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君に伝えたい百の言葉

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あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
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2022年1月の記事一覧

さよならブルー

花屋に行こうかな。 そのとき、少しだけ悩んでいた。 今日はもうたくさん歩いたし、家までの最短ルートを選んだら、花屋と逆側に出てしまった。 迂回。 それは、元気で調子が良いときには愉快だけれど 今日の足はぐったりと重たい。どうしようかな。 明日買いに行こうかな、と思う。 そんな自分を想像する。 明日か明後日、花屋に行くわたし。 ついでに、今からすぐに玄関を開けるわたしを想像して、ため息をつく。 けんかをすると、いつもそうだ。 しばらくお互いだんまりを決め込んで、そのあいだわ

どうせ、めんどくさい人生だから

言えなかった。 人に頼む、というのは妙に面倒だったりする。 不思議だ。頼み事は自分の手から離れてゆくから、わたしは身軽になるはずなのに。 「頼んだ結果、良いものが返ってくることを願う」と、なかなか大変だ。 その先にはずいぶん面倒な説明と、大きな落胆が待っているかもしれない。 「忙しそうだしな」と思うこともある。 嫌な顔をされてしまうかもしれない、と思う。 最後はいつもこうだ。「自分でできるから」 そうして、唇はいつもの言葉を紡ぐ。 「自分でやったほうが早いし」 その

わたしがもし、モンスターの街で暮らしたならば

わたしがこの街に住んでいたら… 最近は、そんなことばかり考えている。 * 去年見たアニメのひとつが、「転生したらスライムだった件」だった。 有名なタイトルだし、誰かがおもしろいって言っていたような気がする。 わたしもぐんぐん引き込まれて、全話見た(続きが気になる 「転生したらスライムだった件」というのは、 その名の通り転生したらスライムになった主人公が、何やら超強くて、そのチカラを以て仲間を増やし、村を、街を、国を作っていくという物語。 もちろんそう上手くはいかず、敵が

あつくても、さめても

飲み物の流行りっていうのは、定期的にやってくる。 コーヒーばっかり飲んでいることもあれば、紅茶のこともある。 紅茶と言ってもアイスティーを常備する暮らしもあれば、あたたかい紅茶に牛乳を落としていることもある。 スイスミスのココアは、美味しすぎてすぐ飲んじゃう。飲み過ぎ危険だから、流行りと共に控えるよう気をつけている。 最近は、あたたかい紅茶ブームが訪れた。 寒いから、当然のように。 去年はたしか、サーモのタンブラーをもらったから、それにお茶を淹れていたような気がする。 ず

夜の来訪者

じわりじわりと時計の針が進むように、君は気づくとそこにいる。 最初は、ほんの小さな気配。 気のせいかもしれない、と思う。 夜だから、変な時間に起きちゃったから、眠いのか、そうじゃないのかもわからない。身体が迷子になっているだけだよ。と言い聞かせる。 眠れずに、または眠らずにいると隣にやってくる。 膨らんだ違和感を追い払うことはもうできなくて、小指の先をぎゅっと握られている。 せっかくそんなに近くにいてくれるなら、抱きしめて「だいじょうぶだよ」と言ってくれればいいのに。

わたしはその日、仕事を休んだ。

「そういえば、ようやく言ったよ」 彼女の声は、いつも通りだった。 「”アレ”、要らないって」 “アレ”というのは仕事関係で定期的に届く、まさしく”アレ”のこと。 先方はよかれと思っている、または送らなくては失礼だと思っている、とか、そういう類のものだった。 が、彼女は”アレ”が大の苦手だった。 彼女の目につかないよう、わたしがこっそり捨てることもあった。 長年、小さなたんこぶのようだった。 要らないと伝える、という選択肢は、近年になってようやく浮かび上がってきた。 不思

手の掛かるピアノ

毎日ピアノを弾くようになってから、650日ほど経つ。 毎日、という名の、48時間に2回くらいのペースで。 鍵盤の上を滑っているあいだは、1分から3分。体当たりの即興演奏。 思い付きで始めて、辞める理由が思い浮かばなくて今日まで来た。 ピアノを嫌いになれなかった。 あなたのいない人生を、結局のところ考えることができなかった。 小指の先だけでも繋がっていたかった。 いつでも、あなたの元へ帰りたいし逃げたいし、甘えたいと思っている。 ピアノはいつでもそこにいる。 わたしが勝手に、

この街の暮らしは

よし、いまのうち。 ビニール袋をみっつ抱えて、家から出た。 缶と瓶の回収日。 いつもはビニール袋ひとつ分の缶だけ、なんだけど。 先週は三が日で回収がお休みだったから、今日はふたつ。 あと、年末の掃除で発掘された謎の瓶を入れたふくろを持って、歩き出す。 いまの家については、気に入っている箇所のほうが多いけれど、 「ゴミの集積所が遠い」は、なかなか厳しいマイナス点だった。 かつて同じ物件に住んでいた、という友人も「あれでしょ? ゴミ出しが大変な家でしょ?」と言っていた。 晴れ

めんどうの裏側

エッセイを日常的に書くようになってから、1年と半分と少し。 たのしく書いているときもあれば、 ああ今日も書かなきゃな〜と思うときもあるし、 するっとパソコンの前に座って、さくっと書いていることもある。 いろんな日がある。 「書き続けたわたしに会いたい」というよりも 「書かなくなったわたしを見ることが怖い」という消極的な理由で書いているだけかもしれない。 わたしはいつも、前向きに消極的な一面を持ち合わせているような気がする。 * いろんな日があるけれど、「後手になる日」

日常 / 魔法

ああ、やってしまった。 二度寝、2時間経過。 時間ばっかり過ぎて、今現在もどっぷりと眠たくて驚いてしまう。 そうだ、昨晩は久々に夜更かしをしたんだ。 大学生の頃みたいに、しゃべったり食べたり、ときどき別のことをしたりしながら、自由でかろやかな時間。 朝の重たさも、まあ悪くないと思える。たまには、善いのだ。 * 世の中に、朝が得意な人とそうじゃない人がいる、というのには、上京してから気がついた。 「おはよう」と言った瞬間、今日見た夢の話を始めた彼女は、圧倒的な強者だった。ほ