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ときめきと、一緒に過ごせる時間

この記事を書いて、わたしは思い立った。

昔、鳥の絵のついたトートバッグをもらった、という話をしたんだけど、こいつを最近見掛けていない。
記事を書く合間に「このへんかな?」という場所を軽く見たけど、出てこなかった。
その代わりに「あ、そういえばこんなの持っていたな…」と存在を忘れていたエコバッグが出てきて、愕然としたりした。

探そう
そして、いらないものを捨てよう。

グリルで魚を焼いている同居人に「ごめん」と声をかけて、わたしは断捨離を始めた。



ものを捨てられない女だった。

いまでも比較的捨てられないタイプなのかもしれないけど、他人と比較したことがないのでわからない。
でも、昔よりも捨てられるようになった。

フリーランスで在宅ワークをしている友人の部屋を掃除する、というのは、もう10年くらい続けている。
彼女もまた、ものを捨てるのがあまり得意ではなかった。
というよりも、彼女の場合は「要る・要らないに向き合う時間を捻出する余裕がない暮らしをしていた」というほうが、正しいかもしれない。

10年も掃除を続けていると、そのあいだに引っ越しがあったり、大掛かりと呼べる掃除があったりして、たくさんの物を捨てる機会があった。
懐かしいね、と言いながら捨てたり、当人に判断を仰ぐと疲れさせたり考えさせてしまうものは、わたしがこっそり捨てたりしていたことも、あったと思う。
捨てるって本当に、疲れる。
20代の頃は、なぜだか「捨てるって悪いことをしてる」とか「まだ使えるのに」みたいな罪悪感もあった。

友達の部屋のもののほうが、潔く捨てられる。
ぽいぽいと、ゴミ袋に詰め込んでゆく。
着なくなった服とか、使わなくなったネイルとかアクセサリーの一部は、わたしが引き取る。

そして、引き取った部屋で物が溢れる自室を、今度はわたしが自分で片付ける。
あれだけ他人の部屋で断捨離できたんだから、自室でもできるはず、とわたしは強気になることができた。
そうして、わたしは彼女の部屋で「物の捨て方」を覚えたような気がしている。



ひとつは、ときめきは持続しない、ということだと思う。
正しくは、「持続しないものもある」ということ。

今日わたしが捨てたのは、ディズニーランド(最後に行ったのは何年前だろう)のお土産袋と、ジルスチュアートの紙袋だった。

たのしかった、こうふくだった。
その記憶を残したいのと、「袋だからまた使うかも」と残しておいたのだと思う。
でも、いまのわたしには、出掛けた日と同じときめきはもう、残っていない。
何年も使わなかった袋は、これからも使う可能性が低い。これは、ゴミ箱へ

チケットの半券とかも、同じ気持ちだ。
「この日のことを覚えていたい」と思う。
でも、きれいにファイリングなんてする性格ではないから、「なんとなく紙を挟む場所」に挟まれて、何ヶ月も経ってしまう。
次に見つけたときには、ときめきも遠のいているので、捨てるようにしている。
どうしても気に入ったものは、壁に貼る。それは、「持続したい、または持続させたいと願うときめき」なので大切にしたい。



べつに、すべてを手放すことが美しい、と言いたいわけではない。

連れて歩ける物の数にも限りがあるし、記憶だってそうだと思う。
でも、心からはこぼれてしまっても、物にだけ宿って残る記憶もあるし、そうしたら物も残したくなっちゃうよなあ。難しい。

それでも、少しすっきりとした部屋と、大きなゴミ袋を見ると、すこやかな気持ちになる。
やればできるんだ、と思える。
日々の暮らしを、少しだけ快適化することができてわたしに、拍手を送りたい。



探していたトートバッグは「ありそうだな」と思っていた場所の奥深くから出てきた。

同じ場所には、前の会社とか、その前の会社で使っていたものもいくつか入っていた。
退職した当時は「大切な思い出の品」と思っていたけど、いまでは"品自体"が大切ではなくなったので、それは捨てた。
あのときわたしは、いつかのわたしに託したのだと思う。
いつか、気が済んだ頃に捨ててね。
そんなふうに思って、この場所に閉じ込めた、あの日のわたしをぼんやりと覚えている。



形あるものはいつか壊れるし、わたしはどうしても新しいものが欲しくなってしまう。

「ありがとう」と思って、捨てるようにしている。
楽しい時間をありがとう。
あなたと一緒にいられて、どこかへ出掛けたりしたりして、楽しかった、と。

今日は、カバンも捨てた。
新しいカバンを買って、用途が被ってしまったもの。最近使わなくなったもの。
ボロボロだけど、まだ使える。
でも、わたしは「ありがとう」と言って手放した。
これでよかったと思っている。

この感情を、なんと言えばいいんだろう。
うまく説明できないけど、こんなふうにおとなになれたことは、誇らしいと思っている。


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