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⑤ 運動をはじめたら、痩せはしだしたが

 運動をしはじめて、3ヶ月が経ち、なんとなく筋肉がついたようだった。

 そして5ヶ月も過ぎると、人に会うと「痩せたね」と言われるようになったし、自分でも腹の肉等をつかんで、「痩せたかも」と思うことが増えた。試しに、今まで買ってはみたものの着られなかった服を身に着けると、入った。

 引き換えに、それまで身につけた服が、ダボダボになり、襟ぐりからブラジャーのヒモが見えたり、だらしない感じになったり、スカートがずり落ちることがあり、それらは容赦なく、捨てていった。
 痩せたのは、嬉しかった。

 けれど同時に、ある日、ふと布団の上で片膝を降り、気づいた。

 ……皮がぶよんとしている。

 ダイエットで脂肪が落ちたのはいいけれど、50過ぎて代謝が落ちて老化まっしぐらの肉体は、収縮しないのだ。
 30代で、3ヶ月で10キロ落とした際には、こんなことはなかった。ちゃんと皮も収縮した……気がする。
 痩せたはいいけれど、太ももの皮がびよんとしている。肉割れもあるし、びよんとしていて、なかなかみっともない。
 これじゃあ痩せても、セクシーな水着やらは無理だ……とは思ったが、そんな予定も願望もないので、まあ、別に、しゃあない。
 もしそんな機会があったときのために(ないけど)と、美容整形で、皮をどうにかする手術のことも調べたが、ちょっと私には無理な金額だった。お金のある芸能人とかなら、やるんだろうけれど、貯金がとんでしまう。
 人に見せるもんでもないから、いいか……と、おばさんの武器である開き直りで、自分を納得させた。

 年をとって減量すると、体重が落ちにくいだけではなく、落としたら落としたで皮膚が戻らないということがあるんだなと、身をもって知った。
 一応、潤いを持たそうと、ニベアやら妊娠線クリームやらを、思い出したときに塗り込んでるぐらいだが、ほとんど気休めだ。

  腹のほうは、肉割れはあれど、太ももほどびよんとはしていない。
 これはもしかして、腹筋してるからかな? とも思った。ならばやはり筋トレしてよかった。

 ときどきダイエット広告で、「運動無しで、食事だけで痩せられます」というのは見かけるし、私のような運動嫌いは、それに飛びつきそうになる。 
 けれど50歳過ぎた、もう立派なおばさんが、「食事だけ」で痩せると、余った皮膚が元に戻らずだらんとなってしまい、それを食い止めるんのは、運動しかないのではないかと、身を持って実感している。
 やっぱり運動やってて正解だ、これからも続けていくしかないと、ふともものだらりんとした皮膚をつかみながら、毎日考えている。

  ときどき、「病気のせいで痩せたのか」と、心配してくれる人もいる。
 病気のせいっちゃ、せいだ。病気が無ければ、頑張ってないし、ダイエットも続かなかっただろう。

 正直、現時点では、まだBMIは「肥満」の領域ではあるし、体脂肪率も高い。
 太ももにも二の腕にも背中にも、特に腹にたぷんと肉はついている。
 あと、10キロは落とさないといけない。
 痩せたとは言っても、現時点では体重を公開する勇気がない。

 デブはデブのままだ。

 

病院のベッドから窓の外を眺める。

 でもだからと言って、「スリムな人」になりたいとも思っていないのだ。この年で痩せると、皮膚があまるのもわかったし、老けて見える。
 特に顔の肉が落ちると、ほうれい線やらいろいろ露わになる。
 個人的な好みとしても、スリムよりも、ムチムチした女性のほうが好きだ。

 わりと世の中では、痩せている=美人と思われるから、女性はとにかく痩せようとする。私から見て「普通だよ」という女の子が、必死に体重を落とそうとしている。
 生理が止まるほどに痩せているのに、それを良しとしている人などとか、身体が心配になる。

  痩せ=美人という価値感は、根強い。
 特に人前に出ている女の子は、平均値であるのに、「デブだから痩せろ」と言われたりもしている。

 私だとて、太っている=モテないで、ずいぶん劣等感を肥大させ苦しんでもきた。ただ50歳を過ぎると、若い頃に振り回された「モテ」を、手放しもできる。生きてるだけで精一杯で、モテどころでもなくなる。何より、「モテ」、つまり、不特定多数の男性に興味を抱かれるのは、めんどくさいというのにも気づく。
 だいぶ「モテ」の呪縛からは逃れられたようだ。

  ちょいぽちゃぐらいがいいと、思っている。
 今は昔と違って、服のサイズの幅も広がり、ちょいぽちゃで着られる服も増えたから、困らない。

 それでも「痩せた女」第一主義で、デブだのブタだのなんやかんや言ってくるヤツはいるかもしれないけれど、どうでもいい。

 ということで、あと一年、いや、それ以上かかるかもしれないけれど、あと10キロ痩せて「ちょいぽちゃ」目指している。



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