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さよなら、モラトリアム

学校もサボったことはないし、部活も真面目に行っていたし、テストの点も評定も良かった。

せいぜい、スカートをこっそり1、2回折って授業中居眠りしてドキドキしてるくらいの、フツーの高校生だった。

大学生になったら、部活もバイトもがんばって、休みの日は渋谷とか原宿に遊びに行って、長期休暇には旅行をしたりするんだと思ってた。
大好きな日本史を学んで、もうパラダイスやんって思っていた。

当時の私の肩をポンって叩いて、大学生活そんなに甘くないで、でも楽しいことには変わりはないよ、って教えてあげたい。

大学1年生、ドン底期

7月のある月曜日、私は7000円しか入っていない財布を見て泣きそうになっていた。

その日は一限から授業があったはずだが、前日深夜までバイトを残業していたので、どうしても起きられずに授業をブッチした。そんな自分に絶望していた。新潟に帰りたかった。でも17時からバイトがあった。

そもそも、7000円じゃあ新潟まで新幹線に乗って往復できない。その頃は、新潟に帰るには新幹線に乗るしか方法がないと思っていた。

4月5月とバイトの面接に落ちまくり、最終的にヤケになって面接を受けた某ファミレスのバイトは、まあまあなブラックバイトだった。面接に行って即採用だった。

貯金もなく、手持ちのお金も7000円しかなくて、もうすぐ夏だというのに春服ばかり着て汗だくで大学に通っていた。

大学の友だちはそんな私に厳しかった。遅刻、居眠りをするとめちゃくちゃ怒る。無利子の奨学金を取っていた私に、「無利子の奨学金なのに授業寝てるなんていいご身分だね。」って嫌味を言ってきたり。
(無利子か有利子の奨学金になるかは、高校時代の成績と家庭環境に左右される)

とにかく、ドン底だった。

生まれてこの方、周りの人の顔色を伺ってばかりの人生を送ってきた私は、親や、友だちや、バイト先の人の顔色ばかり伺って、消耗していた。

私にとってのメシア

そんな地獄のような1年間を東京で過ごしたあと、私は大学2年生になった。

1年遅れて進学してきた、高校時代の部活の後輩とよく遊ぶようになった。
彼女とは妙に気が合って、家に泊まりに行くと夜更かしをすることになった。色々なことを語り合って。

なんでこんなに気が合ったのだろう?
高校時代に同じ人を好きになって、バトって、でも結局誰よりも仲良くなったこの後輩。

今思えば、弱さを抱えながらも前に進み続けようとする、その強さに憧れていたのかもしれない。

とにかく、彼女が来たことで私の大学生活は変わり始めた。

彼女はフットワークが軽かった。色々なことに挑戦していた。それに影響を受け、私もインターンに行ったりした。

☆海外インターンに行った話

ドン底だった大学生活を変えるきっかけをくれた彼女は、私にとってのメシアだったに違いない。(キリスト教徒ではないけど)

思い通りにならない現状に文句ばかり並べていた私に、行動することを教えてくれたのは彼女だった。

そうだ、休学しよう。

なんて、軽い気持ちで休学を決めた訳では無いけれど。

その頃、周りのみんなは就活をしていて、なのに就活を本腰入れてできない自分がいた。とりあえず髪色を黒に戻したり、企業の資料を取り寄せたりはしていたけど。

そんな時、とある友人が休学することを知った。高校時代の部活の同期だった彼女。休学するという姿がとても輝いて見えた。

羨ましかった。そんなふうに鮮やかに未来を決定できる彼女が。
私自身も意外だったし、彼女はもっと謎に思っただろうけど、私も一緒に休学することにした。本当に羨ましくて、どうしても私も一緒に行きたかったから。

「生まれて初めて、敷かれているレールから外れるという選択をしました。
そうまでしてでもやってみたかったこと、叶えたい未来のために全力で手を伸ばした先に何があるのか、怖いけれど楽しみです。」

私の休学直前のFacebook投稿にこんな一節がある。私にとって休学することは、すなわちレールを外れることだった。誰の顔色も伺わず、どうしてもやりたくて選んだ道だった。

でも、そんな私の選択を、親も友達もみんな応援してくれたのだった。

モラトリアムに別れを

自分が生きる意味はなんなのか。自分は何者になれるのか。たぶん、みんなが1度は通る悩みだと思う。
そして、大学5年間(休学期間を含む)を経て、私は私なりのひとつの回答を得られたと思う。(人生の正解ってなんやねん。


大学生というのは、宙ぶらりんな身分で、高校生のように庇護される存在でもなければ、社会人みたいに自分1人で生きていける訳でもない。大人に頼らなきゃいけない部分もありつつ、自立しなければいけないところもある。

時間があるから、考えてしまう。考えることが出来る、時間がある。
そんなモラトリアムのような、ある意味とっても幸せな大学生活ももう終わる。

世間知らずで、オトナに文句を言える大学生ではもうなくなる。

でも、モラトリアムの狭間にいた時の気持ちを忘れたくない。自分はどう生きていきたいのかという迷いを、なんであんなことに悩んでいたんだろうと片付けるような人にはなりたくない。

人は、周りの環境に影響される。よく言われている事だ。

これから、周りの環境が変わっていくにつれ、私も変わっていくんだろう。

だからどうか、恥ずかしがってアーカイブにしませんように。

明日、内定先の社員総会で挨拶をしてくる。
大袈裟かもしれないが、社会人の仲間入りのような気分である。

気分だけは1人前に。
さよなら、私のモラトリアム。

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