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何度でも読み返したいnote2

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの2も記事が100本集まったので、3を作りました。
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#休日のすごし方

CRままならない休日

寮の近くのスーパーで夕飯の買い出しをしていたら同僚に見つかった。 内心、ゲッと思い隠れようとしたが、ときすでに遅し。 「あれ? 吉村~ひとり~?」と声が掛かってしまった。 「はぁ」と見ると、先輩の男と同期の男の二人が、やはり夕飯の買い出しに来ていた。 「え、ほんとにひとりなの?」 先輩がまわりをキョロキョロして改めて聞いてきた。寮に住んでいる社員は連れ立って歩くことが多いからだろう。現にいま彼らも一緒に買い出しに来ている。 「そうですよ」 そう言って一人分の食材が

百一歳の地図

私の母は、間もなく七十五歳になる。 母の日と誕生日が近いので、私は毎年二つの記念日をひとつにまとめて、少しだけ高価な贈り物を渡すことにしている。 今年は新品の自転車をプレゼントした。 ちょっとした買い物などに毎日使用しており、風雨に晒されだいぶ古くなっていたのでちょうど良い機会だと思った。 母はとにかく元気者だ。 二日に一度はグラウンドゴルフに出かけ、仲間と共に春夏秋冬を問わず広場を走り回り、大声を出しながら汗をかく。 練習が終わると広場の隅にあるベンチに腰掛け、皆

焼き鳥は、はじまりの合図

今夜は焼き鳥でビールいったれ、と思い付き、イオンの中にある持ち帰り専門の焼き鳥屋に寄った。 いつもはそんなに混んでいないこの店だが、今日からゴールデンウィークということもあり、私の前にすでに四組ほど並んでいる。最後尾につきながらガラスケースの中を覗くと、売り切れている種類もちらほら。どうやら私のような思い付きをした人間が他にも大勢いるようだ。焼き鳥×ビールはゴールデンウィークはじまりの合図。ヤバイ過去は捨てて無邪気な笑顔でみんな幸せ。 で、どの種類を買おうか覗き込んでいる

母になった妹を見て泣いた日のこと

妹が母になった。 私には妹が2人いて、2つ下と5つ下。母になったのは、2つ下の妹だ。一昨年結婚して、昨年に結婚式を挙げて、2日前に母になった。 「妊娠した」と聞かされたのは、ここ数年の情勢もあり、家族のグループ通話でだった。初孫ということで両親はとても喜んでいたが、私はなんだか変な気分だった。今まで家族5人だったのに、新たな血のつながりを持った人間が増える、ということがとても不思議で変な気分になった。 妹は嫁いでいるので、産まれてくる子は正確には我が家ではないかもしれない

雨上がりの夜に教えてもらった、優雅な朝

挽き立ての豆で淹れたコーヒーと、焼き立てのパン、じっくり煮込んだスープに、サニーサイドアップとこんがり焼けたウィンナー。 そんな優雅な朝食をとる休日の朝、思い出す夜がある。 数年前のある夜のこと、私は雨上がりの街中で、Yさんを待っていた。 待ち合わせ時間を少し過ぎた頃、通りの向こうからYさんが、白いロングスカートを靡かせながら歩いてくる。Yさんは、私を視界に認めると、急ぎ足になった。 「雨上がり」というこの夜の天気を私が覚えているのは、濡れた地面がYさんの白いスカート