やさしく、つつまれて
部屋を片付けたら、居心地がすこぶるよくなって、びっくりしている。
そんなつもりじゃなかったのに。
ときどき訪れる、”発作”のひとつとして
わたしは、いらないものを拾ってゴミ袋に詰めて、積んでしまっていた服を畳んで重ねてた。
部屋の何かが大きく変わったわけじゃないのに、デスクの上は相変わらずごちゃごちゃしているのに
なんだか、息をしやすくなった。
わたしは今日、部屋に籠城している。
*
片付けとは全然関係ないはずなのに、また床で眠るようになった。
なぜだか、床もすっきりしたような気がしてしまっている。わたしは、ばかなのかもしれない。
ベッドは窓辺にあって、この季節からもう、隙間風が冷たい。
わたしは、夏用の毛布だけ抱えて、ベッドとは反対の場所に転がる。
小さいラグがひいてあって、わたしの上半身だけを守ってくれる。
わたしはころころと、横になる。
*
最近、友達に進められた「Dr.STONE」というアニメを見ている。
全人類が石化してしまい、そのあと数千年経って目覚めた人類の物語。
かつての文明はすべて消滅している。
なぜだかわたしは、「毛布があれば、なんとかなるかもしれない」と思った。
ライナスみたいに、毛布だけ抱えていれば
石化後の世界で、何か抱えているとすれば、毛布がいいのかもしれない。
毛布じゃなくてもいい。
大きなカーディガンとか
抱えたり、まとえたり、あるときは枕になったりするような、大きな布があれば
わたしの心はある程度、守られていくのではないか
なぜだか、そんなふうに思えた。
わたしは、やさしく勇敢な気持ちで、今日も毛布につつまれている。
*
体温調節が、人より上手じゃないのかもしれない。
夏場でもカバンにストールを入れて、会社にもパーカーとひざ掛けを常備していた。
「寒いかもしれない」と、なんだか不安にかられるとき、布に包まれていると安心した。
じんわりと、あたたかくなる。
どんな季節も。
真夏の炎天下以外ならば、布はいつでもわたしの味方だった。
*
わたしはこれからも、毛布や布に包まれていけばいい。
不安な夜も、逃げ出したい夜も
あるときは、頑張りたいときだって
ぐるりと包まれて、守られて、安心して
「もうこれで大丈夫」と、思って
部屋に転がるたくさんの布たちが、
これからもわたしと、わたしの大切な人たちを
守っていってくれたらいい。
そんなことが、苛烈な人生の、やさしい魔法になったらいい。
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