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「教師」と「子ども」 よりよい関係性。

世間に「教師」のイメージを問いかけると、「真面目」、「世間知らず」などとディスられることが多いです。中でも、一番多いのは、「話が長くて面白くない。」というものです。これは、一教師として、「改善していかなくてはならない大きな問題だ!」と密かに燃えている次第ですが、なぜ教師が、「長くて面白くない話をする」生き物になってしまったのでしょう。

その原因は、「聞き手にある!」と僕はにらんでいます。

現在の管理職世代が子どもだった時。教師は、今よりも少しは、大切にされていました。「先生の話は、しっかり聞かなくてはならない!」という家庭の協力もあり、子どもたちは、無条件で話を聞いてくれました。そんな優しい世の中に現役教師だった方が、現在管理職になられています。そして、朝礼や校長講話をしているのです。当然、話を聞いていない子どもを発見すると、子どもや担任の責任とします。しかし、もう意識高い系の教師は、気付いているのです。

「子どもが話を聞いてくれないのは、話が面白くないことが原因だ。」と。

既に、どんな話をしても子どもたちが聞く努力をして教師に協力してくれる時代は終わりました。まずは、子どもたちの意識をこちらに向けるところから話始めなくてはいけません。すぐに授業に入るのではなく、

「元気?」「髪切った?」

などの、アイスブレイクを挟みつつ、徐々に本題に入っていく必要があります。学級経営を積みかねることで、少しずつアイスブレイクなしでも、学習へ入り込める学級が育ってきます。ただ、そこまでの道のりは、なかなか辛く険しいものがあります。何が辛いかというと、小学校教師の場合は、「授業の話が面白い先生。」のハードルを越える前に、「世間話をしていても面白い先生。」というハードルを越えておかないといけないからです。このハードル越えを達成してこそ、授業が語れるようになるのです。

「話を聞こう!」と思わせる「教師の話す技術」

ただでは話を聞かない子どもたちを目の前にして磨かれていく教師スキルが「話す技術」です。とにかく教師は、話す仕事です。しかし、小学校は、中学・高校と違い、講義型の授業は向いていません。1時間の授業の中で獲得するべき知識は、それほど多くありません。学ぶべきキーワードが3つだけの場合、ノートに3キーワードを書いた時点で試合終了。では、小学校の授業は、どんなことに時間を使っているかというと、「問題に対する自分の意見を考え」、「友達と共有」、そして、「もう一度考える」のように、獲得した知識を活用して学ぶことを重視しています。

子ども主体の話合いを目指しているのなら、なおさら「話す技術」は必要なさそうですが、そうではありません。小学校の教師は、1日のほとんどの時間を学級の子どもたちと共に過ごします。その中で、関係をづくりを進め、深めていきます。家族の次に長い時間を共有する教師の話が面白くなかったら・・・。何を言っているか意味不明だったら・・・。子どもが話を聞こうと思わなくなるのは、当然です。

では、子どもたちはどんな話に耳を傾けてくれるのでしょう。声のトーンや間など、細かい技術は、また今度書かせていただくとして、一番大切なのは、「話す内容が子どもにとって注目すべきものか。」です。簡単に言うと、「今日の授業で大切なことを話すよ!」と話を始めても、普通です。しかし、「昨日の鬼滅の刃でさ・・・。」と話を始めると、子どもたちの注意を一気に集めることができます。これは、鬼滅の刃の絶大な力も借りているという事実もありますが、

「先生は、急に何を言い出すんだ。」

と子どもたちが注目してくれたのです。そこから、話を初めて今日の学習のめあてまで進んでいきます。ここで問われるのは、鬼滅の刃から授業のめあてまで話をつなげる「教師の話す技術」なのです。

「話を聞こう!」と思わせる「教師のユーモア」

「話す技術」の具体として「ユーモア」が、とても役立ちます。

「先生、聞いて聞いて!」

とたくさんの子どもたちが、話しかけてきてくれます。そこで、話の内容を傾聴できれば、教師としては問題はないのですが、より高いレベルを目指すのであれば、子どもが「くすっ」と笑ってしまうような返答をすることが大事です。ただでさえ、年齢1桁の子どもと、普通のおっさんが話をする訳ですから、1しゃべりの中にユーモアのある返答1つや2つ準備して子どもたちを喜ばせないと「話を聞こう!」なんて思いません。「ユーモア」は、年齢差を乗り越え、心理的距離をぐっと縮めることができます。心の距離が近くなると、子どもたちが本音で話をしてくれるので、「学級の状態が子ども目線から分かる。」という良さもあります。ちなみに、僕の場合は、子どもが「本音」を言ってくれたのなら道徳的なアドバイスは後回しにします。例えば、

「〇〇ちゃんのことが嫌い。」

「◇◇くんってひどいんだよ。△△くんの悪口言ってた。」

というような教師を前にしたら話すのをためらうようなことも「そんなこと言ったらいけないよ。だって・・・。」と普通教師の対応をした瞬間に子どもは、

「もう言わない方がいいな。」

と思ってしまうに違いありません。「国語嫌だな。」とか「帰って塾か、さぼりたい。」なんていうマイナス発言も、「じゃあ明日は、1から6まで全部国語にしようかな。」とか「じゃあ帰ったら公園集合ね!サッカーボール持ってきて!」などと言いながら聞き流し、常に気を遣うことなく「思わず言ってしまえる」ような関係づくりを目指します。すると、教師が本気で対応しないといけない事案に子どもの情報から気付いたり、教師がなかなか感じることができない、子ども目線から見た学級内の力関係など、有力な情報をつかむことができるのです。

「話を聞こう!」と思わせる「趣味の共有」

自分と同じ趣味をもっている人と出会うと、急に親近感がわきますよね。特に、音楽の趣味が合う人は、本当に似たような価値観をもっていると言われています。これを利用して、子どもたちに「話を聞こう!」と思わせる関係づくりをするには、「趣味を共有」するという方法があります。今まで書いてきたように、「話の技術」と「ユーモア」を駆使するためには、一人ひとりの子どもがどのような考え方をしているのかみとり、判断して対応しなければなりません。そのために効果的なのは、子どもたちが「最近ハマっていることを聞き出す」ということです。上記に鬼滅の刃を出したのは、僕の学級で流行っているからです。子どもたちに「絶対見た方がいいから!」と、ものすごい勢いで進められたので、先週の土日で全部見ました!月曜日、学校に行って話をすると、子どもたちが盛り上がるというか、もう熱狂していました!それくらい、自分が「よい!」と思っているものを教師にシェアできたという事実は大きいのです。これから当分は、鬼滅の刃を出せば、学級の8割とは良い関係を続けていけそうです。

大切なことは、教師が子どもの立場に立って「話し方」や「話す内容」を考えていくということです。教師側の「教えたい!」という気持ちだけでは、なかなか受け取ってもらえません。子どもが受け取れるようになるまで、教師が整えてあげることが必要です。子どもとのよい関係は、よい授業にもつながることを忘れずに実践していきたいものです!

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