- 運営しているクリエイター
#一話完結
ナオヤクラシマに、会ったのだ。
「この掌の木片にどんな夢を見るか。
いいんだ、別に。
わからないのだろ?」
仰向けのままで薄ら笑いながら、
ぼそぼそと呟いている彼は
明らかに酔っ払っていた。
倉島直哉だ、とすぐにわかった。
この大学のシンボルである樹齢云十年の桜舞い散る中庭に、
陽の光の下で銀色に鈍く光る
でっかい鳥籠のインスタレーションを創った、
誰もが羨む才能を背負った、
あの、
ナオヤクラシマだ
ごたまぜのオレンジ 【小説】
煙草の煙をゆっくり吐き出してから、その人は云った。
「また新しい人が来たよ」
その人は小学生塾の理科の先生だった。
白衣がなぜかいつも薄汚れていて、
黒ぶちのめがねをかけていて、
ひげも生えていて、
髪もぼさぼさで、
完全におじさんだったけど、
笑うと、
その辺のいる男子と変わりがなく見えたので、
みんな、その人のことを
『リクちゃん』と呼んでいた。
「ささげはるかだよ、リクちゃん。知らない