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”好き”が無い彼氏からの手紙

先日、誕生日を迎えた私は彼氏にお祝いをしてもらいました。

「なんか恥ずかしいから」と、いつもプレゼントの袋の下に手紙を隠しておく彼氏。

今回も、気づかずに袋を捨ててしまう前に、袋の底の厚紙をめくりました。

しかし、今回は明らかにない。

何度も無言で厚紙をめくる私に気がついたのか、彼は「ごめん、お手紙も渡そうと思ったんだけれど、長過ぎてまとめられなかった。」と言ってきました。

(いやいや書き終えろよ)、と思う反面、(巻物レベルで私への愛を語ってくれたのか)、と嬉しくなってしまいました。

手紙を受け取れたのはその2日後、次に会った日でした。

誕生日とか記念日とか、友達とか恋人とかに送る手紙って、横型で装飾が保護されたLOFTとかで売っているような便箋に入っているイメージでした。実際今までそうでした。

でも今回は、長細い真っ白な封筒に入っていました。お年玉とかを入れるような、でも全く無地の袋です。

袋から既に、なんか異質な雰囲気を感じていました。

そして、中を開けてみると4枚の紙が。

4枚の手紙と聞くと、普段なら「長すぎる!」と思うのですが、彼は手紙が長過ぎてまとめられずに誕生日に間に合わなかったので、それを考えると「あれ?こんなけ?」という感じ。

とにかく、お預けされていた手紙を早く読み始めました。

集中して読むために、洗濯機は一時停止して、部屋もきれいに片付けてから読み始めました。

手紙が4枚と(状況を考えたら)少ない理由は冒頭で早速わかります。

この手紙は誕生日の次の日に書いています、とあるのです。

遅れた分まとまるように努力するとあったので、あまりにもまとまりのなかった手紙を書き直して4枚に納めたのでしょう。

あとは、前回の私の誕生日から今回の誕生日までを振り返りが続くのですが、不思議なことに読んでいる間に”恥ずかしさ”を感じませんでした。

恋人からの手紙って、普段言ってくれないような甘い言葉が並んでいて、”好き”と改めて告白されるような手紙を勝手に想像していました。

しかし、今回の彼氏からの手紙には”好き”というワードが1回も出てこない。

しかし4枚もあるので、”最後の方に隠されているかもしれない”と思い、読みすすめます。

すると、3ページに差し掛かったところで異変がありました。

二人で初めてバーに行った時のことが書かれてありました。

これまでとは打って変わって、バーの値段から雰囲気まで事細かやに描写されており、いかにも”ここに思いを込めました”と分かるのでした。

私も気持ちを引き締めて読むと、バーではっきりと気がついた私の尊敬している所について書かれてありました。その描写は最後のページである4枚目まで及びます。

バーで私が語った恩師の話。なぜか彼氏はその話を聞いて泣いていました。

その理由が手紙で明かされます。私の、人の優しさを受け止めうことができる真っ直ぐさをはっきりと見た、そして、それを受け取っていながら応えきれていない自分がいた、だから涙した、と。

バーではっきりと気づいたことをイントロダクションにして、そこからは私の”真っ直ぐさ”に対する思いが書かれてありました。

”好き”を求めていた私ですが、”好き”は根拠がない感覚的・直感的な気持ちで、なにをきっかけに小さくなっていくかは分からない。

しかし彼は、好きを育てた先にある、あるいは、”好き”と共存して”好き”を強くする、”尊敬”を私に対して抱いていてくれました。

”好き”と書かれていたら、その場では嬉しかったに違いありません。でも、1ヶ月後には、あるいはもっと短く次の日には、「もう好きじゃなくなったかも」と、彼の”好き”の消滅を疑うようになっていたかもしれません。

しかし、”尊敬”されている私の要素はずっと残ります。これから先、私の武器として私を支え続けてくれます。「自分にはこんな尊敬される所がある!」と。

私が思っていた以上に、彼は私に対して高次的な感情を抱いてくれており、それが私を一時的ではなく、長期的に力強くしてくれると感じました。

ドキドキはしなかった誕生日の手紙でした。

でも、ずっと私を支える何かと、安心感を感じ続けた手紙でした。

もし今後、別れてしまうようなことがあっても、私の武器として私を守ってくれる手紙をもらえて幸せでした。

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