晴海悠

遊びや企画を考えるのが好きな人。通算8年ほど、ライターとして物語性のある創作に取り組ん…

晴海悠

遊びや企画を考えるのが好きな人。通算8年ほど、ライターとして物語性のある創作に取り組んでまいりました。 遊び、福祉、文化活動などに関心があり、文章術や書籍の感想など雑多に書いています。 お力になれることがあれば、いつでも気軽にご連絡ください。

最近の記事

水底の傷/ブルーイマジンを観て

水の中に、ひらいたまま血を流す傷口が見えている。 そこに見えているのに、誰もふれない。沈んでしまったものだからと、腫れ物のように避けて通り、傷の手当てをする者は誰もいない。 もどかしく、耐え難い現実に連帯の力で立ち向かう。 映画館で観た「ブルーイマジン」はそんなリアルと地続きの物語だった。 間接的に描かれる静かな絶望本作を通して徹底されるのは、具体的なシーンを描かず、かわりに被害を受けた人の「その後」を描く姿勢だ。 背景には、実際に被害にあわれた方などへの配慮がある。監

    • 社会の課題に、ゆるく切り込む

      「からっぽから、はじめればいい。」 そんなタイトルで、noteとは別に新たにブログをはじめました。 名前になにか感じてくださった方もいるとは思いますが、ブログ最初の記事でこっそり重大なカミングアウトをしています。 ブログ運営の目的noteと異なるテイストのブログを立ち上げた理由は、大きく二つあります。 ① WordpressとSEOライティングの勉強をしたかった(実利) ② 自分にしかできない切り口で誰かの役に立ちたかった(こだわり) ライターとしてお仕事を募るなら好ま

      • 「書く」暴力

        先日、ある本のエピローグを読んでドキリとした。 章の見出しは『「物語」という暴力。「書く」という加害』。 書き物を仕事にする、あらゆる人に向けられた問いだと感じた。 言葉は檻である著者曰く、言葉にすることは「経験の固定化」とも呼べる。 ある日見た朝焼けの色。感じてきながらあえて言葉にしなかった経験。 そうしたものを書く、もしくはそれが誰かによって書かれることは、経験やものの感じ方を定義することにほかならない。 人間は社会発生以来、言葉による定義で意思疎通を図ってきた。

        • 人類よ、学徒たれ

          「大学でさ、わざわざ勉強して何になるの?」 「文系やアートってあまり就職に意味ないし……」 そんな声は、私の大学生だった時分にもよく聞こえました。 学びの価値に敏感になるのも当然です。 学生は本能的に、今という時間の貴重さを知っています。 青春は一瞬、だから少しでも価値あるものを――。求めた結果、価値基準が「就職に役立つか否か」になるのも、無理からぬことです。 大学で学んで何になるのか。 以前は答えられませんでしたが、いまは違います。 花の咲き初む、春。私はいま、転職

        水底の傷/ブルーイマジンを観て

          本を付箋でべったりにできるか?

          よく読む人と自分とでは、本の読み方が違う。 そう気づけたのは、ここ最近読書家の方とリアルで会ったり、noteにある写真を見ていたからかもしれない。 本を読む目的によって、あとは当人の好みでも、もちろん読み方はちがうだろう。ただ、一部の読書家に共通するのが「本に付箋を貼る人が多い」点だと感じた。 一度限りの読書体験ならそれでいい本は、個人的には一度読まれるだけでもじゅうぶん幸せだと思う。 一説には、毎日二百冊。これだけの本が出て、購入された上に最後まで読み切ってもらえるこ

          本を付箋でべったりにできるか?

          こころを救ったノート

          ※ 本文中に精神疾患に関する記述があります。   しんどくなったらただちに読むのをやめてください。   また、特定の治療法の効果を保証するものではありません。   治療法についてくわしく知りたい方は必ず医療機関でご相談ください。 暗闇の中でつづったノート20代の頃、うつの症状が苦しくてしかたがない時に、 無意識に続けていたことがある。 当時はキャリアが閉ざされ自分の道が見えず、 人には到底言えないような苦しみを抱えていた。 ルーズリーフを半分に折り、左半分にひたすら思い

          こころを救ったノート

          ゴーストリィ・フォークロア~英国幽霊譚~

          ぽう、と灯りがともり、誰もいない暗夜の路地を掠める。 ホタル? いいえ。ここは英国。 地球の真反対にあるこの島国は、日本に負けじ劣らじ怪談の宝庫。 ウィル・オ・ザ・ウィスプ――。 かの幽霊火が生まれたのも、この国なのですから。 今回はかねてより読みたいと話していた、 「ゴーストリィ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚」 のご紹介です。 本書の概要この本はかつてあった雑誌「幽」に連載していた「幽的民譚~ゴーストリィ・フォークロア」を編纂したもので、英文学に精通

          ゴーストリィ・フォークロア~英国幽霊譚~

          型を知り、型を破る~小説書きへの指南本~

          「プロだけが知っている小説の書き方」を読みました。 買った当時は仕事が忙しく、読み終えるのが今になってしまったのですが、 「今小説を書いている人」にはぴったりの本だと感じました。 小説投稿サイト「ノベルアップ+」で募ったアンケートをもとに一問一答で答えているので、悩みに沿って拾い読みできるのも本書の利点です。 基本的に読者の悩みから出発してるので、蘊蓄(うんちく)が長々と書いてある……ということもないのがありがたいですね。 注意点は、本書の対象が(やや)既に執筆経験のあ

          型を知り、型を破る~小説書きへの指南本~

          透明なひと、なんていない

          いつも読んでくださり、ありがとうございます。 今回はすこしだけ真面目で、センシティブな内容です。 小説などの物語と「病気や障害のある方」の描き方のはなし。 しんどければ無理せず、ページを閉じてくださいね。 透明になってしまったひとたち物書きをはじめてしばらくたった頃から、 どうしても気になることが出てきました。 「なんで障害のある人を出すのはタブーなんだろう」 特に商業の世界では、 病気や障害をテーマに扱うのはとてもリスキーなものです。 たとえばよく知らない人が案を

          透明なひと、なんていない

          雑記 2024-3-16 積読タワーのふもとより

          ここ数日は就活準備やら勉強やらで忙しく、noteから遠ざかっていました。 役に立つことだけ書きたい派なので日記的なものはあまり書いてなかったのですが、活動記録もかね、たまには雑多に書いてみたく思います。 読んだ本大学院修士課程アンソロジー 研究生活論考 修士課程在籍・修了エッセイ集 普段なかなか見えない、大学院修士課程の実態を赤裸々に描くエッセイ(いくらかフェイクはあり)。院進に魅力を感じつつも生涯賃金と天秤して断念したクチなので、院生の響きは個人的にすごくぶっ刺さりま

          雑記 2024-3-16 積読タワーのふもとより

          あまりやりたいことが取っ散らかっても仕方ないのですが、 時間があると夢が無限に増えていきそう。 ・本を読む ・小説を書く ・オリジナルのTRPGシステム構築 ・英国伝記ものシナリオを書く ・仕事以外の分野で福祉にかかわる ロードマップを描いて、歩んでいければと思う。

          あまりやりたいことが取っ散らかっても仕方ないのですが、 時間があると夢が無限に増えていきそう。 ・本を読む ・小説を書く ・オリジナルのTRPGシステム構築 ・英国伝記ものシナリオを書く ・仕事以外の分野で福祉にかかわる ロードマップを描いて、歩んでいければと思う。

          夢。物語を書いて、読んでくださった方とお話したい。 よかった、つまんなかった、いろんな声を聞きたい。 それで、こんな話が読みたい! ってのがあったら、そのリクエストを形にしたい。 僕には書きたいものがない。 だから、かわりに誰かが読みたいお話を書きたい。

          夢。物語を書いて、読んでくださった方とお話したい。 よかった、つまんなかった、いろんな声を聞きたい。 それで、こんな話が読みたい! ってのがあったら、そのリクエストを形にしたい。 僕には書きたいものがない。 だから、かわりに誰かが読みたいお話を書きたい。

          昨日、はじめて点字を打ちました。 指が素直に動かなくて、これは相当練習がいるぞ、と思いました。 スマホ機能の説明も、音声読み上げやしゃべり声がいくつも重なって、 目の不自由な方の世界は、たくさんの音や声に満ちていると気づきました。 僕には見えない世界。でも、ちゃんと知りたい。

          昨日、はじめて点字を打ちました。 指が素直に動かなくて、これは相当練習がいるぞ、と思いました。 スマホ機能の説明も、音声読み上げやしゃべり声がいくつも重なって、 目の不自由な方の世界は、たくさんの音や声に満ちていると気づきました。 僕には見えない世界。でも、ちゃんと知りたい。

          ちいさな居場所~みんなの図書室 ほんむすび~

          大阪あべのの聖天山公園に、私設の図書室があると聞き、訪ねてみました。 公園に入り、見えてきたのは木の風味あたたかい建物。 みんなの図書室、ほんむすび。 ここは地域の交流の場をかね、さまざまな方が本を寄贈する シェア型図書館なのだそう。 突然の訪問でしたがあたたかく迎えていただき、 お話をうかがいつつ本棚を見せていただきました。 きっとどれか「刺さる」、だれかのおすすめ本この図書室いちばんの目玉は、 一箱本棚オーナー制。 木で仕切られたスペースをまるっと借りて、 自分が

          ちいさな居場所~みんなの図書室 ほんむすび~

          読み直しの技術

          文章に携わる多くの人が、表記ゆれや誤字脱字をなくすために戦っている。 なぜ表記ゆれや誤字脱字がだめなのか。 表記ゆれについて一部のブログで「脳に負荷がかかる」と説明しているが、その多くは出典がなく、私が調べた範囲では根拠となる論文なども見つからなかった。 個人の感覚としては「そうだよなあ」と妥当に感じたものの、論文をいくつか見た範囲ではコンピュータで機械的に処理しにくい、という産業的理由が問題視されているようだ。 もし明確な出典があればご教示いただきたく思う。 たとえば創

          読み直しの技術

          「書かざるを得ない」あなたへ捧ぐ本

          図書館で資料本を借りる折、私の目に留まるべく置いてあるような本を見かけた。 さっそく手にとってページを開き、間違いなく今読むべき本だと確信した。 「図書館で借りた」というと万一著者の目に触れた際にがっかりさせてしまうので添えておくが、読み終えてすぐ手元に必要な本と考えAmazonで発注した。次著の「本を出したい」もあわせて予約済だ。 わかりやすく表紙にある通り、書く技術の本ではなく、書き続けるために必要な「書く以外の技術」を自身の体験として記した本だ。 序文をみるに、著

          「書かざるを得ない」あなたへ捧ぐ本