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僕の好きな詩について 現代詩 日本編

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僕の好きな詩について、言いたいことを言うnoteです。日本人の近現代詩に絞ってます。画像はネットから。問題があったらすぐ消しますので教えてください。
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2018年10月の記事一覧

僕の好きな詩について 第三十四回 新川和江

僕の好きな詩について 第三十四回 新川和江

こんにちは!僕の好きな詩についてお話しするnote、第三十四回は、新川和江(しんかわかずえ)さんです。

たおやかで、勁い美文を堪能してください。ではどうぞ。
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「母音――ある寂しい日私に与えて」
新川和江

信じていなさい
おまえののどとくちびるの温かさを
おまえが〈あ〉と言う時
どこかの暗い沼のふちの
葦のあいだで
澱んだ水が
〈あ〉
一万年にたったいちどの水泡(み

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僕の好きな詩について 第三十三回 最果タヒ

僕の好きな詩について 第三十三回 最果タヒ

こんにちは!僕の好きな詩を紹介するノート、矢継ぎ早の第三十三回は、今をときめく女性詩人「最果タヒ」さんです。

少し前に最新刊「天国と、とてつもない暇」を上梓されていました。

今回ご紹介するのは少し前の詩です。では。
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「光の匂い」最果タヒ

夜のあいだは、この都心の大気圏を、巨大なナイフが、羊羹みたいに切り離している。すきまに、宇宙からこぼれてきた透明の光が挟

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僕の好きな詩について 第三十二回 帷子 耀

僕の好きな詩について 第三十二回 帷子 耀

こんにちは!十月がどこかに帰ってゆこうとしています。気が早すぎないでしょうか。

僕の好きな詩を紹介するノート、第三十二回は伝説の詩人「帷子 耀(かたびらあき)」氏です。

氏の15~16歳(!)の頃の作品です。ではどうぞ。
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「瞳冒涜」帷子 耀

眼のようにすべては明るい
眼のようにすべては見えない(瀧口修造)



しんかんと鳩胸しぼる火酒もて
あやめあぐねよ

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僕の好きな詩について 第三十一回 北園克衛

僕の好きな詩について 第三十一回 北園克衛

僕の好きな詩についてお話するnote、第三十一回は北園克衛です。

シュールでお洒落な北園ワールドをどうぞ。
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「黒い装置」北園克衛

黄いろい三角

黒い
真昼であつた

青い四角

黒い
孤独であつた

赤い円筒

黒い
距離であつた

黒い四角

黄いろい
朝食であつた

黒い円筒

赤い
散歩であつた

黒い三角

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僕の好きな詩について 第三十回 高見順

僕の好きな詩について 第三十回 高見順

僕の好きな詩についてお話するnote、第三十回は、高見順氏です。

小説家でもある氏の、詩をどうぞ。
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「電車の窓の外は」高見順

電車の窓の外は
光りにみち
喜びにみち
いきいきといきづいている
この世ともうお別れかと思うと
見なれた景色が
急に新鮮に見えてきた
この世が
人間も自然も
幸福にみちている
だのに私は死なねばならぬ
だのにこの世は実にしあわせそうだ

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僕の好きな詩について 第二十九回 八木重吉

僕の好きな詩について 第二十九回 八木重吉

こんばんは!僕の好きな詩について語るnote、第二十九回は、八木重吉氏です。

氏の詩は抜群に短いので、今回はたくさん掲載します。では。
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【美しい 夢】八木重吉

やぶれたこの 窓から
ゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよる
ひさしぶりに 美しい夢をみた

【心 よ】

ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ

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僕の好きな詩について 第二十八回 長田弘

毎週台風が来て、今年はあまりにも激しいですね。。皆さん大丈夫ですか?雨や風の実害もさることながら、気圧の変化でこころが安定しづらいように思います。

さて、僕の好きな詩について話すnote第二十八回は長田弘(おさだひろし)さんです。

それでは早速、詩をどうぞ。
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「最初の質問」長田弘

今日あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。

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僕の好きな詩について 第二十七回 鮎川信夫

僕の好きな詩についてお話しするnote、第二十七回は鮎川信夫氏です。

田村隆一氏らとともに戦後の重要な同人雑誌「荒地」の創刊メンバーで現代詩の巨人の一人ですね。

では早速今回の詩を。
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「死んだ男」鮎川信夫

たとえば霧や
あらゆる階段の跫音のなかから、
遺言執行人が、ぼんやりと姿を現す。
──これがすべての始まりである。

遠い昨日……
ぼくらは暗い酒場の椅子の

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