店長の伝説 ここからは店長の武勇伝だ。 三時間半ぶっ続けで聞かされた話をまとめてみようと思う。 途中から意識朦朧で聞いていたので、若干、話の筋がおか…
第四話 メーテル、サイボーグ、ジョーズ デグは一日でカリフォルニアを辞めた。 一日中埃臭い麻袋を被り続けて、咳が止まらなくなったのだ。 「やってられるか。リュ…
第3話 ビデオショップ・カリフォルニア 一週間後、デグから電話があった。 『リュウ。バイトみつけたぞ』 「おう。よかったな」 『お前の仕事場やで』 「はあ?」おれ…
第2話 ドラゴンと腕相撲 おれの名前は寿竜。メデタイのかイカツイのかよくわからない名前だ。名付け親は祖母。小学生のとき、祖母に名付けの理由を訊いたことがある…
第1話 ミレニアム、テレクラ、金的 二〇〇〇年の一月一日、午後零時。 おれはテレクラの狭く黴臭い部屋で、鳴らない電話と向き合っていた。 受話器を外し、フ…
木下半太
2018年8月18日 19:26
店長の伝説 ここからは店長の武勇伝だ。 三時間半ぶっ続けで聞かされた話をまとめてみようと思う。 途中から意識朦朧で聞いていたので、若干、話の筋がおかしく、もしくはハリウッド的に大げさになるかもしれないがご了承ねがいたい。 簡潔にまとめるので、どうか安心して欲しい(三時間半は地獄だった。レジの横に置いてあるテレビで流していた『タイタニック』が終わったぐらいだ)。 店長は二十
2018年8月14日 11:21
第四話 メーテル、サイボーグ、ジョーズ デグは一日でカリフォルニアを辞めた。 一日中埃臭い麻袋を被り続けて、咳が止まらなくなったのだ。「やってられるか。リュウもやめようぜ」と初日の帰り道に言われたが、「おれは……もうちょい続けてみるわ」と返した。「マジで?」デグが目を丸くした。「なんでやねん?」「お前は学生やからええけど、フリーターのおれは実家でゴロゴロしとったら肩身が狭いねん」
2018年7月6日 18:34
第3話 ビデオショップ・カリフォルニア 一週間後、デグから電話があった。『リュウ。バイトみつけたぞ』「おう。よかったな」『お前の仕事場やで』「はあ?」おれはリモコンでエロビデオの音量を下げた。『ファミマをクビになったんはオレのせいやからな』 デグは変なところで責任感がある。「職種は?」『レンタルビデオ屋』「マジ?」テレビの画面では、島袋浩がOLの胸を揉んでいる。「……なんて店
2018年6月27日 16:05
第2話 ドラゴンと腕相撲 おれの名前は寿竜。メデタイのかイカツイのかよくわからない名前だ。名付け親は祖母。小学生のとき、祖母に名付けの理由を訊いたことがある。「藤波辰巳が好きやったんよ」 祖母の答えに愕然とした。せめて坂本竜馬にしてくれよ、と子供心に思った。一生背負っていかなければならない名前をプロレスラーから取らなくてもいいじゃないか。 祖母はプロレスの大ファンだ。プロレスの時間にな
2018年6月21日 17:59
第1話 ミレニアム、テレクラ、金的 二〇〇〇年の一月一日、午後零時。 おれはテレクラの狭く黴臭い部屋で、鳴らない電話と向き合っていた。 受話器を外し、フックに直接指をかける。テレクラでの基本中の基本らしい。隣の部屋にいる悪友が言っていた。 悪友の名は出口正大。通称・デグ。おれに色々なことを教えてくれる。そして、そのすべてがロクでもない。 どこからともなく除夜の鐘を突く音が聞こえてき