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この約束は、最後まで果たされなければいい

最近、ふたりの友達と約束をした。
たまたまどちらも、「そうなったときは、叱るよ」という内容だった。

ひとりは、
「他人への愛や、敬う心を忘れてしまったような発言をしたとき。
 お金の使い方が、本人自身の常識範疇を越えるとき。」

ひとりは、
「次、同じ出来事が起きたときに、今回と同じ返答をしてしまったとき。」

そのときは、わたしが叱ってあげるね。
だから、いまは大丈夫。
いまの君が大事にしているものを、そのまま大事にしていて大丈夫。

間違えてしまったときには、わたしが叱ってあげる。
だから、安心して進んで欲しい。

なんて言ったけれど、
本当は、叱るのなんか得意じゃない。

叱りたくない。
叱られたくないから。

だいたい、叱るというのは難しい。

わたしから見て「悪い」と思ったら、「いけないよ」と叱るのだろうけれど
本当にそれは、本人にとって「悪い」ことなのだろうか。

責任を取れない、というと仰々しい。
でも、相手は「友達」であって、子供やペットではないので「しつけ」をするのは違う。

わたしは、「不幸になる権利もある」という、母親の元で育てられた。
運良く、今日まで母親と共通の「幸福」の概念を築いてこれたけど、母親は「自分が思う不幸に該当するから」という理由で、わたしを否定することはない。

安全でないことは、不幸に見えてしまうこともある。

フリーターを貫いた結果、無職になったわたしを、どこかの誰かは「やっぱりね」とあざ笑うかもしれない。
社員になっていれば、職を失わずにすんだのにね。”安心して”暮らせたのにね。
挙句の果てには、「20代の頃バンドなんかやってなければ」とか「仕事よりバンドを優先させていたから、そうなるんだ」なーんて、言われたりするだろうか。
わたしは、全然不幸じゃないのに。叱られなければいけなかったのだろうか。

みんないいところがあるじゃないか。

「明らかに間違っている」なんて、わたしは言えない。
「わたしは、それは好きじゃない」「わたしは、そうしない」と言うのが、精一杯だ。

それでも、友達には「叱る」と約束した。

わたしは、友達の信念を理解しているつもりだ。
その、「他人を敬う心」を忘れたら、彼女の心臓にかなり近い部分が腐食されていることになる。
わたしたちは、お互いでそれを理解している、と確信している。
だから、叱ると約束した。

「同じことを繰り返したら、叱るね」と言った友達も、そう。
彼は、掴みたい未来の切れ端を、もう見つけている。
まだまだ鮮明じゃないかもしれないし、行く先は「ラク」とか「楽しい」ばかりではないと、わかっている。
それでも「行きたい」と思っている。
あのとき「行けなかった」ことを、後悔しているから、話してくれた。
君の行く先を、祝福する。
だから、違う道を選んだら「叱るね」と約束した。

そうしてわたしも、友達に背中を守られながら、大人にしてもらったのだと思う。
わたしが信念から外れた生き方をしたら、この友達がわたしを、叱ってくれるのだと思う。

それでも、

それでも、できれば叱りたくない。
わたしは、口は悪いけど、友達のことは甘やかしたいし、できれば甘やかされたい。

「よく頑張ったね」て言ってあげたい。

わたしの友達は、みんな結構頑張ってるくせに、自分では「いや自分まだまだッスよ」ていうタイプの人が多い。

頑張ってきたじゃん、ここまで。
わたし、見てたよ。
できる限り、そう言ってあげたい。

だからどうか、思い出して欲しい。
他人を敬う心を忘れた発言の仕方を、してしまったときには
あのときと同じ場面に立って、決断しなくてはいけなくなったときには

わたしに「理想の生き方」を語った、君自身を思い出して欲しい。

できれば、自分でなんとかしてくれ
踏ん張って、乗り越えて欲しい。
君たちにはそれができる。
そうやって生きてきたじゃないか。

乗り越えるときの後押しは、いくらだってする。
その先の苦しさも、受け取ってあげるから。
何度でも話を聞くから。

だから、忘れないで欲しい

わたしも、忘れないでいるから。
ほんとうにいざっ、てときはさ
絶対に叱ってやるよ、約束する。

でも、この約束が最後まで果たされないことを
わたしはずっと、願いながら隣りにいるよ。

そんなふうに思ったら、わたしも「叱られたくないな」と思った。

やっぱりわたしの友達は「頑張ったね」と言ってくれる人が多い。
この、やさしい友人たちに、同じダンジョンをくぐり抜ける、仲間たちに
わたしを叱る、なんて手間は、かけさせたくないから。

わたしにも、信念がある。

この信念を、貫き通せるように。
「やる」と決めたことを、しっかり実行できるように。
(いま、後回しにしていることがあるのも、わかっている)

最後まで、君と友達でいられるように。

わたしは、君たちとの約束を背負って、
いま一度、背筋を伸ばしている。



【photo】 amano yasuhiro
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