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君に伝えたい百の言葉

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あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
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2020年7月の記事一覧

1キロヘルツの世界

「夜中だから大きい声出さないで!」 前の家に住んでいたとき「騒音」という名目で、二度警察を呼ばれたことを、わたしはまだ根に持っている。 別に、バカ騒ぎをしていたわけじゃない。 上の階に、ちょっとデリケートな人が越してきて、わたしたちの「しゃべり声」がうるさいというのだ。 証拠として、わたしたちのしゃべり声を録音している、と言われたことに狂気じみたものを感じ、退去することに決めた。 「わたしたちの声の大きさだとね、”小声”以外のすべての声が”大声”になるの!」 わたしも同

魔法のチョコレート

「今日は、ゴディバのチョコレートがあるよ」 頼まれていたスターバックスの新作、桃のやつと 自分のためにアイスコーヒーを買って、彼女の部屋を訪れた。 「そろそろ、来る頃だと思って」 彼女は、時々自分のご褒美のために、ゴディバのチョコレートを買っていた。 彼女の部屋を訪れるわたしは、時折そのおこぼれをもらう。 いつも通り、不要な書類をチェックしたり、テーブルを拭いたり、ゴミをまとめたりしながら アイスコーヒーがなくなる前に、ゴディバの箱をあけた。 6粒のうち、3つは既に

わたしは、故郷の案内ができない

まだ、オフィスで働いているときの出来事だった。 愛知の観光の話になったときに、愛知県出身の友達が「そのへんは地元だから、案内できるよ!」と言っていた、 その笑顔が、眩しかった。 眩しかったから、今でも覚えている。 わたしは、故郷の案内をすることができない。 実家にいるときは、車移動だったので、静岡の地名はほとんどわからない。 移動時間を気にしたことがないので、距離感もわからない。 わたしはいまでも、車の免許を持っていない。 観光とか、遠足とか、そういうこともしてきたんだ

他人からの評価は、自分の信念を揺らがすことがある

相変わらず、「あつまれどうぶつの森」をプレイしている。 (以前の記事はこちら) このゲームは、「無人島を開発してゆく」という、「無人島開発パッケージに参加する」というのが主な内容になるんだけど、 広大な島の敷地を整備してゆくのは、結構骨が折れる。 ということで、わたしは「自分のおうちを整備すること」を頑張ることにした。 増築費用を払っていくことで、1階に4部屋+2階+地下の計6部屋の一軒家を建てることができる。 もう、この家に住みたいわ…… 全部の部屋に、ソファーかベ

山作戰の歌を、聞いて欲しい

まず、これを聞いて欲しい そして、この”山作戰”という、純然たるおじさんが何者か どうしてこれを聞いて欲しいと思うのか 今日は、わたしの親愛なるおじさんの話をする。 山作戰、というミュージシャンがいる。 わたしは、10年近く前に東京で出会った。 当時、動画配信の流行を走っていたUstreamで、有名なおじさんがいると聞いた。 わたしの働いていたライブハウスでも、Ustreamの配信に力を入れていたので、山作戰との出会いは必然だった。 出会って数年経った頃、静岡に移転す

ゲームにキレたって、いいじゃない

「ぐわあああああああ!!!!!」 同居人が叫んでいるとき、わたしは煙草を吸っていた。 どうやら、ゲームで先に進めないらしい。 「休憩!」と言って立ち上がり、トイレに行く後ろ姿に 「ゲームでキレるなよ〜〜〜」と笑いながら声をかけた。 言った直後に、「ちがう、まちがえた」と思った。 ゲームでキレたっていいじゃないか。 キレる、という言葉に、あまり良い印象がないので、ちょっと言葉を変えてみる。 「一生懸命頑張っていることが、うまくいかないときは、悔しがったっていいじゃないか

家族という、放牧の輪

兄が遊びに来た。 兄のような人、家族のような人、とわたしが呼ぶ人は何人かいる。 今日話すのは、そういった”同じ釜の飯を食った”というたぐいの仲間の話ではなく、 たったひとりの、”実兄”のことである。 わたしはふたり兄妹で、 たったひとりの兄は、ひとつ年上だ。 彼は、不思議な人だ。 いま、少し手を止めて、兄と自分の共通点を探してみたが、思い浮かばなかった。 同じ人間を、母とか父とか、祖父母とか呼ぶこと以外、ほとんど共通点が見当たらない。 「正社員になるのはなんか違う」と

この世界は、やさしい輪の中にある

ねえねえ、聞いてよ。 わたしは、同居人に声をかけた。 この記事の内容を、話したかった。 この日わたしは、”開けなきゃいけないけど、すごく嫌だった”、年金と住民税の納付書を開けた。 嫌だったと言っても、支払う義務や必要があることはわかっている。 同居人の言葉を借りれば、「高い金払えって言ってくるんだろ…」ていうやつ。 税金についての知識がなく、会社の庇護もないわたしたちの感覚は、恥ずかしながらこの程度である。 なんとか封筒を開けて、 混乱を落ち着かせるために、読んでまとめ

"ギャリック砲"の練習には、意味があった

ちょっと元気が出ない日、ていうのはある。 ひとりのときは、眠ったり、ゲームをしたり、掃除をしたりする。 同居人がいるときも、基本的には部屋にこもるようにしている。 別に、同居人が悪いわけではないけど、いつもよりいろんなことが気になってしまい、八つ当たりのようになってしまうのはいやだった。 八つ当たりしたくない。 ぐっ、とひとりで耐えたい。 ずっとハッピーでいられないのと同じように、 ずっと元気がない日や、時間が続くということはない。 * 元気がない日は、こちらの都

工夫したり変わったりしないと、人生が息苦しくなる

「ああ、洗濯物そっちに干しているのか」 めずらしく昼間の洗濯を終え、 そんな風に声をかけられて、驚いた。 * 洗濯はだいたい、朝やることにしている。 同居人が、寝ているうちに洗濯機を回す。 同居人は最近、家にいる日が増えた。 そして、わたしより遅く眠りについて、遅く起きる。 いままでは、同居人のものと、わたしのものと、なんとなく分けて干していた。 干すスペースの都合上、そうするのがいいと判断していた。 無職になって、いつでも洗濯ができるようになったので いまは、ペー

僕は今日、旅に出る

近々、きっと喜ぶプレゼントが届くよ✨ 本日栃木県から発送された 母から、こんなメッセージが届いたのは、昨日の出来事だ。 荷物を送ってくるのは稀なので、何事かと思ったけれど「わかった」とだけ返事をした。 栃木県? なんだろう。 食べ物とかかな。 なんだろう、と思ったけど、すぐに忘れた。 * 翌朝わたしはたまたま早起きをして、 家事を一通り終えて、煙草を吸い終わったときに部屋のベルが鳴った。 最近は、謎の販売員が訪れることも多かったので、一瞬ためらったけど、ドアを開けたら

にんげんのちから

病院に行くことは大切だ、とわかっている。 いまでも、病院に行くことが好きかと訊かれたらそうではないのだけれど、 剥離骨折を経験したとき、最初の病院で骨折を見つけてもらえなかった。 2つ目の病院でようやく骨折を見つけてもらったあの経験を、わたしは生涯忘れない。 とは言うものの、わたしは今回、病院に行かなかった。 * 実は、5月のアタマくらいに、部屋で派手に転んだ。 「部屋で転んだくらいで病院?」と思うかもしれないけれど、 ほんとうに、「ずってーーーーん!!!」という大き

ありきたりのしあわせ

「近い内うちに、母の日父の日のプレゼント買いに付き合ってもらえたらうれしいです」 どっちも過ぎてるけど、と 弟(のような人)から連絡があったのは、数日前だ。 迷わずに「もちろん!」と答え、弟の予定を尋ねた。 弟が、母の日と父の日のプレゼントを買いに行きたい、なんて言ってきたら、よろこんでついていってしまうものだ。 弟が休みの日、迎えに来てくれた。 遠くに行くのははばかられるので、近所の駅ビルを目指す。 わたしたちは、特に変わらない近況を話したり、「ご両親は元気?」と、わ

青いグラス

友人の山岡くん(sotto 山さん)が、 一緒に作詞した曲「青いグラス」をYouTubeに公開しました。 歌詞は、YouTubeに載っているので、見ていただけたら嬉しいです! 山岡くんとわたし山岡くん、なんて呼んでいるけれど 学年はひとつ、年齢はふたつ上の先輩です。 大学時代の軽音部の先輩で、 当時、いつも家のポストに鍵が放り込まれていて、 ダイヤル式なのに、みんなその番号を知っていて、 誰かが勝手に部屋にいる。 それが、山岡くんの部屋でした。 なぜかわたしたちの代は、ひ