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暴れ馬と、ニンジンと、それから私。

「はな、なに生き急いでるの」

私が「私っていま、できる女?😎」ってマルチタスクでアレコレやってると、だいたい母はこう言ってきた。

「生き急いでる」

とは、言い得て妙でさすが我が母。
しかし悲しいことに、「生き急いでる」間は自分に自分が生き急いでいる自覚はない。

ガソリンがつきて、ふと我に返った時に気づく。「私、生き急いでたな」って。

なにしろ私は「できる女」などでも「スーパーウーマン」などでもない、平々凡々の普通の女。いや、せっかちで慌てん坊でそそっかしくて、心に暴れ馬が住んでいるいう点では、平々凡々を名乗るのも烏滸がましい。がっつり平凡以下である。

私の心のなかにいる暴れ馬さんは、本当に厄介で、私の頭が働かなくなるとあっという間に私を支配する。

まさしくやりたい放題。

今これをやりたい!
あっ、そうだ!
これやろうと思ってたんだった!
あれもしたいこれもしたい!

ひひーん!

暴れ馬さんを姨捨山に遺棄することも考えたが、どうやらそれはできないらしい。観念して以来、どうコイツを乗りこなすかに心血を注いできた。

具体的には、徹底したタスク管理と、プランニングである。

ニンジンの配分を事前に決めて、少しずつ少しずつ、心のお馬さんを走らせる。

普段ならそれで大抵のことはなんとかやっていけるようになってきたが、問題は、その制御の全てを司るのは私の頭であるということだ。

環境が新しくなったとき、突発的な出来事が起きたとき、ものすごーーーく魅力的な「ニンジン」が大量に与えられたとき、私の頭と心はパニックを起こす。

騎手が混乱しているあいだに、それまでいい子にちまちまニンジン食ってたお馬さんは、いっぺんに元の暴れ馬へと変貌を遂げる。

気づいた時にはもう遅い。

曲がりきれなくなってコーナーの壁をぶち破るまで、止まることはできない。

どーん!と、大事故を起こして、天を仰ぐ私を覗き込むのは、母である。

「はな、なに生き急いでるの」

お母さん、私また気づかなかったよ。ははは。

コツコツ、少しずつ、がめちゃくちゃ苦手。
本当は、すっごく、苦手。

駆け抜けたい。
走り抜きたい。

そうして、パンパンに詰め込んで、なんのゆとりもない状態になった私は、顔面から思い切りすっ転んだ。私は、暴れ馬にいいようにされていたのだ。

子どもたちを育てることは、目の前の一瞬を大事にすることだ。

働きながら乳幼児を育てることは、とにかく目の前の一歩をしっかりどっしり、進めていくことだ。

わかってたけど、わかってなかった。

「トレードオフ」という言葉、知ってたけど、すっかり忘れてて、実際に働き出して、今になってようやく身にしみる。

なにかを得るには、なにかを差し出さないといけない。

なにを大事にする?
いま目の前の、どれを選び取る?

久々に息子2人と一緒に、時間を気にしないで、家事も気にしないで、ギャハハ〜って笑い合いながら過ごした昨日の夜。

そういう時間でいい気がする。とにかく今は、目の前の、この瞬間の笑顔で、いい気がするよ。

私の中のお馬さんよ、いいようにはさせないぜ。

またここから、一歩一歩だ!
ひひーん!




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