マガジンのカバー画像

山頭火に遊ぶ

9
山頭火と戯れる記事を収録します。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

山頭火に遊ぶ-ほろりと歯がぬけて

山頭火に遊ぶ-ほろりと歯がぬけて

山頭火は「草木塔」に歯を詠んだものを3句収めている。
ほろりとぬけた歯ではある
    冬がまた来てまた歯がぬけることも
    噛みしめる味も抜けさうな歯で
日記を見ても歯医者にかかった形跡はない。だから、治療などせず、歯痛に呻き苦しみながら、自然に「ほろり」とぬけるのを待っしかなかった。もちろん入れ歯を買う金もない。このような彼の歯との格闘は昭和7年、51歳の時か

もっとみる
山頭火に遊ぶ-投げ挿しの花

山頭火に遊ぶ-投げ挿しの花

前回の投稿で、山頭火の「俳句性」は「ぐつと」と「ぱつと」の瞬時性にあると述べた。ただ、それは彼が表現に無頓着であるということではない。今回はそのことを書いてみたい。

▢ 「投げ挿し」と「投げ入れ」

 こんな句がある。

  投げ挿しは白桃の蕾とくとくひらけ 
                    「草木塔」

旅館なのか、知人宅の一室なのかは分からないが、おそらく夜である。蕾の花は夜に活ける

もっとみる
山頭火に遊ぶ-ぐつと掴んでぱつと放つ

山頭火に遊ぶ-ぐつと掴んでぱつと放つ

山頭火は、昭和7年9月から13年11月まで山口県の小郡の「其中庵」で起居していた。句友たちの援助を受けてむすんだ草庵である。その間付けていた「其中日記」の昭和10年4月3日、山頭火は次のように記している。

「ぐつと掴んでぱつと放つ」ーこれほど山頭火の句の特徴を表した文をぼくは知らない。ぼくなりに解釈すれば、「ぐつと」掴むものは一瞬の感覚や心の動き、そして、「ぱつと放つ」はそれをそのまま言葉にする

もっとみる