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ロバマン 68歳の暴走する正義

吉村公三(吉田照美)68歳は怒っていた。
割り込み、ポイ捨て、セクハラ、パワハラ、政治、この世の悪に怒っていた。
そんな吉村の、ささやかな抵抗は吉田照美(別人が演じている)のラジオのコーナーに「一喝してやった!!」と、はがきを送ること。
パーソナリティの吉田照美に褒めてもらった回を録音をして何回も聞いていた。
ある時、ロバート星人と名乗るロバ面の宇宙人から特殊能力を与えられロバマンに変身できるようになる。
ロバマンになった吉村は、自分が食べたかった限定ラーメンの列に割り込んできた男(村上一成選手がゲスト出演)をボコボコにする。
ロバマンは超人的な力で悪事を察知、ポイ捨ても、セクハラ、パワハラ、クレーマー、政治家も己の正義で拳で裁く。
一方、ロバマンのやり方は「やりすぎ」と世の中は賛否が分かれてしまう。
ふざけたタイトルの割に、正義とは何かと考えさせられる映画。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09Q2LM636/ref=atv_dp_amz_c_Z0r2A3_1_5

あんな奴、ひどい目に合えばよい。いつかバチがあたるに違いない。
人の迷惑を考えない奴に、そう思ってしまう人が多いだろう。
吉田照美演じるロバマンは、そんな一方的な正義の具現化だ。
ただ、スカッとする話ではなく、はじめに正義の鉄槌を下される強面の男にも過剰とも言える暴力を振るうのよね。
演じているのが格闘家であり、プロレスラーの村上一成選手なので、ロバマンの異常な強さが引き立つ。
ロバマンは、自分が悪だと思った者を一方的な暴力で叩き伏せる。
これは、アメコミヒーローもので「ヒーローの暴力は肯定していいのか?」という問題に似ている。
というか、かなり意識している。劇中のインタビューの中でも「アベンジャーズ」という単語が出てくるくらいだから。
吉村は紆余曲折ありながら自分の正義を見つけることができる。
68歳でも変われることができたのだ。

ここからは、ちょっと気になったこと。
途中で政治家に鉄槌を下すロバマンの話があるのだが、これがあからさまに自〇党の皆さんで、しかも長い。
ヒーロー物で失敗するのは実在の政治家を一方的に悪く描くこと。
これは昭和ではウケたのだろうけど、今の人には受け入れにくいだろう。
作り手側が特定の政治思想に対して敵意をむき出すと冷めてしまう。
巨悪の政治家に対して言ってやった。一発かましてやった。
特定の政党を擁護する訳ではないが、そんな簡単じゃないんだよね、政治って。
ちょっと前の某作品でも同じことがあった。
この映画2021年に作られたから、まだスルーしやすいが、安部元首相が亡くなった今となれば、全然笑える場面ではないんだよね。
実際、ロバマンも、このエピソードを挟んだあたりからテンポが悪くなり失速気になってしまう。
最後の戦いは、伊東四朗も出てきて、吉田照美にとっての「青春のやり残し」を清算しているようで清々しかった。
隠れた名作なので、気になった方は是非観てください。


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