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【詞よりの詩】鏡花水月

鏡花水月

寝静まる町の隅で
落書きが並んだガード下
連絡はいまだ取れない
濡れたパーカーがちょい重い

立てかけた傘を背に
さぁ行こう もう夜明けがやってくる
水たまりを軽く跳ねて
一緒にあしたを見よう

湧き上がる思いは
チカチカする電灯のよう
誰もいない駅の端
凪ぎのひと時を遊ぼう

レール歩いていく足を止め
星座映す湖面から
お月様を掬いあげる
あの日のメモリーに涙伝う

引き返す道が長い
気持ちはこの平行線の
先の物語として
夏の夜風が紡いでいく

遠く踏切は鳴りだす
さぁ行こう もう始発がやってくる
本当の答えはいつでも
とても辛いって知ってる

こみ上げる不安は
打ち寄せる波に似て
くだらない感情を思い出す前には
あぁ終わらせたい

空が白んでいく雲青く
繰り返していくこの日々を
湖面の月ゆらゆら揺れる
触れられない鏡の徒花も

唇噛んだ窓辺
分かることがひとつある
神様はできないだろう
生きた時間(あかし)を消すのなんて

最後に今だけのこの眺めを焼き付ける
遮断機が上がったあとで
すべてのメモリーは溶けていく
あぁ涙ぽとり

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