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Hameeのマーケティング戦略大公開~ブランディングが商業教育を変える!?~

こんにちは。Hameeの宮口拓也です。

Hameeは、モバイルアクセサリーブランド「iFace」を中心とした商品の企画開発・提供と、ネットショップ運営業務の自動化・効率化を支援するクラウド(SaaS)型 EC Attractions「ネクストエンジン 」の開発・提供という二つの事業を主軸とする小田原を拠点とする会社です。

それぞれ、提供している商品・サービス、対象ユーザーは異なりますが、「クリエイティブ魂に火をつける」という一つのミッションのもとで、約400名の社員がクリエイティビティを発揮しています。

この度、ご縁で神奈川県立総合教育センターの勝山さんをはじめとする神奈川県の商業教育に携わる教員のみなさんにHameeの経営理念の考え方や、マーケティング戦略についてお話させていただく機会をいただきました。

今回は「どうやって、経営理念を商品に落とし込むのか?」「どうすれば、ブランドアイデンティティは伝わるのか?」という切り口からHameeのマーケティング戦略をお伝えします。

企業が実践しているリアルなマーケティングを生徒に伝えたいと考えている、商業教育に携わる教員の皆さんに読んでいただけると嬉しいです。

どうやって、経営理念を商品に落とし込むのか?

世界累計販売数2,000万個(2020年12月末時点)のスマホアクセサリーブランド「iFace(アイフェイス)」をご存知でしょうか。

iFace 日本ブランドマネージャーの高橋からモバイルアクセサリーの開発・提供におけるブランドマーケティングについて「どうしたら、スマホケースを、世界で2,000万個売ることができるのか?」という切り口で事例を紹介します。

高橋:CMや広告で良いイメージを感じてもらい、気になってその商品を買った時に商品自体も良ければ、ファンになったりリピーターになったりする可能性はグッと高まりますが、そもそも商品自体が良くなければ徐々に市場での競争力は低下します。

『なんだよ、イメージはいいけどモノは良くないじゃん』。『まぁ安いからいいや』なのか『この価格でコレ?』とか。当然逆もあって、商品はすごく良いのにちゃんとユーザーに訴求出来てない、伝わってない(ブランディング出来てない)というケースもあります。

重要なのは、情緒的な価値(イメージ)と機能的な価値(プロダクト)を両軸でしっかり伴って高めていくことです。

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PROFILE:高橋 雅史(たかはし・まさふみ)
WEBマーケティング部 サブマネージャー / iFace 日本ブランドマネージャー

2010年入社。雑貨量販店などへの卸営業を担当した後、商品開発組織のマネージャーとして、中国や韓国を中心とした製造管理、自社での企画開発の基盤づくりに従事。IoT新規事業にてHamicブランドの世界観設計や製品デザインディレクションを担当。Hamic BEARにてGood Design賞2019受賞。現在は、iFaceを中心とした複数のブランドマネージャーとして、商品企画~販売 まで、組織を横断したブランド管理・成長推進を担う。

ブランドでマーケティング?

極端な話、ブランド戦略が上手く機能すると、短期間であれば商品力の低さをブランド力で補えます。一時的に商品力があがっても 、ブランド力が低いとユーザーに選ばれません。

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ブランドの感情価値の醸成には、短期的な売り上げの追求と並行して、
・愛着を持ってもらうための中長期で一貫した施策の継続
・商品企画・開発
・カスタマーサービス
・各ツールのデザイン
など、お客様に触れる全てにおいて、一貫性のある価値提供を徹底する必要があります。

そのための手段として、iFaceでは機能別組織からメンバーに参加・協力してもらい、横断組織を中心に意思決定を進めることで、それを実現しています。(これが結構大変……)

ブランド戦略が浸透されないことで起こる問題

今でこそ、各部署の連携が取れていますが、2018年頃の体制はブランドとしての取り組みと各部署の施策は、レポートラインが一元化できていませんでした。そのため、各部署の取り組みを一貫させることができず認識がバラバラで、各案件の進捗状況も非常にわかりにくい状況でした。

当然、下記のような問題が起こっていました。

・新規性の高い商品企画が、企画承認されない。もしくは、開発中に頓挫してしまう。
・売れ筋商品の在庫欠品が、多発してしまう。
・ブランドプロモーション施策が、実施できない。
・特に大型施策に関して、具体的な目標設定ができず、偉い人の「とりあえずやってみようか」を引き出すしかない。

この状況を変えるためには、風当たりが強い中でも、泥臭く啓発していく必要がありました。

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「老舗化」と「人格化」

ブランドマーケティングとは、ブランドへの人為的な「老舗化」と「人格化」によって、長く愛される事業を作ることです。

「老舗化」とは
100年かけずに老舗を作ることで、継続的な製品、サービス、コミュニケーション、リレーションなどのマーケティング活動を通じて、より強く、より明確な、より「好かれる・頼りにされる」ブランドを作りあげていくこと。
「人格化」とは
人として、信頼され、愛されるお客様との1対1の関係の中で、共通のニーズ・価値観・人生観を醸成し、「あなたなしでは生きていけない」と言われる存在になること。

ブランド戦略のもっとも根幹は、ブランドアイデンティティ(ブランドの性格、キャラクター)を決めることです。

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そして、iFaceの「実利価値」と「感情価値」の繋がりを整理して、エビデンスのある説得力を持ってイメージを伝えていく必要があります。

また、iFaceのブランドアイデンティティの設計に際して、それがHameeの持つ「クリエイティブ魂に火をつける」という理念から生まれ得る価値であるか?ということに、とても気を配りました。

iFaceというブランドが、経営理念を体現したプロダクト、コンテンツ、サービスを提供できる流れを作ることで、各領域の担当者がそれぞれのクリエイティブ魂を入魂し、強みを発揮できる組織になりました。

どうすれば、ブランドアイデンティティは伝わるのか?

ここからは、クリエイティブディレクターの持田より、ネットショップ運用業務を一元管理するクラウド(SaaS)型 EC Attractions「ネクストエンジン 」のクリエイティブ戦略についてご紹介します。

「ブランディングにおいて、クリエイティブやデザインの領域って何をするのでしょうか?」

持田:クリエイティブの人間がやるべきことは、自社の「商品」や「サービスの価値」を、市場の「他社競合」から明確に「差別化」し、 またユーザーに識別させるための名称やシンボル、デザイン、コピーなどを「ブランドのらしさ」として認識させ、機能させることです。

領域は、プロダクトデザイン、キャラクターデザイン、プロダクト/サービス名称、ロゴ 、コピー、ビジュアル、パッケージ、広告、WEBサイト など多岐に渡ります。

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PROFILE:持田 渉(もちだ・わたる)クリエイティブ ディレクター
広告やセールスプロモーションの制作会社でVisual direction & Design,Photography Directionを中心に多種多様なデザイン案件に幅広く従事。2018年より、Hamee Designクリエイティブ ディレクターとして、 コマース事業部ではiFaceのクリエイティブディレクションやプラットフォーム事業部のデザイン案件のディレクション、リブランディング等を担当。

ブランドの「見え方」を規定するビジュアル・アイデンティティが確立されていると、ユーザーがさまざまなシチュエーション、チャネル、タッチポイントにおいて、 「〇〇はこういうブランドなんだ」と世界観や機能的価値を直感的に感じられます。まるで、金太郎飴がどこを切っても同じ印象を与えるかのように。

例えば、CMでよく見かける水とラベルのない水が並んでいたら、どちらを選びますか?きっと、多くの人が知っている方の水を選ぶはずです。

プロダクトの機能価値とイメージが浸透していて、ユーザーがイメージ出来る状態は、それだけで商品・ブランドとしての強みです。すごく乱暴に言えば「知っている」というだけでもユーザーに対して安心して買える動機を与えることができます。

そのためには、ブランドイメージ(ビジュアル)のトーンやユーザーへ伝えるメッセージ(コピー)を統一することが大切になります。どのデザイナーが販促物を作っても整合性と一貫性を保てるように、これらを定義化した「ビジュアルガイドライン」を作成しています。

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上記は高橋から紹介があった、iFaceのミッション・ビジョン・バリューをベースに作成したブランドメッセージとブランドイメージです。

また、ブランドの価値体系ごとに訴求コピーとビジュアルの定義づけもしています。これをもとに、公式WEBサイトやツイッターやYoutube、インスタグラムなどのSNS、量販店などの店頭販促ツールで使用されます。まさに、どこで見ても同じ見た目の金太郎飴です。

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この手法は、ネクストエンジンでも同様に使っています。

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持田:ブランディングやクリエイティブなどの表層部分はセンスや、インパクトといったビジュアル面だけでの評価や、その工程も見えづらい部分があり、時としてブラックボックス化されて、一見マーケティングと切り離されがちですが、実際にはこのように裏側で地続きなんです。

こうやって安定したクオリティで、お客様にブランドイメージを伝えられるのは、企業の中にデザイン部があって、ブランドチームの一員として連携しているからこそ実現できたことだと思っています。

ブランディングが商業教育を変える!?

研修講座に参加した受講者の皆さんの感想の一部をご紹介します。

経営理念や向かう方向性の大切さを学びました。無くても何とかなるのかもしれませんが、よりよくしていくためには非常に重要であると感じました。商業教育にも「老舗化」「人格化」が上手くなされていけば、もっと商業を学びたいと思う中学生が集まるかもしれないと思いました。マーケティング手法についても消費社会の進化やブランドマーケティングなど授業ですぐに使えそうな内容で、大変勉強になりました。
商業科目「マーケティング」は教科書の内容と実社会の活動とが大きく離れていると常に感じていますが、今日の講義であらためて強く感じました。いつでも新しい事例を取り入れることができるように教材研究をしていきたいです。

勝山:私も含め、受講者のみなさんは、経営理念と商品やサービスとのつながりを初めて知った方が多かったと思います。商品をどうやって作っていくかという、教科書には載っていない「魂」を入れていくプロセスを、実際の事例を通して知ることができて嬉しかったです。

また、特に受講者の皆さんの感想を読んで、自分と似たように商業教育を盛り上げるためにはどうしたらいいのだろうかと悶々としている想いがあることを知ることができました。

商業科でHameeさんの取り組んでいる経営戦略とマーケティングについて伝えていき、県内の商業高校においても「神奈川県の商業科としての共通の想い」を持っていけるようにしていきたいと思います。

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PROFILE:勝山光仁(かつやま・みつひと)
神奈川県立総合教育センター 指導主事

1984年生まれ。2008年に神奈川県の商業科教員として採用。ソーシャルビジネスやインバウンド観光をテーマとして生徒の研究を指導し、2011年、2012年、2013年、2015年と全国高等学校生徒商業研究発表大会に導く。これまでに神奈川県教育委員会職員功績賞や、金融教育に関する小論文・実践報告コンクール優秀賞などを受賞。現在、神奈川県教育委員会の指導主事として商業科をはじめ、専門教科の教員の研修を担当。

宮口:研修の中で実施したワークショップで、教員のみなさんは、Hameeの事例を瞬時に教育現場の課題解決に置き換えていることが印象的でした。

今回、「商業教育をより発展させていきたい」という勝山さんの強い想いから、入魂の研修講座が開催されました。誰かの強い意志からクリエイティブが生まれるという点において、商業教育もHameeが提供しているサービスも同じなのだと思います。

予測が難しく変化の激しい現代、教科書を最新の情報に更新していくことは、とても難しいことだと思います。教科書や教室といった普段の「商業教育」の枠からはみだして、生の産業との交流が、生徒の皆さんがワクワクするような教育サービスの提供につながり、卒業後に地域産業を元気にしてくれるのではないかと感じました。

長距離バス、市バス、行き先不明のバス

今回、紹介したHameeの事例は、自分たちの想いや目指す世界観を明確にして、まずは近くの仲間へ、そして少しずつ遠くへと共感者を増やしていくというシンプルなことです。

バスが、電光掲示板で行き先を表示するように、組織やブランドも目指す場所を分かりやすく伝えてあげることで、徐々に同じ目的地に行きたい人が集まってきます。

遠くへ行きたい人は、市内を循環するバスには乗らないですし、そもそも、行き先が表示されていないバスには乗りたくないですよね?

勝山さんの想いに共振する仲間が少しづつ集まってくれば、きっと商業科の衰退の流れは変えられるのではないかと思います。近い将来、商業科出身の生徒の皆さんが、私たちと一緒にネットショップ市場を盛り上げてくれることを楽しみにしています。

この研修が行われた、2021年7月29日に、Hameeの社長は、創業者の樋口(現会長)から水島へと交代しましたが、ミッションという想いが継承されていれば、Hameeの「クリエイティブ魂」は燃え続けます。

◆この記事を書いた人

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PROFILE:宮口拓也(みやぐち・たくや)
Hamee株式会社 サステナブル・トランスフォーメーション室

1979年生まれ。2013年入社。デザイン組織の立ち上げ。WEBデザインからコンセプトデザインへと制作領域を拡張。パーパスデザイン、カルチャーデザインを経て、地球や社会や人にやさしい組織への変革に取り組む。


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