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何度でも読み返したいnote4

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 こちらの4も記事が100本集まったので、5を作りました。
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#ライフスタイル

春 空 の ア ク セ サ リ

窓の外は隅から隅まで 青いタイルをぴっちりと敷き詰めたような 快い空です。 カーテンを開け放ち、 部屋に 四月の日差しをたっぷり呼び込んで アイロン台の前に座ります。 休日の午後2時。 まとめて洗ったシャツやハンカチの アイロンがけタイム。 襟、カフス、腕、肩、身頃と シャツのカタチに合わせて アイロンをすーっと這わせます。 裏に返したり、スチームを使ったり、 アイロン台の先端を使ったり。 皺が綺麗にのびていく様子を見ていると なにか、自分の気持ちまで 整っていく心地

あの値段が気になるから、もう1杯だけ。

私のよく行くバーにはプロジェクターが置いてある。 ワールドカップなどの試合があるとそこに写してみんなで観戦したりするのだ。 スポーツバーというわけではなく、使っていない時もあれば「フジロック流してます!」だったり、BGMは他にかかっているけどアニメや映画などが無音で流れていることもある。 要するにみんなでお酒を飲みながら楽しめるものであればなんでもよいのだ。 先日はWBCを流していた。 そして試合が終わった後、普段は消すことが多いのだがその日はなぜか消音にしてテレビの映像だ

ごめんなさいを、言わなかった。

これは自分のために書いているのかも しれない。 きっと自分が楽になるために。 そうすることがいいことなのか どうなのかわからない。 SNS的でなにかを書くということ その向こうに誰かが読んでいる ということにまだ不慣れなのかも しれない。 とりわけ家族について書くことは なんども自問してしまう。 人はいつか記憶を失うものだし。 そばで暮らしている大切な人が 覚えてほしいことを忘れてしまう ことに今年からずっと直面している。 時々、記憶が揺らぐから

百点満点ではなくとも

湖畔に位置するこの町は、風がよく吹く。二つの湖に囲まれた大地にはサツマイモ畑が広がり、畑の砂がサラサラと風にさらわれていく。数日前に洗車したばかりのはずが、もう汚れてしまっている。 ここへやって来てもうすぐ三年半。長いような、短いような、そんな時間だった。家から少し歩けば夕日に照らされた湖岸へとたどり着き、誰もいない風景を独り占めできるのはささやかな贅沢だ。 しかし、来世でもこの町に住みたいですか?と聞かれれば恐らく断るだろう。 理由はこの町が嫌いだからでは決してない。

あかの他人の一言がずっと心に引っ掛かる

 街中ですれ違った人、電車で前に立っていた人、喫茶店で隣に座った人。  たまたまそこにいた場所と時間が重なっただけのあかの他人が言ったひとこと。  それが忘れられなくて、ふとしたときに思い出すことがある。 「つくねに柚子の皮を入れるとおいしいんだよね」  これはある日、立ち飲み屋で1人で飲んでいたら、隣の隣の隣くらいにいた20代カップルのうち、カノジョの方がカレシに説明していた。彼らは焼酎お湯割りを飲みながら漬物を口に運んでいた。カレシは「へえ」と興味なさそうに相槌を打つと

高島屋のエレベーターでみた、ぎこちなくてきれいな「かけ捨てのやさしさ」

デパートの上層にある雑貨フロアが好きでよく行く。 先週末も日本橋高島屋本館の7階をふらふら見ていて、例によって何も買わず、ゆっくりエスカレーターで降りていった。 僕のだいぶ前方に、若い親子が同じようにエスカレーターで降りていっていた。先頭のお父さんは、ショートカットの3歳くらいの女の子をおんぶしている。女の子はお父さんの腕の中でウトウトしている。 そして2メートルくらい間を空けて後ろに、大きなトートバックを持ったお母さんがついてきていた。 2フロアくらい降りたときに、

一人でマザー牧場へ乗り込み、バンジージャンプを飛んでみてわかったこと。

私にはここ数年、割と真剣に掲げ続けているのに達成できていない目標がある。それは「バンジージャンプをする」だ。 去年noteにも書き、2022年も半分以上過ぎたというのに、私は今年の目標として掲げた3つを今のところ、どれも達成できていない。 わかりきっていたものの案の定早起きはできないし、本も全然読めてない。(読書の秋に期待...) まずい、まずいぞ。 このままではどれも達成できないまま今年が終わってしまうかもしれない。 でも、でもね! バンジージャンプに関してはちょっと

夕陽の部屋と秋映りんご

リビングの扉を開けると 部屋に、西日が差していました。 斜めの日差しが、 波打つレースカーテンの縦縞を通過して ソファに、床に、光を投げています。 ワックスの効いた木目の床に 光が反射して、部屋全体が 明るい色をしています。 昼間、ついうたた寝をして 起きてみると すっかり夕方になっていたのです。 やさしく揉みほぐしたような 夕陽のぬくもり。 手のひらで受けるとそれは ふっくらとあたたかく、 肌の上に心地よく広がります。 リンゴをひとつ、剥きました。 長野生まれの品

花 嫁 の 手 紙

澄んだ空の一端を紡いで 織り上げたような淡水色のドレス。 シフォンのヴェールを 幾重にも重ねてつくられたスカートには、 ガラスの粒が贅沢に、繊細に あしらわれています。 動き合わせて やわらかな煌めきがスカートの上を走り、 まるで 瞬く流星のようです。 私には勿体無いほどの その美しいドレスに身を包んで 前へ、前へ。 彼の肘に手をかけ 生花に彩られた会場の中を進みます。 十月の、透き通るような秋の日。 空の青と木々の緑に囲まれた式場で 私たちは ささやかな結婚式を挙げ