私とあなたの関係はどんな名前なの?
相手との関係を示す言葉は世の中にたくさんある。
知人、友達、相棒、恋人、愛人…
例えば、恋人とは「自らが恋愛関係にある者に対して用いる呼称」とある。
でもどうやったら、相手と恋愛関係にあると判断できるんだろう。
特定の行為をしたら?
心が通い合っていたら?
恋人じゃなくても、愛人だって、セフレだって相手と恋愛関係にあるはず。
そうなると、やはり相手との関係性を既存の言葉で表現するにはどうやら難しそうだ。
関係性の日々の変化
相手との関係は、そのときその日によって変化する。
悩みごとがある日には、信頼できる相手として親友のように相談する時間。
疲れて仕事から帰ってきたとき、二人でご飯を作って家族のように食事をする時間。
離れがたくてずっと触れていたい恋人のように甘い時間を過ごす時間。
相手との関係はいつも形を変えていく。こんな風に変化していく二人の関係性にフィットする言葉はそう簡単に見つけられない。
目の前の相手より関係性についた名前を信じてしまう
自分にとって相手はどんな存在なのだろうか。どういう位置づけなのか。
特に、恋愛であれば相手にとって自分の立ち位置がとても気になってしまう。
相手との関係に名前をつけることで、自分の立場を固定化して安心して振舞うことができる。
例えば、「恋人」という固定化したラベルをもらえたら、相手に多少のわがままを言ってもいいし、自分から誘ってもいいし、体に触れてもいい。
名前のつけられない関係では、相手に対して何をどこまでしていいのかわからない。
つまり、関係性に名前を付けることで今まで積み上げてきた相手との関係性を信頼せず、関係性についた名前で、何をどこまでしていいのかを判断してしまっている。
一般的に恋人とはこういうもの。一般的に友達とはこういうもの。
だから、ここまでしても許してもらえるはず。受け入れてもらえるはず。
という、その関係性についた名前に基づいて行動してしまう。
相手は目の前にいるのに、そこには目をやらずに無視してしまう。
相手にとって自分は何者なのか
自分が相手との関係性につけている名前と、相手が自分との関係性につけている名前の間には、ずれが生じている可能性だってある。
相手は、相手の時間を過ごして自分を含む人間関係を構築しているのだから、相手の世界基準で相手の関係性に名前をつけている。
恋愛関係において、自分は相手を恋人と思っていたが、相手は恋人とは思っていなかった、という悲劇もおこる。
そもそも、相手との関係性はどんな名前なのかと考えている時点で、その関係の背景には何か問題があるのだろうけど。
関係性についた名前より大切なもの
何かの縁で出会った相手。
そのまま近づかずに通り過ぎることもできたのに、小さなきっかけでかかわりを持つことになった相手。その日から今まで積み上げてきた時間や経験は、その人たちだけのストーリー。
その二人の関係性の中で、対立、歩み寄り、共感、愛情、色々な感情をともに味わってきたはず。
だから、今ある一般名称の関係性では、とても表現できない。
ときには、親のように、親友のように、恋人のように常に変化していく二人の関係。
小さな共同体では、喜び、楽しみ、ケンカ、仲直り、色々なことが起きる。
その度、形を変えてお互いの役割を見つけ、その小さな共同体を大切に守っていく。
だから、関係性の名前なんかにこだわらず、今存在する目の前の相手と向き合うことがなによりも大切に思う。
そういう私も、かつて相手に「私はあなたにとってどういう関係なの?」「知り合い?友達?恋人?」と聞いたことがある。
みんな一度は経験があることなんじゃないかと思う、ほろ苦い思い出。
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