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なぜ登山道整備の事業化を考えたのか

東日本を中心に久しぶりにまとまった雪になりました。
皆さまの地域は大丈夫だったでしょうか?
北杜市の我が家も20センチぐらいの積雪があり、子どもたちの学校も休校となったので、朝から雪かきやらかまくら作りをしていましたw

さて今回からしばらくは、いま私が一番力を入れて取り組んでいる「登山道整備」のことについて書いていきたいと思います。昨今、大変関心が高くなっている登山道の問題。昨年共同通信社発信で、「国立公園の歩道の5割が管理者不在」と、地方紙を中心に一面トップで大きく新聞にも取り上げられたこともあり、関心を持って下さった方も多いと思います。

こちらの報道の元データは、環境省から公表されています。https://www.env.go.jp/content/000177042.pdf

いまは一般社団法人北杜山守隊を立ち上げ、登山道整備の最前線で活動し、登山道整備を事業化していくことに力を入れています。
しかしまだ、取り組みを始めて数年しか経っていません。

今回は私自身がなぜこの分野に興味を持ち、なぜいま全力を傾けているのかについて書いていきたいと思います。


○そもそも、登山道の維持管理には全く関心がなかった

こんな偉そうなことを書いていますが、私自身は登山道の維持管理については全く関心のない人間でした。40歳の頃までは自分の活動が中心で、登山道が荒れていても「荒れているなあ、整備しないのかなあ」と他人事。そもそも「荒れている」と感じたこともなかったかもしれません。
それぐらい「無関心」な人間でした。そのあたり、山小屋の運営を始める前のことは過去のnoteにも書いていますので、ぜひ読んでいただきたいです。

2017年に北杜市の指定管理施設である七丈小屋の管理運営を始めて、一番最初に取り組んだことが「利用者を増やすこと」でした。安定的な運営をするためには、たくさん利用してお金を落としてもらうしかない。そのためにはSNSを活用してたくさん情報を出し、小屋を利用したツアーなども行いつつ、登山口までの二次交通も整備していったりと、様々な打ち出しを継続し、とにかくたくさん人が来ることが正しいと思って取り組んでいました。
このあたりの過去のnoteにまとめました。

○当事者になって危機感を覚えた

おかげさまで、運営を始めた2017年(情報発信開始)→2018年(自社ツアー、タクシープラン開始)→2019年(自社ツアー、タクシープラン継続)と利用者は順調に伸びていきました。
しかし一方で、小屋への行き来で登山道が徐々に荒れてきていることに気づき始めます。

倒木処理や笹刈りは、先代の管理人さんから教わりながら何とかこなしていました。登山者が通りやすいように維持することはある程度できていたと思います。

黒戸尾根での笹刈り作業。現場は登山口から標高差1000m。

しかし気になったことは、段差が徐々に大きくなっていくことや、道の脇に新しい踏み跡ができて、その道が常態化して植生が失われていくことでした。

今となっては、この原因が「雨水による侵食」であるとか、登山者による「登山道の複線化」だと言うことができますが、当時はなぜこんなことが起こるのか知りもしなかったし、状況がどんどん悪くなっていく登山道に対して、技術的に為す術がない自分がいました。

踏圧(登山者の踏む力)と雨水による影響で徐々に侵食が広がる

当時は黒戸尾根登山道整備委託という名目で、北杜市からの予算が会社に支払われていました。その額、なんと年間30万円。しかしこれが多いのか少ないのかさえもわかりませんでした。なぜかと言うと、「登山道は山小屋が管理するものである」という思い込みがあったからです。山小屋の運営の収益を登山道に還元する。そういうものだと思っていました。

ところが山小屋を始めてみて気付いたことがありました。
それは規模が小さく、多くの従業員数を雇用できない七丈小屋のような山小屋で、しっかりと集客をして山小屋を運営し、空いた時間に登山道の整備を行うなんて不可能であるということです。

実際問題として朝早くから消灯まで、何とかやりくりして小屋を回すことが精一杯でした。小屋までの登山は必ず歩荷をしていましたし、何とか下山中に少しだけ整備作業をするぐらいでした。実際に笹刈りは歩荷の負荷を減らして草刈り機を一番上の現場まで持ち上げて(標高差1200m)、下山しながら何日かに分けて作業をするというものでした。

こんなことを続けていたら、いくら体力自慢でも体が持たない。そうこうしているうちにどんどん侵食が広がっていく。。。本当にどうしていいのか、何もできない自分に腹立たしい日々を送っていました。

○台風19号が一気に被害を拡大

2019年10月12日。南アルプスに甚大な被害をもたらした台風19号。
市内全域に避難勧告が出ました。
当時は七丈小屋にいましたが、とにかく一晩中風雨が酷く、本当に怖かったことを覚えています。

台風の接近に伴って、気圧がどんどん低下していった

翌朝、台風は通り過ぎました。
私は七丈小屋から頂上までの登山道をチェックしに行きましたが、大きな被害はなく、ほっとしたのを覚えています。
しかし下山しながら登山道をチェックしていたスタッフから、ショッキングな報告がありました。五合目の地面が完全に抜けていたのです。

完全に地面が抜けた五合目のハシゴ

これだけではなく、道中のいたるところで倒木があり、登山道が激しく侵食してしまった場所も多数確認できました。

根こそぎ倒れた大木
土砂が流失した登山道

この状況を目の当たりにして、このままではこの登山道はもう使えなるかもしれないという強い危機感を覚えました。そして山小屋の利用者を増やすことばかり考えていて、登山道を保全するということに対して真剣に向き合っていなかったことに大反省しました。

魅力的な山や登山道があるからこそ、そこに登山者は集まります。
そのためには持続的に登山道の維持管理を行い、魅力的な登山道をいつまでも保っていく必要があります。そんな当たり前のことにようやく気付きました。ではどうやったら持続的に登山道の維持管理を行うことができるのか。そこから本当に本当に真剣に考え続けました。

今回はここまでにします。
最後までお付き合いありがとうございました。
次回も登山道整備の話題を続けます!!


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