「文化資本」こそが人を豊かにし、成長させる

あなたの階級を決める3つの資本

経済学者 ジョン・メイナード・ケインズは、1930年代初頭に、こう断言しました。

産業が発達するペースから考えて、2030年には人々は1日3時間働くだけで暮らせるようになり、残りの時間は、芸術、文化、形而上学的な考察など、本当に重要なことに時間を費やすようになる

それから、90年経った今、現状はどうでしょう?
パンデミックにより所得に影響が出ている場合は猶更ですが、金銭的・物質的充足に重きを置いている側面も多分にあるのではないでしょうか。

ここで、イギリス社会の階級に関する最近の興味深い分析を紹介します。

従来の階級研究は、上流階級、中流階級、労働者階級の3つに分け、中流と労働者の間を明確に線引きすることが重視されてきたが、現代はそれほど単純ではない。
他から隔絶した最上層のエリートと、何も持たない最下層のプレカリアート(不安定な無産階級)という両極の間に、単純明快に分けることができない幅広い中流層が存在するという。著者らはこの中流を、経済資本(所得・貯蓄・住宅資産)・文化資本(学歴・趣味・教養)・社会関係資本(人脈)をどのようなバランスでどのくらい所有しているのかに着目して5つに分類し、7階級の存在を明らかにした。

引用:「7つの階級 英国階級調査報告」マイク・サヴィジ


「経済資本」は、まさに金銭的・物質的充足です。そして、なかなか外出できない環境下では、「社会関係資本」の ”質” も見直されていると思います。(スケジュールを確保して、人と会うことがスタンダートになるとすると、本当に話したい相手を厳選しますよね)

そして、大変興味深いのは「文化資本」が階級を決める上で指標となったことです。

文化資本とは?その重要性って?

「文化資本」は、フランスの社会学者ピエール・ブルデューが概念を提唱しました。文化は、社会関係上の優位をもたらすことが期待できるため、「資本」の一種になると主張します。

音楽や美術などの鑑賞には、その「抽象的な価値を評価すること」が必要です。

1番売れている楽曲が良いかと言われたら、全員にとって必ずしもそうではありません。人それぞれの感性や状況に介して、評価されるわけです。
美術だってそうです。高値で落札された絵画が、1番良い絵画かと言われたら、人によって意見は異なるでしょう。

つまり、芸術の価値に絶対的なものはないのです。ある意味、自ら価値を見つけ、価値を定義していく行為なのです。ですから、そういった芸術鑑賞には、抽象的なものを捉える思考力が必要です。

では、なぜ「文化資本」が重要になるのか。
それは、抽象的なものを鑑賞する習慣が身につくことで、抽象的な物事を捉える思考能力が養われ、結果として、他者よりも理解力や洞察力が高まる可能性があるからです。

「理解力や洞察力が高い」と言われたら、その価値に気付くことは容易でしょう。ピエール・ブルデューは、「それらの力が高まることで、キャリアの成功基盤となる可能性がある」と提言しています。

抽象的な価値、そしてアートとコーチング

きっとここまで読まれた方は、「文化資本」の重要性を改めて認識されたのではないでしょうか。

実は、コーチングも文化資本と近しいところがあり、コーチングのプロセスはある意味抽象的で、偶発的であり、絶対的な価値基準を設定することが少し難しい領域です。特に、完全にロジカル思考のビジネスパーソンにとっては、最初は少し驚かれるかもしれません。

私は、アートの価値を自分なりに解釈することが習慣化していたため、コーチングの世界に違和感なく入れましたし、コーチングの価値を十分に感じることができました。
一方で、コンサルティングファームで働いている視点からコーチングを見ると、プロセスや成果がもっとわかりやすいものであってほしい、と考える人は多いだろうなと感じます。

そんな私が感じるのは、「抽象的な価値」と「具体的な価値」の両方を理解できることが大切なのではないかということです。

そりゃあ、価値をたくさん感じられた方が豊かになるじゃないですか!どちらかしか見えていなければ、単純に半分の価値は見えていないわけです。

もし、抽象的な価値をこれから見ていきたいという方は、是非、音楽や美術などの芸術を深く鑑賞してください!このnoteでも、様々な視点からのアートの見方について今後も記していきたいと思います。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!




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