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みえない想いを贈るインタビュー/ソラノネイロ vol.1 【もったいないをなくしたい】古着ショップarigatamiオーナー伊藤さん


みえない想いを贈るインタビュー
ソラノネイロ vol.1


ー もったいないをなくしたい ー
とある妄想から始まった「もったいない」をなくす活動。
子どもたちの未来のため、そして ”自分を生きる時間” をもったいないものにしないためにもチャレンジし続ける arigatami オーナー 伊藤さんのインタビューです。



15年間のアパレル業界勤務を経て、大好きなファッションと「もったいないをなくしたい」という想いを融合させ、古着ショップ arigatami を立ち上げる。美容師の奥様と交代でお子さんを育てながらお店を運営し、お店、プライベート以外でも様々な「もったいない」をなくす活動にチャレンジしている。


arigatamiは滋賀県大津市、琵琶湖のほど近くに位置する瀬田の古民家で営まれている予約制の小さな古着ショップ。

「大好きな服は捨てられない」
そうして伊藤さんの自宅のクローゼットで溢れた服や、身近な人が大切にしていた服を譲り受け、新たな価値をつけて循環させる場所なのだ。

元々は商業施設を中心に全国展開するセレクトショップBean'sでショップ店員、店長、マネージャーとして働いていた伊藤さん。「服が好き」「人が好き」ただその気持ちで日々目の前の服と人と向き合い、気がつけば15年ものキャリアを積んできた。その中で結婚、育児を経験し、徐々に「暮らし」が自分の中での大切なものとして強く浮かび上がることに気が付き、お子さんの進学に合わせて退職。家族との暮らしを大切にできる土日休みの工場で働くことを決めた。
それが伊藤さんにとっての大きな転機となった。



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工場では毎日同じ作業を繰り返し、今までのようにたくさんの人と関わることが減り、頭を使うことも減り、ただ手だけを動かす日々。楽しくないわけではないし、苦痛でもない。けれど、ふと「このままでいいのだろうか」と考える瞬間が増えた。仕事で頭を使わない分、余白だらけの頭の中では今まで考えもしなかったことをたくさん妄想した。

「食品ロス、もっとなんとかできないかなぁ」
「手前取り、もっといい仕組みないかなぁ」
「使われていない田んぼ、なんかイベントとかで活用できないかなぁ」
「安全に相乗りできるようなヒッチハイクのアプリできないかなぁ」

そんな、日常の「もっとこうだったらいいな」をひたすら妄想し、その改善策を工場の仲間にプレゼンした。どうするわけでもなかったけれど、「それいいね!」「私も思ってた!」そう言い合えるその時間が楽しかった。

そんな中、世の中はパンデミックに見舞われた。明日自分がこの世からいなくなってしまうかもしれないということを人生で初めて強く実感した。

「明日死んで、後悔しないだろうか。」
毎日同じ作業をして、毎日ただなんとなく過ぎて行って、今日という日を何気なく消費して。これで明日死んだら、きっと後悔する。もっと自分で生きる楽しい毎日を、濃く過ごしたい。ゆっくりと日々を味わいたい。何の形にもならないただの妄想話に花を咲かせることに満足しているだけの人生なんて、嫌だ。

それから半年後、ただの妄想だったことを形にするために、まずは大好きな服からもったいないをなくそうと、ずっと夢だった古着屋を始めることを決めた。それが、arigatamiのスタートだ。

ただ、妄想話の中で最も使命感に駆られていたことは食品ロスの削減。自ら考えたアイディアを地元スーパーに直談判したこともある。けれど、「いいですね。」で終わってしまう世界に、自分一人の力がいかに無力であるかを実感した。そして、食品ロス削減だけでなく、あらゆるもったいないを広く解決しようとすることは、簡単なことではないと悟った。

「どうせなら地球全体のもったいないをこの手で、このアイディアでなくしたい!」
そんな頭のどこかにあった妄想は打ち砕かれたが、長年住んでいた瀬田の町のもったいないを、そして大好きな服のもったいないをまずはなくそうと心に決めた。


2022年6月に瀬田のアパートの一室から始まったarigatamiは、拠点を古民家の一角に移して再スタートした。

arigatamiがある古民家はcafeとshare officeも併設


当初は服やモノ、少しばかりの規格外野菜の循環だけがそこでは生まれていたが、今ではそれだけの場所ではなくなった。
お店のお客様から繋がる人、古民家を行き交う人、町のマルシェやイベントで出会う人、SNSを通じて知り合う人、アパレル時代に親交があった人。それぞれがそれぞれに想いを形にしていく過程を間近で見る機会が増え、少しずつ広がる輪から生まれた誰かの「困った」を助けたいという想いが芽生え始めた。
そしてそこからどんどん湧いてくる改善の妄想を描いては、まずは自分一人でできる範囲で「助けよう」とチャレンジをしていく。「もったいないをなくしたい」想いがある誰かの「困った」を、なくしたい。その気持ちで活動の輪を広げている。

お子さんと琵琶湖のゴミ拾いにも参加


こんな風にやりたいことは次から次へと溢れてくるが、活動の全ての根源は「もったいないをなくしたい」であり、そしてこれら全ては子どもたちの未来の当たり前のための活動なのだ。
「モノは簡単に捨てない。あたりまえだろ?」
そんなやさしい未来のための小さなきっかけをつくっていきたい。

なぜその考えになったのかはよくわからない。昔おばあちゃんがよく言っていたからなのかもしれない。けれど、今叫ばれているSDGsやサステナブルに影響されたからということではなく、自分のど真ん中からの叫びに耳を傾け、それを叶えただけなのだ。

そんな毎日はとてもゆっくりと流れている。自分の魂の声に従った活動を行い、また一方では大切な家族との時間を楽しむ。明日死んでも後悔しない、自分を目一杯生きる毎日だ。


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今後も、arigatamiを拠点とした活動の中での人との繋がりから生まれるアイディアを元に、瀬田の「もったいない」をなくす活動を続けていきたいと話す伊藤さん。
プライベートでは古着で愛犬の服を作ることにハマっているそうで、そういった趣味からアップサイクルの活動につなげていきたいと言う。その一環で、廃木をキャンバスに使って絵を描くことにも今後チャレンジするそうだ。

「今あるものをそのままの形で価値をつけるだけでなく、加工して更なる価値にすることにチャレンジしていきたい。全てはやりたい順。魂順で、なんでもチャレンジしていく。」

伊藤さんの中で秘められている壮大な世界観が、これから少しずつ静かに燃える魂の炎によって炙り出されていくのだろう。


arigatami
滋賀県大津市瀬田2丁目11-30
駐車場:滋賀県大津市瀬田3丁目1-44付近
営業日:水曜日・不定休(営業日以外は予約制)
Instagram  (ご予約はDMにて)

(2022年10月21日 kato erika)

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