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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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#食べ物

長芋はいいヤツだ

 私は生で長芋や大和芋が食べられない。  納豆は好きなので、あのぬるぬるした感触が苦手なわけではない。残念なことに、私はぬるぬる系の芋を食べると、手や唇が痒くなる体質なのだ。だから私がぬるぬる系の芋を食べるときは、焼いたり、揚げたりすることが多い。  それに引き換え夫は、ぬるぬる系の芋が大好物だ。納豆やねかぶ、とろろ昆布なども好きなので、おそらくぬるぬるした食べ物は大抵、好物なのだと思う。  自分が食べられなくても、家族の好物となれば、やはり買い物かごに入れてしまうものだ

【お】問題について考える

丁寧に【お】をつける時がある。 例えば職場で 「佐藤さん、2番にお電話です」 などは普通に使う。 こういう時にサラリと使う【お】は丁寧さがあり上品なものだ。 しかし、こうなるとどうであろうか。 「この、お醤油味のおソースは、お豆腐はもちろんのこと、 焼いたおナスや、お大根のサラダにも、とても良く合います。 今夜のおビールや、お酒のお供にいかがでしょうか」 途端に鬱陶しい。上品ぶってんなぁーと、思わず悪い顔をしてしまう。 以前、料理番組を見ていて、ありとあらゆる食材の頭に

本日、おでん千秋楽

 よし! おでんだ! 私は力強く宣言した。  その日私が、おでんを作ろうと思い立ったのには訳がある。この冬最後の冷え込みになるという天気予報。飲みたいと思っていた日本酒を口開けしたこと。そろそろ自家製めんつゆを作りたいと思っていたこと。以上の3つだ。  おでんというものは、寒い時に食べたい。北海道民でもないのに、 「しばれるねぇー」  などと口をついて出てしまう時に食べたい。 「この冬最後の冷え込みになるでしょう」  そんなニュースが聞こえてくると、もうこれで今シーズン

祖母とチャーハンと私

 小学生の頃、私は祖母が苦手だった。  自分は、祖母にあまり愛されていない、そう感じていた。  私には姉がいるのだが、何よりも祖母は、この姉が可愛くて仕方がなく、その愛情の熱量には、かなりの温度差があった。  母は週に1度、金曜日に、仕事で家を留守にしていた。そのときは祖母が自宅にやってきて、私や姉の面倒を見てくれる。小学1年生の頃の私にとって、金曜日は、とても気が重いものだった。  私が帰ってきても、姉じゃないとわかると、露骨にがっかりされ、姉だと、まるで猫でも帰ってき

世界平和はサッポロ一番から

 ポロイチ、という言葉を知ったのは、つい先日のことである。  最初は、ポロシャツを偏愛している人たちが、 「ポロシャツが一番好き」  という意味の言葉を発する時、略して 「やっぱ、ポロイチだわ」  みたいな感じで使っているのかと思ったが、全く違っていた。  どうやら、このポロイチ、かの有名インスタント袋麺サッポロ一番の略らしいのだ。若者の間で広まっているのだろうか。  どの世代でポロイチという言葉が一般化しているのかわからないが、 「ポロイチの塩」  「ポロイチのしょう

ポップコーン被害に遭わないために

詐欺被害の手口は、年々巧妙化している。 相手も騙してやろう、という気でやってくるので、 それはそれは、入念な準備をしてくる。 その世の中うまい話はない、と言うが、 たまにうまい話で、うまくいっている人の話などを耳にしてしまうと、 いずれは自分も!という気がしてきて危ない。 ポップコーンの手口も年々巧妙化している。 私が子供の頃には、ポップコーンは、塩味一択。 大変潔いものだった。 しかし近年は、甘いキャラメル味のポップコーンなども登場し、 うまい話に飛びついた人々が、行列を

たまご寿司からの解放

暖かくなれば、そろそろミモザの花の季節になる。 アカシアともいうらしい。 緑色の茎から、小さな黄色い花が綿のように咲き、 春のやわらかな暖かさを、目から感じる、可愛らしい花だ。 私はこのミモザを道で見かけると、うっとり、思わず目を細めてしまう。 このミモザ、オムレツの色にそっくりなのだ。 オムレツ色の花は、私に否応なく卵料理を連想させる。 あー、タマゴサンド食べたい。じゃがいも入れたオムレツもいいな。 だし巻き卵で日本酒で一杯もオツだし、 まだ小寒いから、かきたまうどん

サイコパスな餅

ある日、餅を食べる私に向かって、母がこう言った。 「慌てずにゆっくり食べなさいよ。お餅で死ぬ人だっているんだから」 青天の霹靂とはまさにこのことで、 当時、10歳に満たない子供であった私は、餅で人が死ぬという事実に 驚きを通り越して恐怖を感じた。母に理由を聞くと、 「喉につまらせて息できなくなって死んじゃうのよ。 口開けて、掃除機で餅を吸い取って助かった人もいるらしいけどね。 苦しいわよ、絶対。だから、よく噛んで飲み込まないと危ないのよ」 一度は母の冗談かと疑ってみた

おにぎり文明開化

おにぎりで好きな具はなにか。 といった類の話をするのが大好きだ。 おにぎりは、かつては家庭の味であったが、 近年では、コンビニで気軽に買える食べ物となった。 商品として店に並ぶようになると、どれを買うか決める必要がある。 そうなると、おのずと、自分はどの具が好きか、 ということを、考えるわけだ。 鮭か、明太子か、昆布か、考えるだけで楽しい。 今では当たり前となった具も、かつては異端だった。 私にとって、おにぎり文明開化が起こったのは、中学生の頃のこと。 その頃、私の姉は

551蓬莱は人の心を乱す

551蓬莱 この名前を聞いただけで、私は自動的におなかを空かせることができる。 今、まさに空いてきている。551、恐ろしい。 551といえば、豚まん。 大変美味しく、ホッカホカのフッカフカだ。 エビ焼売、焼き餃子、甘酢肉団子、ちまき、夏場はアイスキャンデー。 温かいものから冷たいものまで、551の食の征服は止まらない。 しかし、私は断然、肉焼売だ。 関西にお住まいの方には信じられないかもしれないが、 東京近県のデパートで551が実演販売しようものなら それはそれはすごい大行

にゅうめんを食べて後悔したことがない

私はにゅうめんを食べて後悔したことがない。 皆さんご経験ありませんか? 一人で何か食べようと思って、作って食べてみたは良いけれど、 やっぱりあれにすればよかったなぁー、と思うこと。 私はあります。たまにやってしまうんですよ。 そういう時の食事は、本当に残念な気持ちになりますね。 あれが食べたいと思っても、都合よく家にあるわけでもないし、 何か食べたいけど、何食べていいかわからない時もある。 ただ、にゅうめんだけは、そんなぼんやりした気持ちで作っても、 食べた後、「あー、にゅ

ロールちゃんが消えた!

ロールちゃんをご存知ですか? 山崎製パンが販売している、ながーいロールケーキのことです。 うさぎのキャラクターが可愛くて、なんだかとっても美味しそう。 スーパーでたまに見かけていて、気にはなっていた。 気にはなっていたが、手には取らずに今までやってきた。 しかし、先日、ようやく手に取りレジに向かうことになった。 特売だったのである。 いつも大荷物で買い物に行く我が身としては、 この、いかにもやわらかそうな食べ物を手に帰宅するのは、 なかなかの緊張感があった。潰れないように

みかんの通信簿

一年ぶりにみかんを食べた。 みかんの良さは、刃物を使わず、自分の手で剥けるところにある。 しかも、持ち運ぶのに、容器もラップも何もいらない。 ただ、カバンに入れてしまえばいいのだ。 この簡便さは、みかんをおいて他にない。 と、言いたいところだったが、 テーブルに置いてあったバナナと目が合う。 「私も、結構良いやつですよ」 確かに。 バナナに関しても語りたいことはあるのだが、また今度ね。 気の良いバナナとお別れしたところで、みかんの話である。 今日食べたみかんは、近所に植え

牛丼で死体はよみがえる

人間も、本当は冬眠をしたいのではないか、と思う時がある。 「今日、寒くない?」 と、つい口から出るようになると、人は明らかに行動が鈍くなる。 何か膜でもかかったように、頭がボーッとして、 体も鉛が入っているかのように重い。 季節の変わり目は体調を壊しやすいというが、 特に秋から冬にかけての時期はそれを感じる。 私は、アレ?と思った時は、すぐ葛根湯か補中益気湯を飲むのだが、 自分の体調の変化に気づけず、いきなりぐったりする時がある。 昨日の私がそうだった。 ホットカーペットの上