像4シンボルマークのデザインプロセス

ツカダ:ロゴタイプとしては、いろんなものが繋がっていくというのを筆書体で表現。そしてまさにここがたまり場であるように、液だまりをつけた筆書体にしたりと、ブランドコンセプトを反映したものになっています。

画像5ロゴタイプのデザインプロセス

ツカダ:フロントは地産地消と花粉症対策への貢献を主題に、地元多摩の杉材を豊富に使いながら、同時に、花粉の少ない杉に植え替える活動に協賛してもらっています。また、水回りは既存レイアウトを活用することで、資源やエネルギーを無駄に使わないとか、そういうところにも気を使って空間を作って行きました。

画像6フロント

ツカダ:ラウンジスペースは、床のレベルの違いによって使う材が変わってて、写真右の方は仕事がしやすい手触りの材を使って、左奥の方はリラックスしたい人が使うような材を使う工夫を凝らしています。

画像7ラウンジスペース

ツカダ:来る人の状況によって使い方は変わるんですけど、
そこに来る人は皆社会貢献に興味を持っているという共通認識があるので、
テーブルが連続性を持たせてつながりを与え、ある時は各自作業をしたり何か食べたりするけど、ふとしたきっかけでここで他の人と喋れたりするような空間を目指して作りました。

画像8半分になったサインデザイン

ツカダ:サインデザインのお話としては、実は部屋番号の表記ってかなり重複した情報が含まれているんですよね。例えば、4階だったら401、402と番号を振っていきますが、このうち、ヨンマルの部分が重複しています。

ツカダ:なので、部屋番号の前半部分はセクションごとのドアに、そして後半部分を居室に割り振ることで重複を避け、資源の使用量を抑えつつ、識別機能を持たせる、というロジックで構築しました。

––––– どのようなサービスを通じてコンセプトを達成するのでしょうか。

ナカジマ:今、リフィルステーションが受付横に付いているんですが、まさにコンセプトを表す一つだと思っています。

画像9リフィルステーション

ナカジマ:ものとしてはシャンプーやコンディショナーが置いてあるんですけど、今社会問題として洗剤の過剰使用や、アメニティの廃棄問題、マイクロプラスチックや限りある水資源の保全といった問題があります。

そこで、宿泊されるお客様が、自分が必要な分だけを取っていくのはもちろん、近隣の人がボトルを持ってくれば詰め替えられる。そんな体験を通じて、日常の中に「あ、こういう選択肢があるんだ」みたいな気付きの機会をつくる。それも含めて「泊まるだけで社会貢献ができる施設」になっていくといいなと思っています。

シャンプー類を選定するにあたって、取引できる会社がなかなか見つからなかったんですけどようやく見つけたのが、
松山油脂さんの「LEAF&BOTANICS」。
ここは、詰め替え用の容器さえなくそうとするために、リフィルステーションを商品として展開している会社で、コクトスが2番目の設置店舗にあたるそうです。

リフィルステーションの設置店舗が増えていくと、シャンプー類を取り巻く問題への理解が増えていくのではということで、これもまた社会貢献のひとつかと思います。

画像10ショップカード

ツカダ:ショップカードは地域の布問屋さんとタッグを組んで、廃棄されるものあるいは倉庫で眠っていた端切れを活用しています。また、紙面の情報は2つに分け、お客様にスタンプを捺してもらうことではじめてショップカードが完成するようにしました。

ツカダ:ショップカードは小さいツールではありますが、それ一つをとっても、持続可能性の高い取り組みに参加できる、そんな体験を通じてお客様とスタッフのコミュニケーションのハードルを下げ、お客様が能動的に情報を得やすくなるよう考えています。

––––– 建物の外観もかなりいい雰囲気だな、と思ったのですか、これは当時のままですか?

ツカダ:元々はオフィスビルで、外装はその当時のままです。

画像11エントランス

エントランスはコールテン鋼という、鋼材の最大の弱点であるさびを、さびによって防ぐ素材を採用しています。これにより環境負荷を低減しながら、元の建物の趣にマッチした、質感のあるエントランスに仕立てています。

––––– 浅草橋と秋葉原の中間地点に位置していますが、どんな面白みがありそうでしょうか。

ツカダ:中島さんの運営するホテルがこのあたりに転々としていて、地域コミュニティを作りやすい素地があるんじゃないかとおもいます。

ナカジマ:ドミナント展開しているので、他施設と連携して運営しやすいというのは、弊社としてはあります。

また、このプロジェクトはこの建物ありきでスタートしたので、そこをどう活かすかという話ではあったのですが、秋葉原はよく知られているように、日本のカルチャーの発信地ですし、また古くは電気街として発展してきたことから、先進的な空気が流れています。一方浅草橋はどちらかといえば職人さんやものづくりみたいな強みのある地域で、比較的地域性やローカル感みたいなものを味わえるエリアになると思います。ですので、西へ行けば便利さも享受できるし、東に行けばローカルの静けさ・ディープさを体験できる、さまざまな魅力も発信しやすいエリアなのかなと思っています。

––––– 地域とはどういった繋がりを持っていきたいと考えていますか。

ナカジマ:実は早速一階にポストがつきまして。今後シェアオフィス機能も持たせられたらな、と。

ツカダ:いつの間に。笑

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ナカジマ:先ほど(前回参照)も言いましたが、これだけ時代の流れが早いと、10年前に作った建物が今あまり機能していない、みたいなことが起こっていいます。ショッピングモールとか駅前の商業施設もたくさんあるけど要る?など。もしコロナが収束したとして、そういった施設に人が戻っていくかというと、そんなことはなさそうだし、本当に必要な施設って、作られる数に対してそんなにたくさんはいらないのではないかと思います。

ナカジマ:そう言った流れにあって、これからの不動産は、時代にあった可変性をしっかり意図していないといけないと思います。

ナカジマ:オペレーション自体も、機能を兼用するマルチオペレーションにしていくことが必要なんじゃないかと思っていて、フロントスタッフがクラウドキッチンの手伝いをしたり、シェアオフィスのチェックイン受付をしたり清掃スタッフもそれに含めたり。

画像15コンプレックスルーム

ナカジマ:今後サウナみたいなのもしたいと思っているんですが、一つの箱の中でいろんな機能を有してオペレーションもマルチにできると、の価値がさらに長続きするんじゃないかと思います。

画像13コンプレックスルーム

ナカジマ:そうすることで、お客さまもいろんな用途でここを利用することができるようになります。泊まりにでなくても、ご飯だけ食べに行こうとか、ママ会やろうとかお客さんが選んでくれるような運営等もできるといいと思います。


––––– 今後についてお聞かせください。

ナカジマ:これからトライしていきたいことはたくさんあるのですが、今実装しようとしているものとしては、地域の子供たちに向けた、こども食堂みたいな機能も入れようか、ということを考えたりしています。

ここをどうしたら地域の人たちがここにゆるっと来れるのか?どうなったらここが愛されるのか?みたいなことは、ここが地域の課題を解決できる箱にならないとどうにもならないと思うので、案として出ているのが「子ども食堂」みたいな機能の提供かなと。

画像14クラウドキッチン

ナカジマ:一階にはすでにクラウドキッチンとして2店舗、飲食店があるので地域の子どもに対しては無償でなにかを提供したりというところで、まずお子さんから入ってもらえることが地域にとっても入っていきやすいのではないか、ということを考えています。

ナカジマ:社会課題として子供の貧困率、特にシングルマザーの家庭のうち50パーセントは貧困に陥っているという事実があるので、僕らの施設をもってそこに手が届くようにできたらと思っています。

ツカダ:地域にどうつながっていくか、の話なんですが、
コミュニティ論の考えとしては、


①父と子等の血縁の繋がりであるコミュニティ「血縁コミュニティ」
②テーマでつながる「テーマコミュニティ」
③家がお隣さん同士等の地域でつながる「地域コミュニティ」

の三つに分類できるんですけれど、近年の都心部では二軒隣の家とは話すことがなくなったりと、もう地域コミュニティはほぼなくなってきています。

ツカダ:今回のCoctsは「社会貢献」というテーマコミュニティで繋がることを主軸としていますが、+αとして、地域コミュニティでの繋がりにも目を向けていく。これはマーケティング的視点では、経営資源が限られていますから、テーマコミュニティ×地域コミュニティで、セグメントを絞って取り組むということ。つまり、社会貢献というテーマで、まずは地元の方からいろいろなものを還元していこうというのは、いいなと。結果、早く成果がでるんじゃないかなと思いました。

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––––– これから自走していくCoctsの進化を見守っていきたいと思います。
中島さん、塚田さん、ありがとうございました。

聞き手:佐藤 開斗  1999年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報デザインコース卒業。
Cocts Akihabara(コクトスアキハバラ)
2021年10月1日(金)よりオープン
[TEL]03-5809-2147
[住所]〒111-0053 東京都台東区浅草橋5-2-7
[営業時間]チェックイン 15:00-23:00 チェックアウト 00:00-10:00
[アクセス]
 JR秋葉原駅昭和通り口より徒歩10分
 JR浅草橋駅西口より徒歩6分
[公式サイト]https://cocts.jp/
[公式インスタグラム]https://www.instagram.com/cocts.akihabara/

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