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そのままのわたし

「よっしゃ」と立ち上がる。
「それじゃあ」と言うこともある。
立ち上がって、動き出そうとする。

「むりしないでね」

その声は、じんわりと響いた。
コーヒーみたいにやさしくて、ちょっと苦かった。

その言葉は、あたたかいのに難しい。
「むりをしない」ってなんだろう。
「サボる」のと何が違うんだろう。
「休みたい」と「休むべき」、線を引くことは永遠の課題のような気がする。

むりしなければ、なにもできないよ

「好きなこと」を好きなままでいるのって、どうして難しいんだろう。
苦さの原因を、ぐっと呑み込んだ。

「むりをするところを、決めているの」

代わりに、そう答えた。
身体と時間のキャパシティに対して、優先順位をつけること。
ごちゃごちゃと広がる感情を後回しにして、わたしが日々の中で抱きしめたいものを、もう決めている。

「それならいいね」

返ってきたあたたかい声が、身体を一周めぐったのを確かめて、ようやくわたしはほほえんだ。
ああ、よかった。
なにもするな、とか
そうは言っても頑張らないで、
なんて言われなくてよかった。
そのままのわたしが、幸福になる権利を認めてくれてありがとう。
わたしにも、願いがある。
這ってでも欲しいもの、失いたくないもの。

「ありがとう」と告げて、わたしは歩き出した。



【photo】 amano yasuhiro
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