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【資料】スタンダードを調べるときに

ジャズスタンダードを、掘り下げて調べる時に、便利な情報。
(リードシートなど譜面ではなく曲の解説とかテキスト情報に限定)

書籍

スタンダード・ジャズ・ガイドブック

昔の「青本」(正式には「スタンダード・ジャズ・ハンドブック」)の「副読本」。青本の収載曲のうち6割程度を詳説。
一曲あたり見開き二ページ。曲のざっとした紹介、コード進行の注意点やフック、リハモのパターンなどのヒント。名演のテイクも2-3紹介。
短く、読みやすい。実践的。
ジャズ研3年生〜4年生にちょうどいい内容と思います。
難点は廃盤なこと、ちょっと古いこと。定価1500円くらいですが、中古で変なプレミアム価格がつきがち。値段が下がった時買ってください。

テッド・ジョイア著 ジャズ・スタンダード

定価が9900円。分厚い。
よくみたら、みすず書房。みすずはいい本出すよなあ…(本好き)。

テッド・ジョイアという批評家・ピアニストの著作。250曲を、曲の由来や名演、曲調の解説、エピソードなどを含め詳説。
譜面やコードに即した演奏上の注意点はありません。
曲の背景知識のために格好の一冊。別テイクの収載はかなり詳しい。
難点は、曲が、アイウエオ順に並んでいること(カタカナ!)
それが嫌なら原語で買えってことか。

ジャズ詩大全

ジャズの詩を紐解いて解説。ボーカルにとって必見の内容。
当時の背景の情勢や時事ネタもおりまぜ、20世紀のアメリカ文化を深く理解できる非常に面白い本。別冊入れて22巻あり、おいそれと手を出しにくい重量級ですが、読んで損はない。(残念ながら私は拾い読みだけですが)
コードワークやアドリブに対するアプローチとか器楽者向けの部分はなく、(譜面はない)歌詞とメロディに関する考察が中心。

ジャズ・スタンダード・アナライズ~名曲誕生の謎を紐解く

ひそかにおすすめの一冊。
スタンダードのテーマ、メロディに焦点を当てた本。
モチーフの展開やコード進行についての解説が非常に有用。
この曲は結構楽譜も多く、ジャズ研的にも、参考になる部分が多い。
「どうやってアドリブを吹くか」=Howの部分だけではなく「なぜこのコード進行なのか」=Whyを考えるきっかけになれば。
「名曲とは偶然ではない、名曲になるべくしてなったのだ」という章末の結び言葉がアツい!

欠点は、収載されている曲数が少ないこと。
辞典的な使い方ではなく、一旦は通読する用途に向いています。

Website

みんなが思っているほど、いい情報はネットには落ちていません。

ジャズ研究:吉岡直樹

名古屋在住のベーシスト、吉岡直樹さんのサイト。
スタンダードのコード進行・メロディについて、かなり踏み込んだ解説。
特にコード進行のテイク違いや変遷、本家のミュージカルナンバーの時のコードなどプレイヤーにとって最も知りたい情報が語られています。

こういう情報って、一朝一夕には得られないんですよ。何千時間、何万時間もスタンダードと向き合って丁寧に曲紐解いて解釈を考えている人にしか書けない。
日本語で得られる情報では最上のものではないでしょうか?

Jazzstandards.com

https://www.jazzstandards.com/index.html

海外のジャズスタンダードの紹介サイト。
曲の初出のエピソード、おすすめテイクなどが紹介されていますが「弾き方」プレイヤーサイドの情報はあまり多くないように思いました。
ただ、総覧する情報の一つとしては役立つと思います。

まとめ

テッド・ジョイアとジャズ詩大全は、ジャズ研などで共同購入して、基礎資料とすることをおすすめしたい。
一人で消化するにはいささかヘビー(特にジャズ詩大全。全部で4−5万円)
最近はサブスサービスで曲名を検索したらテイク違いは大体総覧できるので、名演のインデックスとしての意義は昔より下がってしまいました。

「ガイドブック」と「ジャズ・スタンダード・アナライズ」は、個人で買う価値はある。一旦通読すると、何か感じるところがある。
できれば「ガイドブック」は再販かKindle化してほしい。
吉岡さんのwebsite、これはすごいね。全国のジャズ研生諸君、元ジャズ研生諸君は足向けて寝られないですわこれは。

もちろん座学なんてどうでもよくて「音源を聴きまくり、練習するんじゃ!」という姿勢も構わない。僕も若い頃はそうだった。

曲を掘り下げて探求することは、若いミュージシャンの必須作業とはいえない。「文字で得られる情報」でわかった気になるより、音源を100回聴き倒して音の情報を聴く方がミュージシャンとしては優先されるべきかも。

これって永遠のテーマ。
いわゆる「食通」が、目隠しでは名店の料理を当てられない現象、要するに知識は感性を鈍らせる矛盾ですね。過去の知識より、感性をビンビンに尖らせるほうが、パフォーマーとしては優れた成果をあげられるのかも。

ただ、ジャズは、膨大な過去の先達が作り上げた音楽のアーカイブの地層を掘り起こす作業。そこに補助線としてさまざまな知識があった方がいい場合もあると、僕は思っています。




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