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【華氏451度】本を燃やす意味
本を持つことが犯罪で、本を持っていたら燃やしてしまう社会になったディストピア小説『華氏451度』の主人公と上司の会話。
どうしてこの社会が本を燃やすようになったのかを上司が語るシーン。この饒舌な上司の会話は「悪魔の囁き」として見ることができる。
人はいつでも風変わりなものを怖れるな
いつだって学校には頭の良い奴とかいたが、まわりがムカついていたのはそんな頭良い奴じゃなかったか? みんな似た者同士じゃなきゃいけない。
だからこそさ 隣の家に本があればそれは弾を込めた銃砲があるのと同じことなんだ
そんなものは焼き払え
弾丸を抜き取ってしまえ
心の城壁をぶち破れ
(中略)
黒人は「ちびくろサンボ」を好まない燃やしてしまえ
白人は「アンクルトムの小屋」を良く思わない燃やしてしまえ
なにもかも燃やしてしまえ
火は明るい
火は清潔だ
代わりに国民には
記憶力コンテストでもあてがっおけばいい
ポップスの歌詩だの
州都の名前だの
アイオワの去年のトウモロコシの収穫量だのを どれだけ覚えているかを競わせておけばいいんだ
もう満腹だと感じるまで、“事実”をぎっしり詰めこんでやれ
ただし国民が
「自分は何と輝やかしい情報収集能力を持っていることか」
と感じるような“事実”を詰めこむんだ
そうしておけばみんなしあわせになれる
哲学だの社会学だの物事を関連付けて考えるような つかみどころのないものは与えてはならない。 そんなものをかじったら待っているのは憂鬱だ
この一節は、全体主義的な社会における思考抑圧と情報操作の恐ろしさを描いていて、異なる考えや価値観を排除し、均一化された社会を目指す風潮が顕著に表れている。
人々に思考力を与える本を「弾を込めた銃砲」と見なし、燃やすことで知識や批判的思考を排除しようとする。この行動は、異なる意見や視点を恐れる心理から生まれるものだ。
代わりに、記憶力コンテストやポップスの歌詞、州都の名前など、浅薄な情報を詰め込むことで、人々が「自分は知識がある」と感じさせる。これにより、人々は満足し、深く考えることを避けるようになる。哲学や社会学といった、物事を深く考えるための学問は排除され、結果的に個々の思考能力が削がれ、権力に従順な社会が形成される。
このような社会は、一見安定しているように見えるが、実際には非常に脆弱で危険だ。思考を抑圧された人々は、クリティカルな問題に直面したときに対応できず、真の幸福や成長を見失ってしまう。異なる意見や視点を尊重し、多様な価値観を受け入れることが、健全で強い社会を築くためには不可欠だと思う。
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