ビタミンちくわはツレナイやつ
私は埼玉県民である。
スーパーが点在し、コンビニもあり、徒歩圏内である程度の食べ物や日用品を揃えることができる。大変ありがたい環境下で暮らしていると自負してはいるが、そんな埼玉の暮らしに100%満足しているかと問われれば、そこは「否」と答えなければならない。
例えば、エコバックをぶら下げて買い物に行く。
そろそろ寒くなってきたから、おでんもいいねぇ、などと思いながら、練り物売り場に立ち寄る。さつま揚げ、はんぺん、ゴボウ巻き、馴染みのおでん種に視線を送り、チラリとちくわを見る。ちくわがある。確かにあるのだが、そこには
「ビタミンちくわ」がない!!
のである。
おそらく北陸地方、長野県民の皆さんが聞いたら、驚かれるかもしれないが、関東のスーパーにビタミンちくわはない。おそらく関西にもないだろう。ビタミンちくわのビの字もないちくわ売り場が存在しているなんて、北陸地方や長野県民の皆さんには信じがたいことだと思う。
とはいうものの、私も東京都出身。ビタミンちくわを知らずに育った人間だ。
そんな私にビタミンちくわを教えたのは、他でもない夫である。夫は、北信地域とつながりが深い、新潟県上越地方の出身で、夫の地元のスーパーには当然のようにビタミンちくわが並んでいる。
普通のちくわと何が違うの?
そう思われる方もいらっしゃるかもしれないが、何よりも噛んだときの歯切れが違う。普通のちくわはシコシコして、歯に当たると跳ね返るようなモキュモキュした感触があるが、ビタミンちくわは歯の当たりがやさしく、しっとりしているのだ。
このしっとり感がいい。
一度口にしてからというもの、私はすっかりビタミンちくわに魅了されてしまった。夫婦で北陸や長野に出掛けた際には、必ずスーパーに立ち寄り、ビタミンちくわを大量購入している。
買って帰った最初の一本目は、そのままマヨネーズをつけて、ひたすらワシワシかじり、食感を堪能する。そうしてから、様々な調理法でビタミンちくわを楽しむのである。
最近は、切ったビタミンちくわを明太マヨネーズで和えて、焼海苔を散らしただけのものや、輪切りにしたビタミンちくわをマヨネーズで炒め、青のりで和えた、なんちゃって磯辺揚げ(揚げてない)をお酒のつまみにしている。
ちくわは、マヨネーズで和えるか炒めるかすれば、あとは青海苔、焼海苔、おかか、胡麻、七味唐辛子。どれを合わせても、それなりに美味しい。
こうして食べていると、練り物にはマヨネーズは合う、ということがよくわかる。普段、さほどマヨネーズを消費しないのだが、ビタミンちくわを大量購入したときは、マヨネーズの減りが早い気がする。
その他にも、干し大根とビタミンちくわをめんつゆで炒め煮しただけのものに、七味を散らして食べたりするのも、素朴でなかなか美味しいものだ。
でもなぜか、ビタミンちくわでないと、ここまでして食べる気にならない。普通のちくわでは、調理するテンションが上がらず、作ってもせいぜいおでん止まりなのだ。やはり、ビタミンちくわだからこそ、あれこれ調理して食べようと思うらしい。
我が家では、ビタミンちくわのことを
「ビタちく」
そう親しみを込めて呼んでいる。こんなにも親しみを込めているのに、埼玉のスーパーでは入手できない。なぜ、メーカーは、このビタミンちくわを全国展開してくれないのだろう。
私は親友だと思って、ビタちくと付き合っているのに、向こうは北陸や長野とばかり仲良くして、こっちには見向きもしてくれない。
ビタミンちくわは、実にツレナイやつなのである。
↑北陸、長野、新潟に行くと、本当にこれくらいたくさん売り場にあります。
↓体操もあります。