大好きな場所に新しい思い出が増えると、もっともっと好きになるね。
好きな場所は、夕方の土手。
悩み事があるとき、1人でぼーっとしたいとき、自転車で土手まで行って、川辺に腰を下ろす。
昼から夜に移り変わっていくグラデーションの空を見ながら、明日に思いを馳せた。
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「もう歩けない…」
土手まで散歩にきた長男が、その場に座り込む。ほぼ初めて土手にやってきた長男は、物珍しさにあちこち探索。ゆうにバスの停留所1.5つ分は歩いたり走ったりしていた。
草はらには、
つくしがニョキニョキ生えていました。
春〜
まぁ、そりゃそうよね。と、背中を貸す。
私の背中におぶさった3歳半の長男は、水を得た魚の如くあれやこれやと話し出した。
「ママ!あっちいってみて!」
「あれはなに?!」
「ママ、ママ、もっとはやく!走って!」
14kgをおんぶしながら走るのか……転んだらどうしよう……(最近やたらと転ぶのです……)と一瞬渋ると、長男はギュッと背中にしがみついてきた。
「ほら、これで走りやすいでしょう」
なにそれ〜と言いながらも、確かになんだか安定していて、走りやすそうだ。
「じゃあ、その線まで走ろう。それっ!」
しっかり長男をホールドして走り出すと、背後から高らかな笑い声が飛んできた。
「あはははは!ママすごい、はやーい!」
「はははは、そうでしょう、はやいはやい!しっかり捕まっててね」
長男をおんぶしながら、2人して大笑いしながら、夕方の土手を走る。
「「あははははは!」」
ゆるやかに流れる川と夕方の空に包まれながら、青春恋愛マンガさながらに親子で土手を駆け抜けた。
ああ、あのあたり。10年前、夫からの告白を受けるか悩んだ草原だ。
「ママ、ずいぶん遠くまで来ちゃったねぇ。遠くまで、2人で来ちゃったねぇ」
私の背中にしがみついた長男は、はずんだ声で語りかける。
「そうだねぇ。思ったより、遠くまで来ちゃったねぇ」
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好きな場所は、夕方の土手だ。
悩み事があるとき、1人でぼーっとしたいとき、自転車で土手まで行って、川辺に腰を下ろす。
そんな大好きな場所に、今日もうひとつ、好きな理由が増えた。
幼い長男と一緒に、笑いながら走った景色のことを、きっと私はずっと忘れないだろう。
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