そのままのわたし
「よっしゃ」と立ち上がる。
「それじゃあ」と言うこともある。
立ち上がって、動き出そうとする。
「むりしないでね」
その声は、じんわりと響いた。
コーヒーみたいにやさしくて、ちょっと苦かった。
*
その言葉は、あたたかいのに難しい。
「むりをしない」ってなんだろう。
「サボる」のと何が違うんだろう。
「休みたい」と「休むべき」、線を引くことは永遠の課題のような気がする。
むりしなければ、なにもできないよ
「好きなこと」を好きなままでいるのって、どうして難しいんだろう。
苦さの原因を、ぐっと呑み込んだ。
*
「むりをするところを、決めているの」
代わりに、そう答えた。
身体と時間のキャパシティに対して、優先順位をつけること。
ごちゃごちゃと広がる感情を後回しにして、わたしが日々の中で抱きしめたいものを、もう決めている。
「それならいいね」
返ってきたあたたかい声が、身体を一周めぐったのを確かめて、ようやくわたしはほほえんだ。
ああ、よかった。
なにもするな、とか
そうは言っても頑張らないで、
なんて言われなくてよかった。
そのままのわたしが、幸福になる権利を認めてくれてありがとう。
わたしにも、願いがある。
這ってでも欲しいもの、失いたくないもの。
「ありがとう」と告げて、わたしは歩き出した。
【photo】 amano yasuhiro
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