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やさしく、つつまれて

部屋を片付けたら、居心地がすこぶるよくなって、びっくりしている。

そんなつもりじゃなかったのに。
ときどき訪れる、”発作”のひとつとして
わたしは、いらないものを拾ってゴミ袋に詰めて、積んでしまっていた服を畳んで重ねてた。

部屋の何かが大きく変わったわけじゃないのに、デスクの上は相変わらずごちゃごちゃしているのに
なんだか、息をしやすくなった。

わたしは今日、部屋に籠城している。

片付けとは全然関係ないはずなのに、また床で眠るようになった。
なぜだか、床もすっきりしたような気がしてしまっている。わたしは、ばかなのかもしれない。

ベッドは窓辺にあって、この季節からもう、隙間風が冷たい。
わたしは、夏用の毛布だけ抱えて、ベッドとは反対の場所に転がる。
小さいラグがひいてあって、わたしの上半身だけを守ってくれる。
わたしはころころと、横になる。

最近、友達に進められた「Dr.STONE」というアニメを見ている。
全人類が石化してしまい、そのあと数千年経って目覚めた人類の物語。
かつての文明はすべて消滅している。

なぜだかわたしは、「毛布があれば、なんとかなるかもしれない」と思った。
ライナスみたいに、毛布だけ抱えていれば
石化後の世界で、何か抱えているとすれば、毛布がいいのかもしれない。

毛布じゃなくてもいい。
大きなカーディガンとか
抱えたり、まとえたり、あるときは枕になったりするような、大きな布があれば
わたしの心はある程度、守られていくのではないか
なぜだか、そんなふうに思えた。

わたしは、やさしく勇敢な気持ちで、今日も毛布につつまれている。

体温調節が、人より上手じゃないのかもしれない。
夏場でもカバンにストールを入れて、会社にもパーカーとひざ掛けを常備していた。
「寒いかもしれない」と、なんだか不安にかられるとき、布に包まれていると安心した。
じんわりと、あたたかくなる。
どんな季節も。
真夏の炎天下以外ならば、布はいつでもわたしの味方だった。

わたしはこれからも、毛布や布に包まれていけばいい。
不安な夜も、逃げ出したい夜も
あるときは、頑張りたいときだって

ぐるりと包まれて、守られて、安心して
「もうこれで大丈夫」と、思って

部屋に転がるたくさんの布たちが、
これからもわたしと、わたしの大切な人たちを
守っていってくれたらいい。

そんなことが、苛烈な人生の、やさしい魔法になったらいい。




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