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Balefire of a palm

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series/手のひらのかがり火 篝火はいつもおまえの手のひらに
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2016年8月の記事一覧

光のたてがみ

光のたてがみ

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 扉を叩こうとした手を引っ込める。
 ここ三十分はこれの繰り返しだった。
 硬質な白の石壁に漆喰でできた両開きの扉、その中心には鐘の形をした銀色のドア・ノッカーが付いている。扉のすぐ上には歯車の模様が意匠として凝らされている〝時計店〈トキツゲウサギ〉〟の看板が堂々と胸を張ってこちらを見据えていた。此処は、町の大通りから少し外れたところに在る時計店の前である。
 その前で立ち竦んでいるの

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ふるえる燈火

ふるえる燈火

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 自分は耳の中に心臓があるのか。
 馬鹿げていると分かりながらも、しかし彼はそう思わずにはいられなかった。怖がりな青年の心臓は鳴り止まず、それどころかそのうるささを一歩二歩と進むたびに増すばかり。だが、それでも彼は確かに歩を進めたのだった。扉を自らの手で開き、確かに。
 扉を開けた向こうに見えてきた目的の人影に、丹は自らの心臓が一瞬止まったのを感じた。強く手のひらを握って、気を抜いたら

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こころ映しの花束

こころ映しの花束

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 〝ニシキマコト〟という男は、ばかな男である。
 鼻の先に差し出された花の一輪を見つめながら、町を気ままに散歩していた一匹の犬は思う。
 そうなのだ、この男は底抜けにばかなのだ。今日、最初に花屋でこの男を見かけてから、おれはずうっとそう思っていた。ほんとうに、ほんものの、仕様のない――

「――ああ、そうそう、それくらいの大きさの……そう、あまり派手じゃない感じがいいな。え?……あ、う

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花、光、太陽、こころ

花、光、太陽、こころ

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 指先に光がさざめいている。少女の両の手のひらの中で揺れる小さな太陽をぼうっと眺めながら、青年は瞳の奥の方が滲むのを感じつつあくびを噛み殺した。と、いうのも、彼は今、少女の手のひらに収まる太陽――その光の色と温度のあたたかさに時折、瞼が落ちそうになっているのだった。少女がちらっとこちらを見ては忍び笑いを漏らした。
「何か、子どもみたいな顔になってますよ」
「うーん……? うん……」
「あら

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逃がした火の粉は甘かった

逃がした火の粉は甘かった

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 時計店〈トキツゲウサギ〉は、本日定休日である。困ったように笑っている青年――丹は休日の時計店で、先日と似たようなかたちでカウンター越しに母と対峙していた。休日に時計店を訪ねてきた丹は母に、この間のお返しと言わんばかりに――いわゆる、〝恋ばな〟をさせられているのだった。何とか話題を逸らせないかと、丹は自分の目の前に置かれている珈琲を指差した。
「母さん……俺、ブラックはあんまり……なんだけ

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雨を待つなんてばかなこと、それでも光る雨を知っている

雨を待つなんてばかなこと、それでも光る雨を知っている

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 強くも弱くもない雨が、それと似たようにぬるい温度で頬を打った。
 透明な雫たちが空から突然降りはじめたために、慌てて雑貨屋へと駆け込んで傘を買った丹は、その辰砂の瞳に鈍い青の混じった雨雲を映しながら少し唸って頭を掻き、こぼすように溜め息を吐く。
(……すぐ止みそうだな)
 それでもないよりはましだ、というように彼は今しがた買った傘を広げ、右手でそれを持つと左手には店の宣伝がてら持ち歩いて

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