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とある半透明な食堂

私は食べ物に目がない。食べることが大好きだ。(なのに胃腸が弱いのは本当に残念である)。旅先を選ぶ際にも、食が動機となることが多い。だが一つ問題点がある。それは私がビビりということである。

よく旅に行くことから、人からは「積極的」「止まらないね〜」「いけいけ、どんどんだね〜」と言われることが多い。しかしそれは全く違って、ビビりでも旅はするのである。最初のnoteにも以下のように書いた。

どちらかと言えば、人付き合いに疲れて、純粋に1人になりたくて、絶対に邪魔されない完全なる安全地帯を求めて行く、といった感じなのです。

旅はお好きですか?|はじめてのnote

ビビりだから、誰にも刺激されない、ゆっくりした場所で一人になりたくて、でも家は嫌、閉塞的なホテルに籠るのも嫌、だから新しい土地を開拓するという、自ら茨の道に向かって、むしろ突っ込んでいることは自覚している。自分で言うのも何だが、ストイックだな、と思う。本当はそんなこともせず、自然を感じられる場所で、大きな庭付き一軒家でも建てて、いぬやねこ(うまも良い)と戯れながら過ごしたい。

話を戻そう。ビビりであることが私の至福の食事タイムにどう影響するか。それは、美味しそうなお店でも、中が見えづらいお店は躊躇してしまう、というところだ。

ノルウェーEvenskjerのレストラン「A Taste of, cafe and Spiseri, Evenskjer」
ロウソクが灯る薄暗い店内。暗いお店も入るのを躊躇する。

私は事前の下調べを抜かりなくする。果ての地になればなるほどコンビニやチェーン店は少なく、地元に根差した店が多い。店内がこうで、こういうメニュー表があって、店員さんがいて、という情報はあまり無いし、全く想像できない。なのでgoogle mapの口コミや写真を見て、予習してから「よし、入るぞ」と意気込んで入る。勇気があればお店に入れるが、勇気が出ないこともある。その時のために、ちょっとしたおにぎりを食べたり、小腹を満たすおやつを持ち、餓えることのないように、と準備をしている。本当にもったいないな〜と思うのだが、そればビビり故、である。

ある日、山形県に行った時のこと。その日は早朝に東京を出発して朝から山寺のツアーに参加する予定だった。早朝だったのでお腹が空かず、空っぽのまま山形まで来てしまった。お腹が空いた。手元にはお供のチーかましかない。美味しいがこれでは満たせない。周りにお店はあるが、どれも軽食や食べ歩きといった感じで、食事が取れるお店はなさそうだ。そうしていると、喫茶店のようなお店があった。お店の中は半透明というか、すりガラスなのだろうか?中が少し見えにくかったと記憶している。しかし、とてもいい香りが漂ってくるではないか。

背に腹は変えられないと、引き戸をガラガラと開けた。レジには女性が一人。あの、一人なんですけど…と、文字通り蚊の鳴くような声で話した。案の定、「え?なんでしょうか?」と聞き返されてしまう。こういう時にもっと萎縮してしまうのが、ビビりである。別にその女性は意地悪のつもりは毛頭ないだろうし、本当に聞こえていなかったのである。今度は蚊が7匹ぐらいの声で、「1人なんですが、大丈夫でしょうか?」と聞いた。そうしたら女性はパッと表情が明るくなり、「あ、はい!お好きな席へどうぞ〜」という感じだった。

お店には2組ほど、お年寄りが世間話をしていた。店内のメニュー表や内装に年季を感じる。山形といったら芋煮でしょう、ということで芋煮を注文した。10分ほどで到着。見た目は至って普通の、名前の通りの芋の煮物。多めの汁に、里芋、ネギ、牛肉、しめじ、お好みで七味をかける。想像通りのああいう味かな?と思って一口、おったまげた。想像通りだなんて烏滸がましい。予想を超える美味しさだった。味は牛丼のアタマを上品な味付けにした感じだろうか。空腹も相まって、蓮華が止まらない止まらない。季節は初夏。汗だくになりながらもあっという間に完食した。これに白米があれば、3杯は食べられたかもしれない。

絶品!芋煮。

非常に満たされた気持ちで「ごちそうさまでした〜」とお皿を戻したところ、厨房から声をかけられた。「綺麗に平らげてくださって、ありがとね。また来てね」とニコニコの女性。

あぁ、挑戦してよかったと、心から思った瞬間である。

ふと、厨房の際を見ると、山盛りのおにぎりが置いてあった。「芋煮とご一緒にどうぞ。150円」というPOPと一緒に。はぁ~~またやってしまった。ビビりモードになると視野が狭くなるのだ。惜しいな~。

また、挑戦しようかな。

山寺から撮った村の風景。美しい緑。

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