#B-1 適応障害〜回復を加速させる7つのLIFEHACKS
こうして私は、心身の不調により休職することになりました。
私がこの状況に至るまでの経緯は、物語風にまとめましたので、よろしければ以下のリンクからご覧いただけると嬉しいです。
ここからは、私自身が体験した回復のプロセスを基に、「適応障害回復を加速させる7つのLIFEHACKS」と題して、具体的なアプローチをお伝えしたいと思います。
LIFEHACK 1: まずはクリニック受診
「そんなの当たり前じゃない?」と思うかもしれませんが、この当たり前が実はとても難しいのです。クリニック受診には、大きな2つのハードルがあります。1つは心理的ハードル、もう1つは物理的ハードルです。それぞれの対策について、順に見ていきましょう。
クリニック受診の心理的ハードル
① 社会的偏見
心の不調に対する偏見や誤解は根強く、メンタルクリニックを受診することが「弱さ」や「恥ずかしいこと」と捉えられることが少なくありません。「あの人、メンタルをやられたらしい…」といった噂話を恐れて、受診をためらうケースも多いと思います。
② 自己認識の不足
「自分はまだ大丈夫」「少し休めば回復する」と思い込んで、自身の問題が診察を要する状態であることを認められない場合もあります。私が人事部で面談をしできた経験では、仕事に対する責任感が強い方ほど、この傾向が強いように感じます。重要なプロジェクトを抱えていると、自分のケアを後回しにしてしまうのです。
他人事のように言っている私もその内のひとりでしたが・・・。
③ 診察・治療への不安
診断結果や治療方法、特に薬に対する不安は、診療を避ける理由の1つです。「薬に依存してしまうのではないか」「副作用は大丈夫だろうか」といった懸念が、受診をためらわせることがあります。また、自分の感情や苦しみを他者に話すことが恥ずかしく、抵抗を感じることもあります。
心理的ハードルを乗り越えるために
これらの心理的な障害を乗り越えるためには、いくつかのステップがあります。
1. 「弱さ」ではなく「成長の一歩」と捉える
心の問題に向き合うことは決して「弱さ」ではなく、自分自身の「成長に向けた重要なステップ」です。心の健康は体と同じようにケアが必要で、助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。
2. 小さなステップを踏む
いきなりクリニックを受診することに抵抗がある場合は、まずは信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう、メンタルヘルスの本を読むなど、軽いステップから始めることも有効です。
3. 匿名での相談を活用する
直接クリニックに行くのが難しい場合は、オンラインや電話相談を活用するのも一つの方法です。匿名で相談できるサービスがあるため、初めの一歩として利用するのに適しています。
大きな会社にお勤めの方は会社に「こころの相談窓口」などが設置されていることもあるでしょう。また、厚生労働省のホームページには公的な相談窓口が紹介されています。窓口は地域の保健所や保健センター、都道府県に設置されている精神保健福祉センターなどにあり、こころの専門医の意見を聞くこともできます。本人はもちろん、家族など周囲の人も気軽に相談できる公的な窓口です。地方自治体が運営しているので相談は無料(通話料はかかります)。秘密も守られますので、まずはご自身のお住まいの地域にどんな機関があるか、調べてみるのが良いと思います。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/index.html
クリニック受診の物理的ハードル
クリニックを受診する際には、物理的な障害もあります。これらを乗り越えるための工夫をご紹介します。
物理的ハードル
① クリニックの数やアクセスの悪さ
地方や郊外ではクリニックの数が限られており、通院に時間や手間がかかることがあります。また、交通機関の不便さも問題です。
② 予約の取りにくさ
人気のクリニックでは予約が取りにくく、数ヶ月に及ぶ長期間待たされることもあります。
実際、私もいくつかのクリニックで予約を取ろうとしましたが、その中の一つでは、予約が1ヶ月以上先しか空いておらず、クリニックのホームページで指定された日時に予約フォームが開放される仕組みでした。指定の日時にアクセスし、氏名や住所、症状を入力して予約送信ボタンを押した瞬間、「該当の日は予約がいっぱいになりました。別の日程で予約をお願いします」というメッセージが表示され、別の日に再度予約を試みても、すべての枠がすぐに埋まってしまうという状況でした。
まるで人気アーティストのライブチケットを取るような体験でした。
メンタルヘルスの問題は早急な対応が必要な場合が多く、予約待ちが長引くことで治療開始が遅れ、症状が悪化するリスクもあるため、このようなハードルは非常に深刻だと感じます。
③ 時間や費用の負担
定期的な通院にかかる時間や費用も、物理的なハードルです。特に忙しい仕事や家庭がある方にとって、平日に時間を作ることが難しい場合があります。
物理的ハードルを乗り越えるために
1. オンライン診療の活用
最近ではオンライン診療を行うクリニックが増えています。自宅から診療を受けられるため、時間や移動の負担が大幅に軽減されます。
2. キャンセル待ちを活用
人気クリニックでもキャンセル待ちを狙えば、早期に受診できる可能性があります。実際、私は「キャンセル待ち」を利用して、比較的早く受診することができました。
繰り返しになりますが、前述のようにメンタルクリニックは受診するまでの心理的ハードルが高いため、予約当日にキャンセルが発生することが珍しくありません。
そのキャンセル枠にうまく滑り込むことができれば、私のように早期受診が実現するかもしれません。予約がいっぱいでも諦めず、キャンセル待ちを積極的に活用することをおすすめします。
3. 支援制度を活用する
費用の負担が大きい場合は、国の「自立支援医療制度」を活用することも検討してみてください。
この制度は、精神疾患の治療を継続的に受ける必要がある方を対象に、医療費の自己負担額を軽減するためのもので、全国で実施されています。利用すると、通院や薬代の自己負担が1割に抑えられます。申請には、医師の診断書や住民票、健康保険証などが必要で、自治体の窓口で手続きを行います。対象となるのは、うつ病や統合失調症、パニック障害など、医師による治療が必要とされる精神疾患をもつ方です。詳細は自治体の窓口で確認してください。
最後に
私は休職後すぐにメンタルクリニックの予約を取り、幸運にもキャンセル待ちで早期に受診することができました。診断は「適応障害」でしたが、早めの診療と職場の理解に支えられ、回復のプロセスをスムーズに進めることができました。当時の部長や同僚、そして家族、すべてのサポートしてくれた方々には心から感謝しています。
もし、同じように心の不調に悩んでいる方がいるなら、どうか早めに行動してみてください。専門家のサポートを受けることは、私たちにとって、回復への大切な一歩となるはずです。